安楽でもない仕事
サイコパスには「つまらないからしたくない」。そう言われ嫌われている仕事があった。
それは安楽死の薬剤を打ち、人を殺す仕事だった。サイコパスに人気が集まるだろうと思われたが、彼らにとっては退屈で魅力がない。
多くは医者がしている仕事だったが、全員が精神を病み、結局、自殺してしまう人ばかりだった。いくら死にたいという人を殺しても、良心が痛まない人間は少ないのだろう。社会問題となり、今は安楽死を希望しても、スムーズに死ぬ事すら難しくなっていた。
2027年、AIの台頭により、自殺者が増え、安楽死が合法となった。生きづらい人も多いようで、安楽死希望者は絶えない。しかし、問題がある。誰が殺すのか。そして殺した後の事は?
「俺、弱者男性だから安楽死希望しているんだよね」
俺は、2027年以前は軽々しく、そんな言葉を吐いていたが、今はそうそう言えなくなっていた。
合法されたといっても、この仕事の過酷さが社会問題になり、世間の目は志願者に厳しかったのだ。
死刑だって誰が殺したのかわからないシステムになっている。安楽死を実行した人間が病まないわけがない。
「殺す人の気持ちなんて今まで考えてなかった……。だから俺は弱者男性だったのかねぇ……」
俺はそうため息をつき、安楽死の案内を破り捨てた。