ep.3 正反対の同居人
この世界で1人になりたくない!芽依は必死に魔法使いユラに、弟子にしてくれと頼む。だが冷たい視線の男アレムが芽依を警戒し、反対して——。
「この女の格好はなんですか?得体が知れない。断りなさい」
冷たい眼差しは全身に突き刺さるようだ。ユラの太陽のような温かさとは、正反対の眼差しだ。
「お願いです。ユラの弟子になりたいんです」
「どこの国から来たんですか?」
「……日本……という国です」
「ニホン……聞いたことがありませんね」
「聞いたこともないような異国から来たんだね。確かに顔つきも僕らとは違うような……」
ユラがジロジロと顔を眺めるので、芽依はいたたまれずに目を伏せた。
(どうせ、美しいあなた達とは違いますよ……)
「ひとつだけ聞いていい?」
「何?」
「メイはどうして魔法使いになりたいの?」
ユラの真っ直ぐで優しい眼差しに、芽依は正直に話すことを決めた。
「……死んだ両親を甦らせたいの」
「え!?」
アレムは呆れた様子で、腕組みした。
「はっ……死者の蘇生か。そんな事だろうと思った」
「それはかなり高度な魔法になるね……」
ユラの思いがけない言葉に、芽依は自分の体が熱くなるのがわかった。
「できるの!? 死者の蘇生という魔法があるのね?」
「うん。それができるのはこの国で僕しかいない。でもそれは死んだ人が今ここにいて、死後7日以内という条件付きなんだ」
「 …… 」
芽依は目の前が真っ暗になった。
「メイの両親が亡くなったのはいつ?」
「7年前……」
「はっ!残念だったな女。それは不可能な事だ」
「アレム、流石に口を慎めよ」
「はっ、すみません」
一瞬、とっても険しいユラの顔が見えたが、芽依の視界は涙で徐々にぼやけていった。
「そっか……魔法だって、なんでもできる訳じゃないよね……」
両親を甦らせることは無理なんだ……。だったら私は、この世界で何がしたいんだろう。
あふれる涙はポタポタと草の上に落ちていった。
「メイ?……わっ!どうしよう僕、ハンカチ持ってない!! ね、アレムは? 持ってない?」
ユラは芽依の顔を覗き込むと、慌てふためいて右往左往し始めた。
「いや、持ってませんよ」
「もう!なんで持ってないの?どうしよう……」
「あはは……」
ユラの様子がおかしくて、芽依は声を出して笑った。泣きながら笑う芽依を見て、ユラとアレムは目を合わせた。
「そうだメイ……今からうちへおいでよ。僕とアレムが暮らしている家があるから、そこに……」
「ダメですよ!ユラ——」
「家……そうだ!家だ!」
キョトンとしているユラの手を握って、芽依は叫んだ。
「私、やりたいことがあった!家づくり!魔法で家を作ることってできないの?」
キラキラと輝く芽依の瞳に、ユラは圧倒された。
「やったことないけど……」
「そうなのね。でもできるかもしれない。うんん、もし魔法では作れなかったとしても、自分の力で作ればいんだ。再現するんだ!あの家を!この世界で」
興奮して1人の世界に入る芽依を、ユラとアレムは呆然と見つめた。
「変わった女だ……」
「見てて飽きないね。メイはきっと大丈夫だと思う。弟子にしても、いい?」
「はぁ……ユラはどこまでもお人好しですね」
「それはOKってことだね、アレム」
こうして、芽依は魔法使いユラの弟子となった。だがこの時、一部始終を遠くから見つめる「目」があったことを、この3人は知らなかった。
家づくりは土地と資材さえあれば、私も作ってみたいものです。あとは体力さえあれば……。