004_謎だらけの不審者
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あらすじ:不審者さんは褌のお礼に肉を用意したようです。
視点:魔術士Lv1 ホワイトさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 1週6日目》
◆都市近郊の草原◆
「……ねえねえ? ちょっと思ったんだけど
お肉も皮も角も、割りときれーすぎない?
普通、もっと血でグチャグチャになるよね?
【ウシウサギ】ってそうなの? 姉ちゃん」
「いや、そんな訳無いわよ。
でも確かに、水で洗ったみたいに綺麗よね。
コレってどこかで洗ってきたの? フール」
うん、今ロゼが聞いたけど
僕もそれは不思議に思った。
でも、血とか脂って、水で流すだけじゃ
ここまで綺麗に落ちないと思うんだけど?
確かギルドだと、納品された素材って
魔法のスキルとか薬品で綺麗にしてるって
言ってたよね?
『あー…それな───。
一応【浄水】で洗ったんだが
どうも、上手く発動できなくてなー。
チョビチョビしか出なかったから
イマイチ綺麗にならなかったんだよな……』
「ぴゅ? ぴゅりり? え?」
「何それ?」
『うん? 何って…【共通スキル】の…。
あれ? 知らん? 聞いた事無い?』
「こもん? 私は知らないけど…。
ホワイトー、あんた知ってる?」
「え? いや、僕も聞いた事無いよ、姉さん」
「「「………???」」」
(パンッ)
『かっかっかっか!
まあ、気にしてもしゃーないし
とりあえず、その事は置いといて
都市まで案内してくれるか?
肉も皮もその辺の草で包んだだけだから
時間経ったら傷むだろうしな!』
「あっ!! そうだっ! お肉!!
いそがなきゃ!? 姉ちゃん!」
「……ま、まあ、そうよね。
とりあえず町に戻ろっか。
確か、皮とか角を納品するだけでも
結構良い稼ぎになるはずだから
そっち売るだけでも宿代は大丈夫だろうし」
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▽
(スタスタスタ、ザッザッザッツ)
「…ねえ、フール?」
『ん? どうしたい? 大きい方の嬢ちゃん』
「……まあ、聞きたい事は色々あるけど
まず、その呼び方やめてよ。
私はワイスって名前あるんだし」
『かっかっか! そりゃすまんかった!
…そんじゃ、ワイスちゃん。
俺に何を聞いたいんだ?』
「あっ!? ちなみに私はロゼ!
ロゼだからね? おっちゃん!」
「あの、僕はホワイトです、フールさん」
『かっかっかっか! 了解や!
ロゼちゃんにホワイト君もよろしくな?』
「「うん!」」
「……そ、それでね? フール。
もうちょっと歩いたら都市の門なんだけど
その…手とナイフの血──。
もうちょっとどうにかならない?
さすがに、目立つと思うんだけど…?」
「「あ───」」
『あ──確かになぁ……。
そんじゃ、ちょこっとやってみるか』
(チャッ)
『ん──【【浄水】】』
(チョボチョボチョボ…パシャッ、パシャッ)
「…わわっ!? これが水が湧き出る魔法?」
「あ、でも…何か勢い弱くない?
チョビチョビしかでてないよ?」
「いやぁ……何言ってんの? ロゼ。
綺麗な水出せるってだけでも凄いでしょーが」
うん、姉さんの言う通りだと思う。
はっきり言って、{綺麗な水}が出せる。
どんなスキルなのかわからないけど
それだけでも、凄い事だと思う。
都市の中だと、{綺麗な水}ってだけで
そこらのお酒なんかよりも
よっぽど高く売れるんじゃないかな?
(パシャシャッ)
『う──ん……微妙っ!!
今日はもうこれで打ち止めだな。
…ま、そこそこ綺麗になっただろ。
ああ、そうそう……』
(ヒュンッ、パシャッ)
『借りたナイフは返しとくぜ?
かっかっかっかっ!!』
「え? あ…うん──。
な、何か前より綺麗な気がする…」
『まー、さすがに肉とか切ったし
切れ味は研がなきゃ直らんからな。
その辺は、後で道具買ったらやってやるよ』
「…と、研ぎとかもできるんですね」
うわ…そういうのって専門的なスキルが
必要なんじゃなかったっけ?
本当にこの人、何者なんだろ……?