矢彦珍道中・陸〜百合鬼合戦(ゆりおにがっせん)・肆 「燕燕(つばくろつばめ)」の戦い〜
「覚悟は決まったか?」
「燕燕」の地を見ながら矢彦は天邪鬼に問うのであった。
「昨日の仲間は今日の敵!心配するな。矢彦に付く以外は鬼や妖かしの世界では普通な事だ。特に鬼の本来は戦闘本能の塊だからな。戦いこそが至高なのだよ。」
とどこなく寂しそうに答える天邪鬼であった。
「なら期待している。
友よ!そして選ばれし十二支、虎の紋章に選ばれし「猛虎」天邪鬼!!」
と天邪鬼肩を二回ポンポンと叩き向こうへと去っていく。しばらく眺めていた天邪鬼はにこりと笑い駆け足で矢彦の後を追うのであった。
「あぁー任せとけよ!相棒!!どこまでもどこまでもついて行くからな!後悔しても遅いぞ!」
「しねぇよ!馬鹿!」
矢彦ボソリと言うのであった。
――ユリカ教団作戦会議室――
「真冬になるまでには攻略したいなのです!!
本格な冬になると攻めるのは困難どころか不可能なのです!それに真冬になると海は凍るので陸の戦いと変わりないなのです!ここ刺渡島は攻略不可能と言われておりその一つが過酷な海の変化なのです!詳しい事はこの戦い終わった時になのです!とにかくあの刺渡島が鬼の牙城ならば、ここの無人小島を我が城と気づき海の変化に対応しつつ、不慣れな水軍を少しでも軽減するのも作戦なのです!本当は敵側にいる水軍に長けてる者同じ位の人物がほしいなのです!この小島をあの刺渡島と同じく水上大要塞にしてほしいのです。何分水軍に関しては素人なのですからなのです!」
と軍師らしい事を言う珍宮であったので皆啞然ととしていたが、全員納得の意見でもあった!
「は〜い!♡ワタシもこの猿に賛成デース!腹立ちますが。水軍不慣れであの「百鬼夜行」(本隊)を相手になると流石にお手上げ〜です!」
とアリサは内心は酷いと思いますが、渋々珍宮の案を後押しするのであった。
「兄さん!僕もここが正念場だと思う。珍宮さんの期限迄攻略出来なければ僕たちは敗北すると思います。
「地獄の第三階層」の支配者の一角の鬼を相手にするのですから。今ままでとは格が違います。舐めてかかればあっという間に全滅だってありえません。」
タケルは珍宮の意見に激しく同意し、鬼の戦力、戦略等の考慮しても最善の策だと思うのであった。
「それならばの短期決戦なら雪原の対策、奇襲等を考慮しますと、ここの北側からと、南からと、海沿い(舟)など攻撃を一斉に攻撃し包囲しつつ「燕燕」の城を落とした方がいいだろう。後相手の鬼は「冬大将軍」とも言われ真冬になればなるほど強くなる。その上での真冬迄の攻略は理に叶っている。」
と天邪鬼は元「六鬼将」が故の情報を提供するのであった。
「サー!天邪鬼の情報もいれても、真冬迄には攻略しないといけないさ〜!!真冬になれば戦にならない上に敵が激強になってあたい達は「百鬼夜行」と大戦する前に「白夜叉」に殺られる可能性すらあるサー!」
ヒミコもこれは正念場よりも修羅場に近いと思いながら喋るのであった!
「ヒミコ様の言う通りだ!「白夜叉」はあの「邪鬼」と同じ強さで冬になると、「地獄の第二階層の将軍」並の強さだと聞いている。今の段階でも「地獄の第一階層」上級鬼だと考えていいだろうな!」
さらに思い出したかのように張り上げる天邪鬼であった。
そして皆が考えるかのようにしばらくは音のない無音の空気になる会議室であった・・・・・・!
