029_転生者達の事情 ②
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あらすじ:冒険者はLv5までは初心者扱いで
ダンジョンや一般人への道が開放されるようです。
視点:転移者 冒険者Lv2 ソウタ・ナカジョウさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 5週6日目》
◆冒険者ギルド直轄宿 浮島屋 2号店◆
「(ズキズキ)…っつぅ」
……あ──……失敗したなぁ。
別に自分のタフさを過信してた訳じゃないし
【異世界特典能力】の【耐性☆】を
そこまで当てにしてた訳でも無い。
結局は、モンスターを甘く見てたんだよな。
「あ、あの…ソウタさん、大丈夫ですか?」
「はは…ま、まあ……」
大丈夫かと言われてもなぁ。
実は俺の方が知りたいぐらいだ。
…ま、でも、咄嗟に庇ったのが間に合って
本当良かったと思うぜ。
あのまま、この子がアレくらってたら
多分即死してたと思うもんなぁ。
「あの、何かあたしにできること無いですか?」
「あ…それなら、何か飲み物頼むわ。
(ゴソゴソ)あたたっ…金はこれ使ってくれ」
(ポイッ)
「は、はい! 待っててください」
(ガチャッ、タッタッタッ)
「………」
う──ん…気を使わせちゃったか。
庇ったのはともかく、掴み損ねたって言うか
防ぎそこなったのは俺の失敗なんだけどなぁ。
動けない俺の手当と看病してくれたみたいだし
マキちゃんは良い子に違い無いんだけど
あんまり気にされると、俺も気まずい…。
………そういえば、あとの2人は?
マキちゃんと同じ世界出身のハルとナツキ。
…聞いた感じだと俺達と似たような世界で
あの2人は高校2年、マキちゃんは中学2年。
そりゃ元々接点なかったにしても
もう少し面倒見てやっても…って思うんだが
特にハルがなぁ…どーにも冷めてるって言うか
明らかに他人を見下してる感があるんだよな。
確かにあいつは頭も回って運動神経も良いし
やたらと勘が良くって、所謂、天才肌ってやつだ。
持ってる【異世界特典能力】も【万能〇】だけど
多分、それ関係なしに元の世界でも
あんな感じだったんだろな…。
同い年のナツキを手下みたいに使ってるしな…。
ま、こっちもシンジとは同じ世界出身だけど
別に仲が良かったわけじゃない。
…と言うか何か一方的に敵視されてたんだよな。
俺が物理科、あいつが魔術科って違いはあるけど
そんなの単に学科が違うってだけで
俺はあっちにも友達結構いたし……?
う──ん…、未だにわからん。
「(ズキズキ)っつつ……」
結局、【治療院】ってとこで薬塗られるだけで
宿に運んでもらった後は、寝っ転がるしかない。
色々とゲームみたいな世界だけど
聞いた話だと回復魔法は無いらしい。
ま、元の世界にも無かったし
無いと思えばそれならそれだよな。
ゲームじゃないんだし…。
でもこの薬草、凄くないか?
薬草には解毒作用もあるらしいし
傷の治りを早めてくれるらしい。
どんな万能薬だよ…って感じだ。
何かそう言う所だけゲームみたいだよな?
……ふぅ、それにしてもなー。
刺さった角は内臓に当たってなくて
派手に血は出たけど、静養してれば
その内、治るだろって言われたから
まあそこは良いとして、問題は金だよなあ。
……俺は当分活動できないだろう。
でも宿代と飯代は必要になる。
つまりはパーティのお荷物状態になる訳だ。
マキちゃんとナツキはわからないけど
ハルとシンジはなぁ…。
あっさりと見捨てそうなんだよなぁ。
はぁ…どうしたもんかな。