010_世話焼かれは得意分野
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あらすじ:ヤスオさんとモーリスさんは従兄弟です。
視点:戦士Lv1 ワイスさん
『』:フールさん
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《オオヤシマ歴2994年 5月 1週6日目》
◆冒険者専用の安宿【鈍亀亭】◆
「おう、いいぜ。
こんだけ状態の良い肉持ってきたんだ。
今晩の飯代と宿代は4人分無料に
しといてやるぜ」
「本当!? ありがとう! トータスさん」
「わっ、助かります!」
「良いって事よ、気にすんな。
ほれ、できたら部屋にもって行ってやるから
さっさと部屋に行った行った(シッシッ)」
「あ、はい! じゃあ行くよ、みんな」
「あんがとね~、おっちゃん!」
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『へえ、なるほどな。
孤児院を出なくちゃいけなくなって
3人で冒険者やってんのかー』
「ええ、本当ならワイス姉さんは
手伝いで行っていた農場で
そのまま働かせてもらえるって
話だったんですけど、僕達のせいで…」
「…その話はもういいって。
大体、あなた達2人だけで冒険者なんて
絶対無理に決まってるでしょーが」
「うぐっ……そ、そうだけどさ…」
「え~~? そう? 案外いけると思う」
『(ニカッ)かっかっかっ!
2人の為に…とか、普通は思ったとしても
中々実行できるもんじゃないしなあ。
…ワイスちゃん、ええお姉ちゃんやな!』
「う、うるさいなあ。
いいでしょ、別に…」
…まあ、実際の所。
あのまま農場で働かせてもらっててもねえ…。
2年前のあの時って、私も13才になったから
本当は孤児院を出なきゃいけなかったんだけど。
院長と一部の子達が流行り病にかかって
【治療院】に隔離されちゃったから
孤児院の維持と、残った弟妹達の世話の為に
孤児院に残ってただけなんだよねー。
…で、【治療院】に相談したら
公営の農場紹介してくれたから
合間でお手伝いしてたんだけど……。
報酬の大半が野菜とかの現物支給。
いや、確かにそれはそれで助かったんだよ?
院長が復帰するまでの2年間。
何とかみんなを食べさせていけたし?
でも、今後もずっと現物支給だと
それはそれで困る──。
「そんな事より、フールはどうするの?」
『ん? どうする?』
「これからの事よ!
今日は泊まれる所無いと思って
私達の所に連れてきたけど…」
『あー、それな!』
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「じゃあ、まあ、フールさん。
当分はよろしく…でいいんだよね?」
『おうよ!』
「よろしくね、おっちゃん!」
結局、しばらくの間は
一緒に行動する事になったわね。
ま……仕方ないか。
この辺の事も知らないみたいだし。
私達を騙すような人にも見えないしね。
……正直、私達3人だけだと
もう手詰まり感あったからね。
この先、少しはましに───。
「あっ、そうだ…フール。
お互いに遠慮は無しでいこうよ。
冒険者として仲間になるんだし。
今日の案内とか宿とかも
気にしないでいいから」
『ふっ……! 安心しな!』
「……何を?」
『俺は世話を焼かれる事に慣れてるからな!
遠慮なんて考えてねえって事さ!!(ニカッ)』
「そんな事自慢すんなっ!!」
…本当に大丈夫なの? この人。