ep.23 実戦訓練
ユラを助けに行く前に「オレと闘おう」とシロは言う。メイが見守る中、アレムとシロの実戦訓練が始まる。一方、王宮でのユラは——。
シロが呪文を唱える。
すると、杖からオレンジ色の閃光がアレムに向かってきた。アレムは木に乗ってそれを避けた。と、閃光はアレムの乗っている木に当たり、燃え始めた。アレムは木から降りて苦笑いした。
「私を燃やすつもりか?」
「オレは手なんか抜かないよ」
シロは得意そうに笑っている。メイは両手を握り締め、落ち着かない様子で2人を見守っている。
アレムはサッとシロの間合いに入り、脇腹を枝で叩こうとした。が、シロは気づいてサッと後ろに避けた。
「当たんねえよ」
「私は手を抜いているからな」
「舐めんな!」
シロは杖をアレムの顔に向け、何やら呪文を唱えた。アレムの頭の上でパチパチッと音が鳴ったので、嫌な予感がしてアレムはシロの足を払った。瞬間、先ほどまでアレムがいた場所に雷が落ちた。
「キャア!」メイは身を縮めた。
シロは足を払われて倒れた。アレムはシロの胸に枝を突き刺そうとした。が、「アレム!」メイに名を呼ばれ、すんでの所で手を止めた。
「悪い。本気になった」
「ハァ、うんん、ごめんね、あおって」
シロの目から今にも涙がこぼれそうだ。でもグッとこらえて、シロはニカッと笑った。
「やっぱアレムは強いや」
ハハッ、アレムが笑って差し出した手を、シロは取ろうとしたが、足を痛めたようで、シロは顔を歪めた。
「シロ!大丈夫?」メイは駆け寄り、「ちょっと待ってて」と、シロの赤く腫れた左足首に手をかざし、呪文を唱えた。虹色の光が灯り、赤い腫れはスッと元に戻った。
「わっ、すごい、メイ! 回復魔法覚えたんだ!」
シロはメイに抱きついた。
「うん。まだ大きいケガは治せないけど」
「すごい! すごい!」
シロはその場でジャンプし、足の回復を喜んだ。
「ねえ、アレム! やっぱりこうやって実戦してから王宮に行こう?」
アレムはやれやれと思いつつ、「そうしますか」と答えた。
「ねえ、もう1戦やりたい!」
シロに引っ張られて、アレムはついていった。
そんな2人を笑って見守りながら、メイは暗い気持ちがどんどん胸に広がるのがわかった。
回復魔法だけじゃダメだ。私も戦力にならないと。
「わあ! 本当にサラサラですね、ユラ王子」
「でしょ? サラサラを超えて、ヌメヌメだよね?」
「いや、ハハッ、その表現は、どうでしょうね?」
ユラの部屋、しゃがんでピピを触っているのはユラと2人の衛兵である。ピピの触り心地があまりにも良いので、ユラが衛兵達にもピピを触らせてみたのだ。
「あ、ちょっと待ってね」
ユラはいたずらっぽくウインクすると、ピピを手に乗せ、杖を振った。キョトンとしている間に、ピピはキラキラの光に包まれ、衛兵と同じ紺の上着姿になった。
「えへへ、ふたりと同じ服着せてみた」
『可愛いー♡』
衛兵達はピピに釘付けになった。
コン、コン。
扉を叩く音がして、衛兵もユラも、サッと元の立ち位置へ戻った。
扉が開き、国王の執事が顔を出した。
「家族ランチの時間です。ユラ王子」
「あ、うん……分かった」
ユラは行きたくない気持ちをグッとこらえて、衛兵にピピを託した。
次回はユラの家族の話になります。




