ep.34 先を越される
ユラが玉座の間へ行っている間、3人はアレムの部屋を訪れていた。しかし、突然爆発音が聞こえ —— 。
3人は慌てて階段を駆け上がった。
途中、何人もの使用人が慌てた様子で、王宮から外へ出て行くのが見えた。
「ねえ、一体何が……」
メイが声をかけても、足を止めてくれる人はいない。
「どうか、ユラが無事でいますように」メイは呟いた。
3人がユラの部屋へ向かっていると、ユラが3階から降りてきた。
「良かった! 3人ともいた!」
「あ、ユラだ!」
「良かった、無事で」
4人は2階で落ち合った。
「あの爆発音はどこから聞こえてきたんでしょう?」
「僕は下から聞こえてきたと思ったんだけど」
「私たちは上から聞こえてきたと思ったんですが」
「じゃあ、この2階なんじゃない?」
シロの言葉に、3人は目を合わせて頷いた。
4人は2階の部屋を、1つ1つ確認して走り回った。
「中々玉座の間から戻りませんでしたね?」
アレムがユラに聞いた。
「パーティーの間、ユリックにピピを預かってもらっていたから、引き取りに行ったんだ。みんなに紹介したくて。でも、ユリックもピピも部屋にいなくて……」
「ピピとは?」
「僕が飼ってるリスだよ」
ユラが笑顔でそう言って、ダイニングの扉を開けた。その時—— 。
すぐ目の前に広がる光景に、メイとシロは目を逸らした。とても見ていられるものではない。
「ユリック!」
ユラは駆け寄った。
「ああ、ユラかと思って刺し殺してみれば、こいつはユリックでしたか。見ない間に大きくなったものだ」
ヴァシルスはユリックの胸に剣を突き刺したまま、ユラを見下ろして言った。
「まさか僕と間違え……」
ユラは言葉につまった。
奥に広がる光景に言葉を失ったからだ。
食事中だったであろう、エミリーと介添人、第3王子であるミゼルとそのお世話係、数人の使用人が爆発で吹き飛ばされ、床に横たわっている。
ガラスや木片などが体に突き刺さって、即死であることが見ただけでわかる者もいる。
「ううっ……」
扉のそばにいた使用人が声を出したので、メイは駆け寄った。
「すぐ、回復しますからね。大丈夫ですよ」
腕や足に怪我をした使用人に手をかざし、メイは回復魔法を始めた。
バンッ!扉を強く開け、女王が入ってきた。
「ねぇ! さっきの爆発音は何?」
「……!」
ヴァシルスが、ユリックの胸から剣を抜いているのを見て、女王は叫び声とも悲鳴とも言えない、声を上げ、床に崩れ落ちた。
「邪魔なおチビさんたちに、消えてもらったよ」
ヴァシルスは床にユリックを投げ捨て、不敵に微笑んで言った。
「エミリー、ミゼル……」
女王は奥の光景を目の当たりにし、呆然とした。
女王はそのまま蹲るかと思ったが、立ち上がり、持っていた杖から電撃のような魔法を放った。
電撃はヴァシルスの胸に当たり、すぐに消えた。
「ガハハハハッ、防御しか出来んくせに、無理なさるな、姉上」
ヴァシルスは声を上げて大笑いした。
「針に刺されたかと思ったわい。おお、痛い」
女王はドレスを脱いでコルセット姿になり、ツインテールに結っていたリボンを取った。
「いい加減、決着をつけましょう、ヴァシルス。ここではやりづらいわ」
女王はヴァシルスに巨大な防御壁を当てて、窓から庭へ飛ばし、自身も追いかけようとした。
「母上! 僕は……」
死者の蘇生ができるんです。ユラがそう言おうとした声も聞かず、女王は窓から庭へ飛んだ。
「母上が冷静さを欠いている。僕は母上を助けに行く」
「オレも行く!」
シロとユラは庭へ飛んでいった。
私も…そう言いかけたアレムは言葉を飲み込んだ。
先ほどまで使用人に回復魔法を施していたメイが、シェリに捕まっている。
「私はこの女に飛ばされ、東の小国でひどい目に遭いました。散々可愛がってから、殺してあげましょう」
メイの首元には剣が突きつけられている。
「離せ、眼帯クソ野郎」
アレムはシェリを鋭く睨んだ。
次回はそれぞれの援軍などもやってくる、死闘の話になります。




