005_門番ではよくあること
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あらすじ:フールさんは元々使えていたスキルが
現在は上手く使えないようです。
視点:都市の副守衛長 ダンさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 1週6日目》
◆都市の防壁 門前◆
「リーダー?」
「…見えとるわい。
あと、リーダーは止めろっての。
何度言わせるんだ」
「へいへい、ダンさん。
…で、どうしますー?」
…ったく、こいつは。
パーティ解散してから10年経ってるってのに
ほんと、変わらん奴だな。
……でだ、4人組の内の3人。
あっちは見覚えあるな。
今朝から外へ出てった冒険者のガキ達だ。
問題は残りの1人…下着だけの奴。
下着? 下着…でいいんだよな?
遠目だと布巻いただけに見えるが…。
「どうしたんですかね? アレ。
盗賊にでも襲われたんですかね?」
「…にしては、綺麗過ぎるな。
争った形跡も怪我してる様子も見えん。
……と、なるとアレか」
「あー……、アレですかねえ?」
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▽
「よ~し、一旦止まれ~」
(ザッザッザッザッ)
『(ニカッ)ああ、門番さんか。
お勤めごくろーさんです!
かっかっかっか!』
「あ、あの、門番さん。
この人は…えっと…(アワワワ)」
「ああ、慌てんなって、嬢ちゃん。
…あんた、ここじゃ見たこと無いが
どこから来なすった?」
『俺かい? 俺は───ってとこさ。
俺の事はフールって呼んでくれよ!』
「へえ…聞いたこと無いっすねえ。
リー…、ダンさん知ってます?」
「いや、俺も知らんな。
…ちなみに、聞きたいんだが。
追い剥ぎとか何かに襲われた
…という訳では無いんだな?」
「あ、はい…そ、そうなんですけど」
ふーむ…{呼んでくれ}ときたか。
…って事は、偽名なんだろうな。
それに国なのか町なのかは知らんが
聞いた事のない場所ときたもんだ。
やっぱりコレは、たまにあるアレだな。
ま……特に不審な点は無さそうか。
…格好以外はな。
『で? 通っても良いのかい?』
「ああ、少し待て。
おい! ロージー」
「へいへい、リーダー」
(バタバタバタ)
「「「???」」」
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▽
「ほれ、フール君だったか?
コレを着ていきなさい」
(バサッ)
『おっ? 服か…いいのかい?』
「ええ、門自体は裸同然でも通せますけど。
さすがに中に入ってそのままだと
確実に他の衛兵に捕まりますんでねー」
「だよねー」
「ま、そうですよね」
「ありがとう、門番さん」
「ああ、気にせんでい。
フール君も遠慮は不要だ。
なんせ、この都市では
よく…と言う程ではないが…。
たまにある事だからな」
『……かっかっかっか!
それならありがたく着させてもらうぜ。
ありがとうな! 門番さん(ニカッ)』
…ふむ、アレで察したようだな。
どうやら、フール君は察しが良い様だ。
しかも、受け答えを見る限りじゃ
かなり旅慣れているとも感じる。
…でなければ、初見の場所でこれほど
緊張もせずに受け答えできんだろうしな。
……それにしても、久し振りだな。
そう…君みたいな事はたまにあるんだよ。
この都市ではな。