表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/46

ep.27 ルヴィーナ王女

ヴァシルスがユラの婚約を知った頃、メイたちは王都に入ろうとしていた。一方、着々とパーティに追われる王宮内にユラは戸惑っていて—— 。

パーティの前日、ユラは会場である庭の広場へ向かった。

そこではルヴィーナが侍女と談笑していて、ユラを見つけ、微笑んだ。

「ごきげんよう」

「ごきげんよう。今日のお召し物も素敵ですね」

「ありがとうございます。フフッ」

ルヴィーナはエメラルドのドレスを摘んで会釈した。そして目鼻立ちがハッキリした顔を左に傾けた。亜麻色の髪がふわっと風に揺れる。


ルヴィーナに会うのはこれで3回目だ。

初めて会った時は緊張でうまく話せなかったらしい。ユラはルヴィーナ王女は無口な方だな、と思った。

2回目は2人でこの庭を散歩した。


「花はお好きですか?」

沈黙を破ろうと、ユラは訪ねてみた。

「人並みです」

ルヴィーナは答えた。

「アナカイリヤの王宮は、ここよりももっとお庭が広いです。ここの庭は手入れは行き届いていますが、少し狭くて簡素な印象ですね」

「あー、そうなんですね……」

ユラはなんて答えようか戸惑った。

「では、動物はお好きですか? 僕はリスを——」

「苦手です」

「あ、そうですか……」

「先祖代々、動物が苦手な血筋なのです。動物って何をするかわからないでしょう? 動物はアナカイリヤの王宮内には一匹もいませんよ」

ユラはピピの話をしようと思っていたが、できなくなった。


「私が好きなのはドレスです」

ルヴィーナは自分のドレスを見つめ、うっとりした。

「私は一度着たドレスは二度と着ません。アナカイリヤには王宮内に仕立て屋があるんです。私は毎日そこへ出かけて、次に作るのはこの生地にして欲しい、こういう細工を施して欲しい、とお願いしているんです」

「へえ、そんなにこだわりがあるんですね」

「ええ」

「あ、今日のお召し物も素敵です」

「フフッ、ありがとうございます」

ユラはこれ以上、何と言えばいいかわからなかった。服のことは無頓着なのだ。


そして、今日が3回目だ。


「明日の婚約パーティはここで開かれるのですか?」

ルヴィーナは庭を見渡して言った。

「ええ。国王がここが良いのではないかと」

「……思ったより狭いですね」

ルヴィーナは不満そうに口を尖らせた。

「アナカイリヤにはここの倍くらいのガーデンがあって……」

ユラはうんざりした。ルヴィーナは何かというとアナカイリヤとバルドルアを比べる。大国の姫とはこういうものなのだろうか。ユラはこの人との未来が想像できないな、と思った。

「王女殿下、食事のことでお話が」

侍女がやって来て、ルヴィーナに声をかけた。

「では」

ルヴィーナはユラに会釈すると、その場を去った。


ユラは一人、会場を見渡してみた。明日、本当にここで婚約パーティが開かれるのか。ユラの心がズンと重くなった。今すぐここから抜け出してしまおうか。ユラは閉ざされた門を見つめた。でも、周りの迷惑を考えられないほどもう幼くはない。


「こちらにもっと椅子をください」

使用人が声をあげた。会場の端に舞台を用意しているようだ。ユラはその使用人に声をかけた。

「ねえ、ここは何するところ?」

「ああ。殿下。これは殿下の婚約をお祝いしたいと、フィリエから楽士団がやってくるんです。その演奏場所なんですよ」

「へえ、楽士団かぁ!」

ユラの心は少しだけ軽くなった。そう言えばフィリエで、アレムと一緒に楽士団の演奏を聞いたことがあった。あれはまだアレムが18でユラが15だった時のことだ。ユラはその時の自分達を懐かしく思った。

次回は王都へ入ったメイたちの話になる予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