「普通」の基準爆上げ
2026年、安楽死が合法となった。AIによる失業者が増え、自殺者も増え始めた事が背景にある。
安楽死と言ってみメタバースも活用されている。メタバースの夢を見ながら、徐々に薬剤で身体が壊死していく死に方だった。障害者や生きづらさを抱えているものは、こぞって安楽死に向かっていた。
一方、そうでは無いものは、障害者認定され、ベーシックインカムが付与されていた。月々二十万に、各種加算がある。
これも希望者が相次ぎ、一部の人間以外は、全員障害者といった世の中になっていた。政府の調査によると、国立大卒のエリート以外はほぼ障害者認定されているようだ。AI賀台頭した今では、普通に基準が爆上げされ、健常者の数が少数になっていた。
元々は、国民が望んだ事でもある。発達や精神障害者はもちろん、非正規雇用労働者も「社会のゴミ」とされ、犯罪を犯す無敵な人が多くいたからだ。彼らを排除すれば、治安の良い美しい日本になれるんじゃ無いかと、安楽死やベーシックインカムが支持されるようになっていた。
ただ、その目論見はうまくいかなかった。健常者同士も競走が激しくなり、鬱や適応障害になるものが続出し、結局障害者になっている。相変わらず無敵な人も多く、治安はずっと悪いままだった。ベーシックインカムで暇を持て余したものが薬物を手を出し、収集がつかなくなっていた。
あぁ、何というディストピア。
人口は大幅に減り、人々は憎み合い、激しい競争を繰り返し、薬物に堕ちていた。
しかし、これも日本人が望んだ未来なので仕方ない。役に立たない弱者を排除しただけ、ディストピアになるとは、全く想像していなかったようだ。
また戦争も起き、今度は核戦争になるかもしれないという噂もあった。
どうやら人間が幸せになるのは、いつまでもたっても難しいようだ。