003_不審な行動をする不審者
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あらすじ:不審者は【ボロ布の褌】を装備した!
視点:戦士Lv1 ワイスさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 1週6日目》
◆都市近郊の草原◆
『かっかっか! 冗談だ、冗談!(ヒラヒラ)
ちゃ~んと、新しいの買うから安心しろって!
それに、お礼もしないと駄目だしな~!!』
「ぐぬぬぬぬ…」
「ね、姉さん、落ち着いて」
「あははは!」
あ~~~~~~っ!! もう!!!
腹立つなあ、この不審者の人!!
絶対、わざと私をからかってるだろ!!?
こんなやつ、やっぱりここに置き去りに……。
『(フイッ)……なあ、ちょっと聞くが』
「ん? …何?」
『お前ら3人は冒険者で良いんだよな?
それで、この辺にいる生物ぐらいなら
狩っても特に問題ないって事で良いか?』
「え? うん、そうよ。
それがどうしたの?」
「「?」」
『うんうん、なるほどなるほど。
んじゃ、少し待っててくれるか?』
(スタスタ、ガサガサガサガサ…)
「はあっ!? …って、行っちゃった」
「どうしたんだろね、姉ちゃん」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
▽ ▽ ▽
▽
「あ、戻ってきたみたいだよ?」
(ガサササッ、ザッザッザッ)
『いやあ、待たせたな』
「はあ…いきなりどっか行かないでよ。
……って、何それ!?」
「えっ? どうしたの!? うわっ!!」
「何で血だらけなの!? おっちゃん!」
10分ぐらいで戻ってきたかと思ったら
何で手を血まみれにしてんのよ、この人!?
ちょっと、犯罪とかじゃないわよね!!?
……うん? あれっ? 何か持ってる。
結構大きい……草の塊?
あ…いや違うっ! 草で何か包んでるんだ。
って、えっ!? 本当に何っ!?
「ね、ねえ、それ…何?」
『(ズイッ)おお、コレな!
丁度そこに居たからよ、とっ捕まえて
簡単に捌いといたんだよ』
(パサッ、パササッ)
「………っ!!?」
「ひ、ひいっ!? こ、コレ…?」
「あっ! コレってお肉だよね?」
こ、コレって多分、野生の兎じゃなくて
【ウシウサギ】だよね? モンスターの方。
頭に2本、牛みたいな角生えてるし…。
あの{初心者殺し}としても知られてて
割りとベテランの冒険者でも敬遠しちゃうアレ。
……えっ? あの短い時間で?
「えっ? えっ!? コレって
【ウシウサギ】だよね?
えっ? フールが…あなたが倒したの!?」
『ほー? こいつ【ウシウサギ】ってゆーのか。
いや、そこでのん気に草食べてんの見えたから
捕まえて、首をコキャッ…てなー』
「こ、コキャッ……?」
「えー!? そんなに簡単に倒せるの?
ギルドでも危ないって聞いてたから
みんな手を出さないでスルーしてたのに…」
「いや、危ないから、本当に。
だから手を出しちゃ駄目だよ? ロゼ。
こいつのせいで、どれだけの初心者冒険者が
返り討ちにあって死んでると思ってるのよ」
「…えー? でも──」
『(ヒラヒラ)まあまあ、大きい方の嬢ちゃんよ。
とりあえず、その話は後でいいじゃねえか。
こいつはとりあえず獲物で良いんだよな?』
「え? あ、はい。
討伐対象になってるモンスターです。
あんまり好んで倒してる人居ないですけど」
『かっかっかっ! そいつぁ良かった!
んじゃ、これはお前らにやるよ!
見た感じ、肉も美味そうだしな。
食うなり、売り払うなり好きにしてくれ!』
「ええっ!? 良いの?」
『おうよ! 遠慮なんかいらねえぜ。
(ペシンッ)この【フンドシ】のお礼だ!』
えええっ!? くれるの!?
私のヨレヨレになったボロ布のお礼で!?
いや、お礼にしたって貰いすぎじゃない!?
ギルドで討伐のクエストは受けてないけど
素材は納品できるから、結構な額になるはず。
あっ…でも、お肉…た、食べたいな。
前に食べたのっていつだろう。
それに、弟妹達には
最近まともなご飯食べさせてあげれてないし。
うう~~~~~! ど、どうしようかな…。
(クイクイッ)
「姉ちゃん! お肉! お肉だよ!
私、食べたいな!!(ジュルッ)」
「あ、あの…ぼ、僕も…(チラチラッ)」
「………(プッ)
あははっ! そうだね。
せっかくのお肉の機会だもんね?
やっぱり、姉ちゃんもお肉食べる方に賛成!
…じゃ、ありがたく貰うね、フール」
『(ニカッ)おうよっ!』