026_妹ちゃんは涙目になる
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あらすじ:認可されてる信頼できる店なら
店主に任せるのが一番手堅いそうです。
視点:都市の守衛 ロジアルさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 5週6日目》
◆都市の防壁 門前◆
「お、今日は早く帰ってきたっすねー。
…って、あれ? どうかしたっすか?
いっつも元気な妹ちゃんが
今日はおとなしいっすね~?」
「え、あ……う、うん」
「………」
「(オロオロ)ま、まあその…」
…はは~ん? これは妹ちゃんが
何かやらかしちゃったっすかね。
………ん──…見た感じだと
あの【転生者】のあんちゃんが
左手に包帯巻いてるっすねー。
…ってことは。
「おや? フールさん。
どうしたんですか、それ?
怪我でもしたっすか~?」
「(ビクッ)……っ!」
『(ゲラゲラ)かっかっか!
ちょっと失敗しちまってな~』
「おっと、珍しい。
ま、見た感じ大怪我って程でも
なさそうっすね」
『(ウンウン)そうそう。
こんなのかすり傷にも入らんって。
ちゃ~んと【薬草】も塗ったし
【鈍足再生】も使ってもらったしな!
(ヒラヒラ)よくある事、よくある事』
「(ムスッ)…よくある事じゃないわよ」
「(ジワッ)~~~!!」
「(アセアセ)ま、まあまあお姉ちゃん」
「はは、ま、大丈夫そうっすね。
あ~…でも、一応後で【治療院】には
行っといた方が良いっすよ。
ギルド推薦のとこなら割と安いし」
『かっかっか! 任せとけ!
ばっちり治療されに行ってくるぜ!』
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「……な~んて事が
さっきあったっすよ、リーダー」
「…なるほどな。
それで、さっきちらっと見かけたら
何か雰囲気がいつもと違った訳だ。
…あと、リーダーは止めろって
何度言わせんだ、ロージー」
「ま、怪我が手だけって事は
あの妹ちゃんを庇って
とっさにウサギの角でも
掴んだんじゃないっすかね?」
「だろうよ。
今までは最初に正面から掴んで
囲んで殴ってたって言ってたからな。
掴みそこなったか離しちまったかで
慌てて横から手を出したんだろ」
「あ~、やっぱそんなとこっすよね。
でも、よく掴めたっすよね~。
ウサギの突進って結構速いのに」
「…ま、最初から警戒してたって事だろ。
でなきゃ、間に合わんだろうしな」
「うへ……ま、あの嬢ちゃん達が
最近増えてた奴らみたいに
致命傷で担ぎ込まれなかったのは
何よりっすよね~」
「まあ、そういう事だな」
いや、本当良かったっすよ。
アレ辛いっすからね。
……俺だって、今でこそ門の守衛を
やらせてもらってるっすけど
元々はダンさんがリーダーやってたパーティ
【炎槍】でお世話になってたっす。
ま、他のメンバーの人達って
ダンさんと同じぐらいの年だったから
結婚だったり何だったりで次々に引退。
【炎槍】も10年前に解散しちゃったけど
俺だけで新しいパーティ組んで現役続行。
…結構良い感じだったんすけどね~。
残念な事に3年前、【塔】でパーティは壊滅。
壊滅の原因は仲間の軽戦士の娘が油断してて
罠に気付かずにお宝に手を出してドカン!
ま、幸運…って言っていいんすかねえ?
全員大怪我だけで済んだんすから…。
何たってあの後、次々と敵が襲ってくる中
命からがら帰ってこれたっすからね。
…多分、アレって爆発だけじゃなくて
警報的な効果もあったんだろな。
……結局、全員怪我が治っても
心は折れちまったっすよね…ポッキリと。
俺は元々【重戦士】で壁役が多くて
痛みとか危険には割と慣れてたっすから
ダンさんに守衛の話もらっても
すんなり受けれて、今の自分っすけど
他の仲間…特に原因を作ったあの娘は
やっぱり負い目が大きすぎたんすかね…?
あの後、パーティ解散して直ぐ
姿消しちゃったっす。
……今頃どこでどうしてるんすかね。
「やっぱ、自分のミスが原因で
仲間に迷惑をかけるって辛いすもんね…」
「おう、そうだぞ。
だからお前も真面目に門番しろよ?
常に気を張ってろとまでは言わんがな」
「うへ…藪蛇だったっすか…」