第2章: 借金まみれ
研究室を後にした佐藤と田中は、それぞれの家へと帰る。しかし、二人の頭からは、借金の重圧が離れることはなかった。家に着いた佐藤は、無造作に置かれた請求書の山を見つめ、深い溜息をついた。テーブルの上には、今月の支払いに追われて手をつけることができなかった郵便物が山積みになっていた。
田中もまた、家に帰るとすぐに書斎へと向かった。彼の書斎は、かつては新しい発見やアイデアを生む場所だったが、今は借金の計算と、どうやってそれを返済するかの苦悶の場と化していた。彼は机の上に広げられた書類を見つめ、頭を抱えた。
「こんなはずじゃなかった…」
田中はつぶやくが、その声にはすでに疲労と絶望が滲んでいた。家族のために、彼は少しでも明るい未来を描こうと努力していたが、現実は彼の希望を次第に蝕んでいた。
一方、佐藤もまた、自宅で同じような思いを抱いていた。家族には、研究が順調だと言い続けていたが、実際には借金の返済に追われる日々が続いていた。彼の妻は何度も「無理しないで」と言ってくれたが、その言葉がかえって彼の胸を締め付けた。
「なんとかしなければ…」
二人の科学者はそれぞれ、自分たちの窮状を打開するために、最後のチャンスとして新たに開発したガスのことを思い浮かべていた。それが成功すれば、全てが変わるかもしれない。だが、その成功がどれほどの代償を伴うのか、彼らはまだ知らない。
佐藤と田中は、次の日も研究室で顔を合わせた。お互いの表情には、昨日と同じように不安と焦りが見えたが、二人ともそれを口にすることはなかった。ただ、目の前の研究に集中するしかないと、無理やり自分たちに言い聞かせたのだ。