ep.25 いざ王都へ
国王から婚約者の存在を知らされたユラ。一方、メイはユラを取り戻すため、力をつけようと試行錯誤していた。
早くユラに会いたい。会うために、私はどう力をつけたらいいのか……。
メイは洗濯をする手を止め、川を眺めていた。遠くからアレムとシロが闘っている音が聞こえる。
メイは自分ができることを指折り数えてみた。
「回復魔法・移動魔法・洗濯魔法・家づくりの魔法 ……この4つ…… 」
家づくりの魔法はあれから1度も成功していない。それに呪文を唱えてから家が完成するまで1時間かかる。実戦で使えるとは思えない。メイは曲げた薬指を伸ばした。
シェリに使った移動魔法は、相手がどこへ行ったのかわからない。行った先で相手が何をするかわからない、切り札のような魔法だ。メイは中指も伸ばした。
「残るのは回復魔法と洗濯魔法……洗濯魔法を人に向かってやる?」
洗濯魔法は水で汚れが流れていくイメージで発動する。それなら。メイは川の水をすくった。水を操ることはできないだろうか……。
ユラが王宮へ戻ってから3ヶ月が経った。
アレムとシロは毎日2人で実戦訓練をして、メキメキと強くなった。
シロは昼食後、日課として必ずユラを「探知」していた。
今日は元気がある・今日は元気がない・今日は楽しそう・今日は悲しそう・今日は悲しそう・今日は悲しそう……。
ここ半月ほど、毎日ユラは悲しそうにしているらしく、いよいよ3人はユラを助けにいかなければ、と決意した。ユラに何かあってからでは遅い。
出発の朝、メイは驚いた。シロが坊主になっている。
「この方がどんな攻撃がくるかわかるんだ。すごく集中もできるし」
シロは笑って言った。
ふわふわしたオレンジ色の癖っ毛は昨晩アレムに全て刈ってもらったそうだ。褐色の肌に坊主、野球少年のようだ。
「似合ってるねー」メイはシロの頭をジョリジョリ撫でた。
「ええ。本当に」
階段を降りて来たアレムはいつもと装いが違った。出かける時に必ず羽織っていた黒いローブが無い。
「あれは邪魔なのでクローゼットにしまったんです。動きやすい服を見つけられて良かった」
そう言って着ているのは、上下とも黒のシャツとズボンだ。どちらも体のラインがくっきりと出るタイトなもので、メイは目のやり場に困るな、と思った。
「メイもなんだか違うね?」
シロはメイの周りをぐるぐる回りながら言った。
「私はズボンを変えただけ。短い方が魔法の生成速度が早いことに気づいたから」
メイは半ズボンの裾をつまんで、照れ笑いした。
「ふーん。メイの足って真っ白でキレイだね。ね?」
シロがアレムに同意を求めたので、アレムは眉間にシワを寄せ、咳払いした。
「いいえ、普通ですよ」
「えー!でもアレム、耳が真っ赤だよ?」
シロがニヤリと笑ったので、アレムは「このクソガキ!」と言い、しばらく追いかけっこが続いた。
シロが魔法で作ってくれた馬車で、3人は王都へ向かった。旅は思いの外順調に進んだ。
2日目、3人がベンチに腰掛け、昼食にサンドウィッチを食べていると、すぐ後ろで井戸端会議が始まった。
「ユラ王子の噂知ってる?」
3人は目を合わせ、耳を澄ました。
「ええ、お相手はアナカイリヤのルヴィーナ王女らしいじゃない」
「2人ともお美しいのよね。お似合いだわー」
「もうすぐ正式な婚約パーティがあるそうよ」
ゴホッ、ゴホッ。メイはサンドウィッチを喉につまらせてしまった。
「大丈夫? メイ」シロはメイの背中をさすった。
「全然大丈夫じゃない……」
メイはそれから、食事が喉を通らなくなった。
次回はヴァシルスの動向、関所での出来事などです。




