ep.32 覚悟
王宮に潜入した、メイ・アレム・シロの3人は、ようやくユラと再会を果たした。しかし、アレムは複雑な心境を抱えていて—— 。
シロがあくびを連発するので、夜も遅いし、寝ようということになった。
シロとメイがユラの部屋で寝ることにし、オゼンとヤシンが廊下で見張りについた。
アレムとユラは、隣のがらんとした空き部屋に2人で入った。
ユラが簡易的なベッドを魔法でポンポンと作り、それぞれ横になった。
「こうやって寝るの、久しぶりだね」
ユラは嬉しそうに言った。
「ええ、フィリエに住み始めた頃、以来ですね」
少々照れくさいが、アレムも嬉しくなった。
「こうやってベッドを2つ並べて寝てたよね」
「ええ、懐かしいですね」
アレムは16歳と13歳だった、無邪気な自分とユラを思い出していた。
「アレム、ここまで来てくれてありがとう。また会えて嬉しい……」
パーティで疲れたのか、ユラはそう言って眠った。
「ご無事で何よりです」
アレムはユラの寝顔に言った。
アレムは寝返りを打った。メイとユラが踊っている様子がまぶたの裏に映った。
きっとユラとメイは相思相愛だろう。
2人が見つめ合っていると、お互いを想う気持ちがこちらまで伝わってくる。見ているのは、思ったより辛い。
昨晩、シロがバーで言ったように、3人の日々も中々に楽しかった。
このままこうして、3人で暮らせたら良いのではないか、という思いが何度か脳裏をよぎった。
メイの部屋を訪れて、自分の気持ちを打ち明けてしまおうと思いたち、階段を一歩降りたところで、思い直した夜もあった。
相手がユラでなければ。
そう考えて、アレムはきつく目を瞑った。
翌朝、オゼンとヤシンが休憩に向かったので、メイはずっと気になってたことを、シロに質問した。
「仇を討つってことは、殺すってことなの? 相手はアレムのお父さんだけど、本当に殺すつもりなの?」
「…… 」
しばらく考え込んでいたシロは、顔を上げ、メイを真っ直ぐ見た。
「あのね、メイ。オレ、記憶が戻ってから、もしかしたらソウレンじいちゃんに会えるんじゃないかと思って、昔の家に行ってみたことがあるんだ」
「うん」
「家は、草とかいっぱい生えまくって、人が住んでないのが、見てすぐ分かった。でも、中に入ると、オレが出ていったまんまで、じいちゃんさえいたら、またここに住めるじゃんって思った。だから、じいちゃんがいつも座ってた椅子をこうやって触ったんだ。じいちゃんが今いる場所はどこだろうって、探知して……」
「うん」
「それで、じいちゃんの居場所を見つけた」
「そうなの!」
シロは目に涙を浮かべた。
「そこには……骨になってるじいちゃんがいた」
シロの目からポロポロと涙が流れた。
「そこにあったローブは、間違いなくじいちゃんの物だった」
「そんな……」
メイもポロポロと涙を流した。
「野ざらしになってたじいちゃんが、あまりに可哀想で、埋葬してあげながら、オレは決心したんだ。絶対にヴァシルスを殺してやるって」
シロの瞳は、涙でいっぱいだが、とても力強い。メイはシロを強く抱きしめた。
「そんなことがあったなんて……。話してくれてありがとう」
シロは、メイの胸でワンワン泣いた。
いつの間にか、部屋に入っていたアレムが口を開いた。
「メイ、私はアイツのことを父だとは思っていません。血もつながってないですし。私は母の連れ子なんです。
アイツは自分が王となるためなら何でもやる、極悪非道なやつです。殺したほうがこの国のためにもなる」
アレムはどこか寂しげな顔で言った。
「そう、なんだ。わかった」
「人を殺すことに躊躇いがあるのなら、メイは仇討ちには参加しなくてもいいんですよ」
メイは唇を噛み締めた。
「うんん。私もやる。覚悟できた」
「そうですか……。では、早速作戦会議したいところですが、今、ユラが女王陛下に呼ばれているんです。我々の潜入がバレてなければいいのですが……」
ユラは玉座の間へ赴き、女王に跪いた。
「お呼びでしょうか、女王陛下」
ユラはメイたちのことを咎められると思い、身を固くした。
「アナカイリヤ国王陛下から、本日お手紙が届きました」
女王は淡々と言った。
「『ルヴィーナが、どうしても、ユラ殿下の元へ嫁ぐのは嫌だと言って聞かないのです。花嫁側からのご無礼をお許しください』だって」
「え?」
「婚約が破談なったわ! どうしてくれんの!」
女王は不満そうに口を尖らせた。
「破談?」
ユラは思わず声をあげた。
「もうっ! ユラリン! 何やらかしたの? あんなに盛大なパーティまで開いたのに!」
女王は体を左右に揺らして叫んだ。
「大国とのつながり、欲しかったよぉー!」
「ごめんなさい」
ユラはしきりに頭を下げた。
「あーあ、しばらくは噂話のネタになるでしょうね。覚悟しなさい!」
「はい。失礼します」
ユラは玉座の間を出た。
これから、婚約解消がなぜ起きたのか、世間では様々な憶測が飛び交うのだろう。あることないこと言われるかもしれない。でも。婚約するよりはずっといい。
ユラは足取り軽く、自室に向かった。
次回からはクライマックスに向けて、大きく動くことになる予定です。