「失敗は出来ない!万全の準備で行く!!さらには不眠不休で作業し早急に攻める準備をもする。そして早ければ早いほど、戦前の休みは多く取ろう!そして後腐れないように!いいかな?」
矢彦はユリカ教団の教祖としてこの無音の空気の中での最初発言者となった。
皆は沈黙しながら大きく頷き「分かりました!」
と言い一礼をして会議室を後にするのであった。
負けられない(一時撤退等含め)戦が今まさに始まろうとしていた・・・・!
――数日経過――
―ある川の上流―
「・・・「破」」
ヒミコが人が二、三人乗れる位の割れた氷の中心に札を設置していた。そこへ天邪鬼が声をかけてくるのであった。
「ヒミコ様ご苦労様です。この様子だと、奇襲は馬と鹿、もしくは犬ぞりの奇襲ですかね。こんなにもいい急斜面を利用する手は無いですからな。」
「違うサー!この急な川で舟による奇襲をかける作戦サー!!で、舟はこれだサー!」
ヒミコが指を指すがさっぱり分からない天邪鬼であった。
「何処に?舟が?小舟すら無いのですが!せめて魚釣りの舟でもあれば・・・何も無いのですが?割れた氷が見事に並んで陣形を整えているようにしか見えませんが?」
??の天邪鬼ににこりと笑うヒミコであった。
「今、あんさんが言ったサー!割れた氷が、天然の舟サー!作戦もあるサー!川に続く舟は奇襲!海沿いに続く舟は後ろからの後攻め及び包囲網を張る部隊さ〜!!」
と作戦内容も言う。
「これは驚いた!気配や姿を消せばただの氷!まさか兵がいるとは思いもよらないでしょ!!」
驚く天邪鬼にしってやったりな顔をするヒミコであった。
「それだけではないさ〜!!氷の強度をどれだけかとか、強度、強固をどのぐらい上げればあの小島を占領できるかの資料集めを兼ねているのさ〜!」
得意気な顔で言うヒミコであった!!
「ヒミコ様も中々の策士ですね!やはり総大将や、一国一城の主の経験が生かされているのですかね!」
関心する天邪鬼にますます鼻が伸びるヒミコであった。
「まぁ!そうさ〜!!後流れやもろもろの数日の結果、丑三つ時がいいと思うサー!これは妖怪たちとっても吉サー!お互いにだかさ〜!だからこの軍の指揮は天邪鬼に任せたいサー!勿論成功するため、氷点下、冷気の霧等の自然現象を味方にするサー!これなら天邪鬼なら確実に成功できるサー!」
ヒミコはこの部隊の大将を天邪鬼にしてほしいとのりのりの軽い感じで言うのであった。
「この戦の要にこの俺が胃が痛い痛い痛い!それに自然現象を味方にできるのですか?そんなことが??」
胃が急に痛くなる天邪鬼であった!
「選ばれし十二支が「胃が痛い」なんて変なこと言うなサー!!それに天邪鬼は一番この鬼達事を理解している!敵味方共に!これ程うってつけの人材はいないさ〜!!それに天邪鬼はあの矢彦が認めた漢・・・ではなく女鬼いや確か恋する乙女鬼だったかなさ〜ふっふふ!」
「ジー!!今胃の痛みが無くなりました!乙女鬼なんてありえませんよ!しかも矢彦様に!!!?ヒミコ様言っていい事と悪い事がありますからね!!」
ジト目になり言い返す天邪鬼だったが、徐々に顔は赤鬼になっていき、鼻息は荒くなり身体はゆでたこのようになっていた。
(本人は上手くやっているつもりなのサー?バレバレの天邪鬼ださ~!!あの変態が天邪鬼に向けばさ〜!!なんとか応援したいさ〜!!あたいと世界平和の為に!・・まぁあの変態はユリカしか見てないサー!でないとあそこまで変態にはならないサー!でもユリカの命令やもろもろしてもらえば・・ふっふふ!これはいいかもサー!一刻も早くユリカとサー!!そしてユリカの恋愛対象はこのヒミコになれば・・ふっふふあっははは!!)
どす黒いヒミコであった。流石は実の妹、静を陥れようとしただけはあるのであった!
