018_変化する日常 ③
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あらすじ:他の転移者の場合、最初以外は
あまり話を聞きに来ないそうです。
視点:都市の副守衛長 ダンさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 4週1日目》
◆都市の防壁 門前◆
「ああ、もう帰ってきたのか。
おっ? 今日は1つ多くないか?」
「そーなんだよ! 門番のおっちゃん!
(ズイッ)ほらほら! 見て見て!!」
「ほう、角付きのウサギじゃないか。
もしかしたら、お前達だけで狩ったのか?」
「あ、あはは…実はそうなんですよ。
今日は私達3人で初めて1匹狩れたんで」
『そうそう、今回は俺は見てただけ。
3人が頑張ってくれたんだわ』
「(フンス)どう? すごいでしょ!」
「はっはっは、確かに凄いな。
こいつはすばしっこい上
角が厄介だからな。
よく倒せたもんだ」
「(ニカッ)でしょ? へへへ~!」
「それじゃ、通っていいですか?
最近夕方になるとギルドが混むので
早めに報告しに行こうかなと」
「ん、そりゃ、良い心がけだ。
では通っていいぞ~」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
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▽
「はっ! 早く通してくれっ!!」
「ぐああっ、いっ痛ぇよおおお!!」
「おい! しっかりしろっ!!」
(ドタドタドタ、ザワザワザワ)
「…ダンさん、ここ数日って
あの手の奴ら増えたっすよねー。
今日だけでもう5件目っすよ?」
「ああ、さすがに多いな。
ギルドへ注意入れとくか…」
確かに、最近担ぎ込まれる奴が多い。
しかも、そのほとんどは血まみれの重症。
中には、怪我に効く薬草どころか
【治癒促進のポーション】ですら
もう無理な手遅れの奴も居た。
「運ばれてくるのは重症ばっかで
どいつもこいつも、腹を一突き。
…アレって、あのウサギの傷っすよね?」
「だろうな」
傷を受けてる位置と怪我の深さを見ても
まず【ウシウサギ】に間違いない。
あいつら、兎って名前付いてるが
意外と体は大きいし結構重い。
おまけに2本の角で突撃してくるから
まともに食らえば重症は免れない。
それこそ{初心者殺し}なんて言われて
ギルドでも注意喚起してるぐらいだしな。
「どーせ、コレってアレっすよね?
あの嬢ちゃん達があっさり狩ってくるから
自分達でも狩れるだろって甘く見て
気軽に手を出して反撃されたってオチ」
「ま、そういう事だろうな。
おまけに実際に狩ってたらしいのは
ステータスALL1と噂のフール君だ。
なら、自分でも…って思ったんだろう」
「今ん所、運ばれてくる奴らって
どいつもまともな防具つけて無かったし
駆け出しの奴らっすかねー? ダンさん」
「まあ、それもあるんだろうが…。
多分【塔】に挑む資格を得てない
Lv5未満の奴らが大半だろうな」
「あ───…戦う事に怖くなっちまって
委託だけで稼いで、ロビーや酒場で
ぐだってる奴らっすかー」
「そういう事だ。
…ま、委託は委託で、無いと困るがな」
冒険者ギルドで発行してるクエストは
モンスターや賊の討伐だけでなく。
都市の要所や住人、商人達から受けた
色々な雑用もクエストとして発行している。
俺が務めているこの門にしても
物資の運搬や夜番の補助だけじゃなく
待機所の掃除に飯の買い出しみたいな
軽い内容を依頼することだってある。
実際、登録直後の駆け出しなんかは
武器や防具を買う金も無いからな。
委託で生活費と準備費を貯めなきゃ
冒険者としての活動もままならない。
「…にしても、あの人。
装備もないのに、どーやって
【ウシウサギ】倒してるんすかね?
いや確かに、慣れちまえば
割と簡単に倒せるっすけどね…。
あいつ、直進しかしない訳だし」
「さあなあ…」