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ep.37 騎士団

ユラの双子の妹ユーリとユリヤ、衛兵のオゼンとヤシンが参戦した。対するヴァシルスとシェリは2人組の反逆者。こちらが有利と思われるのだが —— 。

上空に飛んでいたシロは、一斉に王宮へ向かってくる軍団を見つけた。

「騎士団だ! 王国騎士団が来たぞ!」


オゼンとヤシンに、騎士団まで。これはこちらに運が味方したようだ。シロの声を聞いて、ユラは思った。

いくらヴァシルスが強いと言っても、この戦力に王国騎士団の精鋭たちも加われば流石のヴァシルスも降参するだろう。ユラは胸を撫で下ろし、ヴァシルスを見たが、ヤツは不敵に微笑んでいる。

「まずい! 騎士団は——」

ユラがそう言いかけた瞬間、騎士団は一斉に女王とユラに襲いかかって来た。

女王が、間一髪のところで、結界を作り、4人を守った。

「なんだ? 王国騎士団はヴァシルスの支配下なのか?」

オゼンが(いぶか)しげに言った。


ガハハハッ。ヴァシルスは高笑いした。

「1度も戦場に行かない女の言うことなんて、誰が耳を傾けるか。騎士団の指揮官はわしだぞ」

騎士団の一斉の攻撃に、女王は結界を維持するのが精一杯だ。ユラも同時に結界を守っているが、それも時間の問題だ。


炎魔法(バーニン)!」

シロが叫んだ。シロの杖から、まるでドラゴンが吼えたかのような、業火が吹き出し、結界を壊そうとする騎士団を襲った。

騎士団は引火した火を消すのに、必死になって、散っていった。

女王はホッとしたのか、魔力切れか、その場に倒れた。

ユラがそれにいち早く気づき、支えようとしたので、結界がフッと消えた。

タイミングを見計らっていた、ヴァシルスは女王に剣を突き刺した。

剣は女王の左胸に刺さった。


「やったぞ! 遂にやった! ワシが王だ!」

ヴァシルスは両手を上げ、雄叫びを上げた。

騎士団も一斉に声を上げた。

「騎士たちよ、ユラはわしが()る。王宮内にいる、双子と異国の女を殺してこい!」

「は!」

騎士団はぞろぞろと王宮へ入って行った。

「止めて参ります!」

オゼンは血相を変えて王宮へ向かった。


「殿下……」ヤシンは女王を抱きかかえるユラを見て、唇を噛み締めた。

目の前で母親が殺されてしまったんだ。放心するのも無理はない。自分が殿下を守らなければ。




一方メイは、ピピに顔を踏まれ、目を覚ました。ピピが出した大音量に、気を失っていたらしい。そして、目の前に広がる惨状に再び胸を痛めた。


ユラに似たこの子は、確か弟のユリック……それに、あんなに小さな命まで……なんて(むご)い。

でも。

ユラさえ生きていれば、この人たちは死者の蘇生で生き返ることができる。

自分の両親や、シロのおじいちゃんは間に合わなかったけど、この人たちはまだ亡くなってからそんなに時間が経っていない。

ヴァシルスを倒し、7日以内に死者の蘇生をすれば生き返ることができる。何よりもユラを守らなければ、メイは窓の先を見た。


ヴァシルスが雄叫びをあげている。ユラが女王を抱きかかえている。まさか、女王が……?

「メイ!」

箒に乗ってシロがやってきた。

「これに乗って! 女王がやられた。でもユラがいれば、まだこの国はなんとかなる。なんとしてでもユラを守ろう!」

「うん」

メイはシロの後ろへ飛び乗った。

「ねえ、シロ」

メイはシロの肩を叩いた。

「何?」

「私をあの噴水のところで降ろして」

「わかった」


メイを降ろしたシロは、そのまま箒を急発進させ、ヴァシルスに突撃した。箒の柄が、胸に猛スピードで直撃し、ヴァシルスはひっくり返った。

「クソガキがっ!」

シロはヴァシルスに杖を向けた。

「今こそ、じいちゃんの仇を討つ時だ!」




ユーリとユリヤは、(とげ)のある薔薇の(つた)を、(むち)のように打つ。それが彼女たちの戦い方のようだ。逃げても絡め取られ、何度も打たれ、今にもシェリは気絶しそうだ。宣言通り彼女たちは相当強い。シェリは彼女たちに任せよう。アレムがそう思った時、地鳴りのような足音が聞こえ、騎士団が続々とやってきた。


「いたぞ! 双子だ! ヴァシルス様の言う通り、殺せ!」

ワラワラと襲いかかる騎士団に、双子は鞭を振りながら後退(あとずさ)りした。

「この者たちは我が国の騎士団では?」

「裏切りかしら?」


「異国の女はどこだ? 黒髪の女だ! そいつも殺せ!」

アレムは団員の言葉に眉をひそめ、

「裏切りです! 騎士団を倒しましょう!」

と叫ぶと、深く息を吐き、剣を構えた。

次回、シロとメイが戦います。

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