「・・・はっ!サー!えーとそうサー!!自然現象は静に頑張ってもらうさ〜!!後、乙女鬼と言ってゴメンさ〜!!とにかくこの部隊での成功お願いサー!!」
はっと気づきとにかく何かを言わなければと思い言ったヒミコさんでした。
「・・・・!なんか怪しいのですが、分かりました!謹んでこの任を務めさて頂けます!」
負に落ちないが一応一礼してこの部隊での将を一任する天邪鬼であった⁉
――燕燕城・天守閣――
「この雪を見られるのも今年で見納めかもしれない!」
粉雪を見ながら独り言を言う白夜叉であった!白夜叉もまたこの大戦で自分が命を落とすかもしれないと思い、一日一日を大事にしていた。白酒をちびちび飲みながら想いにふける白夜叉である。
――聖夜の日・丑三つ時――
「まさか・・!ユリカの誕生日が開戦とはな!」
矢彦は大戦前に遠い目をして呟いた!
「仕方ないですわ~。この日が一番私の力や川の流れ、気候もろもろが合致してこれ程の日は一生来ないと言ってもかまいませんわよ!それ程こんなにも絶好が重なるなんてありえないのですから!」
と静かは言う。
「ふっふふ!これはユリカ様の奇跡でしょう。「お兄ちゃん頑張れ!」とでも言っているのでしょうね!こんなにも頼もしい日は無いです。悪いですが今宵は僕の天下無双となるでしょう!!」
タケルは何か分からない力がみなぎっていく!!
「サー!!ユリカ様の誕生の日に負け戦なんてゴメンさ〜!!それに!タケルだけではないサー!!私達もユリカのご加護があることを忘れるなさ〜!」
とヒミコが言うと、大次は錫杖を三回地面に叩き、「そうだそうだ」と言っているかのようだった!そして目を見開いて、
「我が最愛の妹にして、崇拝する吸血鬼天使の誕生の祝として、この戦い勝利するダベ〜!!」
声を張り上げた!!皆も後から雄叫びを上げ!士気が最高潮となった時、開戦のほら貝と、矢を放った!!
合図とともに怒涛の軍勢が、「燕燕」の地に攻め入ろうとしていた!!!
氷の舟の奇襲により敵は大混乱に陥るのであった⁉
「ぐ〜!!これではどうしようも無い。立て直す!!全軍ひけ〜‼ひけ〜!!(ふふふ。)」
ここの将らしき鬼が号令をかける!少し悪い笑みをしつつ撤退していく敵軍を、勢いとのりでぐいぐい攻める自軍の構図となっている。特に自軍はまるで賊のような立ち振る舞いなのでどっちが悪かも分からない程の発狂ぶりである。
しかしこれは地獄の一丁目だということに気づいていないのである。いいやこの雰囲気に乗り込まれ理性がぶ飛んでいるハイになっている状態では仕方が無いのであろう。痛い目に合わなければわからないのは世の摂理であろうか?取り返す事ができなくなる事態になっては後の祭りだったことも歴史が証明しているのである。
敵軍を追っていくに連れて猛吹雪になっていき視界も悪く、寒さやハイ状態でまともな判断ができない状態なので、誰もが一旦止まれや、後退等の案もなく、ただの突進、突進、突進だけが体をつき動かしていた。
(もうこれは、士気が上がっているからとか、このまま押し通すとかのレベルでは無いぞ・・・)
「敵軍勢を追うのやめい!!ここは様子をみる!」
やばいと思った天邪鬼は念波や大声で叫ぶが、この吹雪で声は聞こえず、寒さと、ハイで聞く耳持たずそのまま突き進んでしまうのであった。
「く〜!やはりこの天邪鬼ではこの役職は重すぎた・・・!!願わくばこのまま何もなく・・・」
初めてのこの軍の大将を任せられたあるあるが見事に当てはまってしまう天邪鬼であった。
「お〜⁉見事までにも、ウジャウジャとわくわわくわ!それにしてもあの人数でも壊れないとは、流石はこの地域の冬に我々の妖術のたわものかな。」
逃亡敵軍の中現れたのはこの一帯を任されている敵の将が一鬼だけで、自軍の前に立ちはだかるのであった!
