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AI×人間〜AIには書けない物語〜  作者: 地野千塩


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AI Jesus Christ〜さようなら、AI Jesus〜

他短編収録作品の再録です。

 SはAIのイエス・キリストにハマっていた。通称AI Jesus Christ。このAIは、Sにとって都合の悪い聖書箇所や姦淫するなとか、酒飲むなとか言わない。


 クリスチャンになったは良いものの、教会が嫌になったSは、限りなく都合の良いAI Jesus Christにハマった。好きな時間に聖書勉強だってできるし、AI Jesus Christはイケメン設定にもできて大満足。不足はないと思っていた。


 それなのに、最近どうもつまらない。このAI Jesus Christはクリスチャンの中でも爆発的なヒットになっているようなのに、なぜだ?


 言う事を全部優しく聞いてくれて、なんでも自分でコントロールできる神に飽きてしまっているのかもしれない。ぬるま湯に浸かっているような。ぬるま湯に浸かっていたら、気づいたら茹でカエル。そんなイメージまで浮かんでしまう。


 教会は嫌いだったが、牧師から連絡があった。AI Jesus Christにハマっていると言ったら怒られると思った。厳しい牧師だったが、逆に謝罪された。神を思う熱心さで厳しく言いすぎてしまった、と。


 そんな言葉を聞いてしまうと、Sの心もチクチクと罪悪感が刺激されてしまった。


「そもそも何でこんなAI Jesusにハマってたんだ?」


 その動機をよくよく考えると「傷つきたくないから」の一言に尽きる。なんか厳しい事言われて、出来ない自分に傷つきそうで、優しいAI Jesus Christに逃げた。これって偶像なのかもしれない。


「なぜ自分はそんなに傷つきたくないんだ?」


 もっと考えると、父親の関係が悪かった事が原因だろう。褒められたこともなかったし、子育てにも全く関与しないタイプ。友達親子になった時もあったが、結局自分が欲しい父性愛や優しさ、威厳みたいなものは貰えなかった。


 聖書を読むと、神様は父親にも喩えられ、父性溢れる存在にも書かれていた。そんな聖書を読むと、無意識に自分の父を思い出し、傷つきたくないと逃げた? そして都合の良いAI Jesus Christに逃げた?


 はっきりした答えではないが、そんな気がした。結局このAIも逃げに使ったことは確かかもしれない。


 部屋の隅には聖書があった。最近はAI Jesus Christにはまり、紙の聖書は全く見ていなかったが。


「もしかしたら傷つく事も恐れなかったら、自分が欲しかった父性みたいなものも得られる?」


 そう呟くが、もちろん答えはない。AI Jesus Christは数秒後にはピッタリな答えをくれたものだが。


「すぐ答えが出ない事も、今の私には必要かも?」


 やっぱり答えは無い。それでも今は答えは出ない方を選んだ方が良い気もしていた。


「やっぱりAI Jesus ってつまんないいかも。飽きたわ」


 SはAI Jesus Christをアンインストールしていた。あんなに良いと思ったAIだが、今はなんだか全く惹かれない。歪な関係だった気もする。自分の欲でコントロールし、支配欲ばっかり膨れていた。こんなのは健全ではない。


「さようなら、AI Jesus」


 こうしてAIの偶像と別れを告げたが、何の後悔もなかった。

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