009_ギルド職員は雑談する
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あらすじ:おジゾウ様はうっかり属性。
視点:冒険者ギルド 受付職員 モーリス・オノさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 1週6日目》
◆冒険者ギルド本部 休憩室◆
「ん? ああ、ヤス兄か、おつー(フリフリ)」
「おっ? お前も丁度休憩か、モーリス。
…ふっ、まさかサボりじゃないだろな~?」
「違ぇってーの。
ちゃんとキリの良い所まで終わらせてから
休憩入ったっての」
「はははっ! 冗談さ、モーリス。
ちゃんと許可とって休憩入ったのは
俺も知ってるさ」
「勘弁してくれよ、ヤス兄~」
ま、本当の所は、作業に詰まったから
気分転換で休憩入ったんだけどな。
…………はぁ。
自分の事ながら少し嫌になってくるぜ~。
何やっても要領悪ぃんだよな、俺。
周囲の奴らも、皆同じ事言うしな。
真面目にやれ、本気でやれって…。
俺としては大真面目にやってるつもりだぜ~?
でも、な~~んか、違うんだろな。
今じゃもう、アレコレ言ってきてた
周囲の先輩や同僚連中も言うの諦めたっぽい。
俺の両親とか実の弟や妹とかと同じだな。
ははっ…こりゃ、また見放されたかね~?
「そう言えばよ、ヤス兄。
さっき帰った奴が着てたのって…アレだよな?」
「うん? ああ、フール君の事?
ま、お前も知ってると思うけど
あの服は、そうだと一目でわかる様に配ってる服だな。
今回は珍しくあの服を着てたからね。
対応や手続きも手早く済んだよ」
「やっぱり、あいつもそうなんだ…。
異世界から来た人間」
俺がヤス兄の推薦で
ここの職員になってから今年で3年目だけど。
今までにも、異世界から転移…? だったり
前の世界での記憶を持って、この世界に転生…?
とか言う、意味はよくわかんねえが
そういう経歴の奴らが来たのは覚えてる。
何で、そんな事わかるか…?
いや、いくら周囲にダメ呼ばわりされてる俺でも
明らかに見た目から違ぇ服着てて
言ってる事もやってる事も無茶苦茶な奴らが
この世界では異質な存在だって事はわかるさ。
「大体の人達は、あの服着てこないから
僕なんかは、むしろ逆に珍しく感じたよ」
「……なあ、ヤス兄?」
「うん?」
「何で、大体の異世界の奴らってのは
服にしろ道具にしろ、元の世界の物を
頑なに使いたがるんだろうな?
今はもう、この世界の住人なんだろ?
この世界の物を使えばいいと思うんだけどよ」
何故かはわかんねえけど
あまりにも見た目にボロボロだからって
ギルドから、服とかを無料で支給しても
異世界人達はそれを着たがらねえ。
…いや、喜んで着る奴も居るには居たけどよ。
別に金取る訳じゃ無いんだぜ?
無料だったら、別に拒む理由はねえだろ。
「……まあ…モーリスには
理解できないかもしれないなあ」
「(ムッ)俺にはって…。
それって、どういう意味だよ」
「ん? ああ、怒るな怒るな。
別にお前をバカにしてる訳じゃないさ。
…ただ、モーリスはこの都市で生まれて
ずっとこの都市で育ってきただろ?」
「確かにそうだけど…。
それがどうしたんだよ?」
「ほら、俺は父さんの仕事の関係で
昔は結構あっちこっちに着いて行ってたろ?
だから…さ、何となく彼らの気持ちも
理解できるんだよ」
「ふうん? そんなもんなのか?」
そういや、ヤス兄の親父さんって
最近は手配だけだけど、昔は自分で商隊率いて
各地のギルドへ、物資とか運んでたんだっけ。
それに、ヤス兄も同行してたから
俺が遊びに行っても、居ない事が
たまにあったんだよなー。
「出先だと、気候も食生活も違うだろ?
やっぱり、いつも着慣れてた格好とか
食べ慣れた料理ってのは恋しく思うもんさ」
「…うん…うーん?
わかるようなわからない様な?」
「ま、俺もわかるって言っても少しだけさ。
何となく…って程度だからね…。
何しろ、俺の場合と状況が違うものな」
「ん? 状況?」
「ああ…だって、そうだろう?
この都市が故郷である俺達とは状況が違う。
異世界から来た彼らは、帰りたくても
元の場所…世界に帰れないんだよ?
その度合いは、人にもよるだろうけど
大抵は手放したくないと感じると思うよ」
「あ──…なるほどなあ。
そういう考えもあるのか…そう考えたら
俺でも少しは理解できるかも」
「ああ、そうだ、それでいいんだよ。
全てをわかろうとするなんて
到底無理な事だからね。
……さて、そろそろ俺は戻るけど
モーリス、お前も仕事残ってるんだろ?
適当に切り上げて戻ってくるんだぞ」
「はは…わかってるって、ヤス兄」
…結局、ヤス兄だけなんだよな。
今も俺に対して態度変えねえのって。
……俺を見放さねえ人って。
はあ……しゃーねえなあ!
もちっと休憩して気合入れ直したら
さっきの続き終わらせるか。
ヤス兄に迷惑かけるわけにゃいかねーもんな。