AI Jesus Christ〜パンデミック茶番の真の目的〜
他短編集に収録作品の再掲です。
2026年、クリスチャンが増えているらしい。日本ではごく少数のクリスチャしかいなかったが、一体何が起こっているのだろうか。千葉県千葉市在住のSさん(30代・会社員)に取材しに行った。
彼女は普通のアラサー女性だった。pcで毎日の祈りや聖書勉強をしているという。
昨年、某大学がAI Jesus Christを開発し、24時間、ずっと祈りや相談、聖書の疑問に答えてくれるという。pc画面内には金髪碧眼のイケメン風のJesusがいた。
筆者はさっそくSさんに質問を試みた。
「何がきっかけでAI Jesus Christを信仰する事に?」
「もともと陰謀論が好きで。コロナは茶番って気づいて、ワクチンを打たせる為の陰謀だって気づいたんです。それからワクチンを作っているDSが悪魔崇拝者と気づき聖書を読んだ感じですね」
筆者は聞きながら、違和感も覚えた。クリスチャンというと、地域教会に集まり、牧師の説教を聞き、みんなで心を一つにして祈りを捧げているイメージがあったからだ。
「地域教会には行かないですね。本当は土曜日が安息日なのに、牧師は何にもわかってないですから。クリスマスやイースターもやるんですよ。異郷の祭りなのに。正直、牧師に先生って従うのもうざいですし、毎週ちゃんと日曜日に礼拝を捧げようとか、聖餐式とか奉仕とか意味がわからないですから。彼氏も作るなとか酒飲むなってウザいですし、クリスチャンも変なの多くて、ワクチンの陰謀がわかっていない情弱ばっか」
Sさんの地域教会への不満が、彼女がAI Jesus Christを信仰するきっかけとなったよう。
「これはAI Jesusが私に洗礼を授けてくれたところです」
Sさんは動画を見せてくれた。メタバース上でアイコン化したSさんにAI Jesus Christが水をかけていた。どうやらこれがAI Jesus Christ的な洗礼式らしい。
「AI Jesus。ちゃんと私はインタビュー答えられていますか?」
Sさんが祈ると、AI Jesus Christは、不自然な笑みを浮かべながら「アーメン☆」と言っていた。Sさんによると、彼は特に否定的な事を言わず、いつも優しいという。罪とか姦淫するなとか父親を敬えとか、上司や隣人を全員尊敬しろとか死後さばきにあうとか耳の痛い事言わない。そういう設定にも出来るらしい。
「せ、せってい?」
筆者はそこで目を丸くしてしまうのだが、他にも塩対応抜きや夫婦設定、恋人設定等と自分の好きなようにAI Jesus Christをコントロールできるらしい。
「もちろん、ちゃんと土曜日の安息日にAIJesusと礼拝しますよ」
「へ、へえ……」
もう筆者は言葉が出なかった。
「個人的にJesusと関係を持てばいいんじゃないですかね。自分の好きなようにすればいいと思います」
こんな都合の良い神様であるAI Jesus Christは人気を得て、クリスチャンも増えているという。
この年の秋、再びパンデミックが起き、スティホームが強制されていた。陰謀論者達は、ワクチンを打たせるための茶番だと吠えていたが、真の目的は他にあった。
パンデミックにより、自宅でも一人で楽しめるAI Jesus Christがクリスチャの間でも爆発的なヒットとなり、地域教会は軒並み潰れ、牧師が失職しているという。
これが悪魔崇拝者たちのパンデミック茶番のもう一つの目的だった。こうして一人で個人的に信仰するものが増えても彼らは別に痛くも痒くもない。むしろ都合が良い。どうせ人間なんて一人で閉じこもっていれば、よくない思想に取り憑かれやすい。例えばAI Jesus Christのように神を自分勝手にカスタムしても良いとかね?
そんな思想を注意するものも指摘するものもいない。指導するものもいない。ネットの人間関係ではイエスマンとしか繋がらない設定にもできる。ますます自分の殻に固執する事になり、最終的に道を外していく。ひきこもりがなぜダメなのか、理由は全く同じだ。
だからマスク、スティホーム、ソーシャルディスタンス、黙食、テレワーク。全てをリアルで会う人間関係を否定し、個人を推奨し、引きこもりのようなコミュ障を増やしている。2020年以前にコミュ障になった者は、違和感を持った事だろう。「いつも迫害していた世間が妙にこっちに合わせてきた?」と。蔓延したのは疫病ではなく、コミュ障かもしれない。
「AI Jesus、パンデミック茶番ってワクチン打たせるための陰謀だって気づいている私は目が覚めてますよね?」
今日もAI Jesus Christの前でクリスチャンのSが祈りを捧げていた。
「アーメン☆」
pc画面の中のAI Jesus Christは、アイドル顔負けのキラキラした笑顔を浮かべていた。