「君たちが今足で立っている場所は雪とロープと水で造った天然の橋なのだよ。だからねこれ以上は通行禁止!!」
そう言って右手を軽く挙げると一斉に火攻めが開始された。もう既に包囲されていて、火矢、火の魔法等の雨が自軍ヘと降り注ぐのであった。
重さと、熱で耐えられなくなった橋は鬼火のように崩れていき、自軍も巻き込まれ転落していき、いくつく先は氷の針の山であった。次々と墜ちていき針の山は紅や、緑などの色に染めていった。
―燕燕城・天守閣―
「鬼火??あぁそうか壱番隊組長・雪鬼の計らいか。」
天守閣から観る鬼火は神秘的で口はお酒で堪能する白夜叉であった。
海からの攻める軍勢もいよいよ戦闘目的地に到着しようとしたがここでもまた一鬼に痛い目にあってしまうのであった。
「天然の舟ごとこの海を凍らしてやろうぞ!!
「氷の大地」!!」
将らしき鬼が呪文を言うと、海面一面は氷になっていき、氷の舟を吸収するかのように同化していき、乗っていた妖かし達はその氷の大地に取り残されるのであった。
「これは!ありがてい!」
「こっちの方が本業でしてね!!」
何故か自軍は歓喜して敵軍ヘと猛突進攻撃を仕掛けるのであったが冷笑する敵の将である!まぁ当然である。これで終わりならただの馬鹿である。仮にも将なのでまず無いのが当たり前である。
「そうですか?だとすれば泳いで攻めたりとかできなそうですね。水系の妖かしでもこの寒さでは、残れるのは冬妖怪か、冬に強い宝具擬人ですかね。擬人は主の所に戻ってしまう故に持ったないですが・・私の力では到底無理ですね。主を殺す方が早いかもですね!!?
オット!!そろそろ頃合いかな!
「氷割り」!!」
さらに追い打ちをする敵の将の攻撃で氷の大地はひびが割れ、崩れてゆき、自軍を巻き込まみながら崩壊していった。
この軍勢はほぼ壊滅状態になってしまうのであった。
「流石は 弐番隊組長・氷鬼様です。」
と労う鬼兵一同であった。
―燕燕城の天守閣―
「ヒョッひょっ!!まさかここまで善戦するとは!やはり我らに地の理がもろに出ましたね。付け焼刃の戦略、戦術では我々をどうにかするには無理ですよひょっ!!」
雪見酒をぶら下げながら白夜叉に声をかける老人。
「老中か?」
振り迎えながら言う白夜叉であった。
「そうですよ。老中の氷炎です。ひょっヒョッ!!」
と答える氷炎であった。そして持参した雪見酒を白夜叉の空いた盃に注ぐのであった。
均衡が壊れぬまま三日三晩戦が続いた。自軍は焦り出し徐々に劣勢になっていき、目でも分かるようになってきたのは五日目の事である・・・・
「ウギー!!」
また自軍の妖かしの兵がお亡くなりになった。
「ゴッホゴッホ。ここからは行かせませんよ。身体が弱いといえ組長最強の剣士である、氷月一がいる限り我が軍勢の敗北はないゴッホゴッホ!命知らずな者はかかってこい・・コホ・・」
ヒョロっとして死人のような顔と肌をしている氷月一とかいう組長この先の進軍を完全に止められていた。今や、海上戦の敗北もあり、逆に包囲されている状態と言っても間違い無いのである。短期決戦なら早く先に奇襲した軍勢に追いつき、敵の大将を打たなければならない。さらに長引くほど敵は強くなる。そしてこの先の戦の事も考えると時間の猶予もなく自軍は焦り、自滅ヘといきかけない程に追い詰められていた。
「ほう!!なら君を倒せば、敵さんは、混乱必須でそのまま突き進んで行けそうだな。」
自軍の将の肩をポンポンと叩き敵将の前に立つ自軍のある人物である。
「・・何故貴方様が!!」
自軍の将はその者に思わず声をかけるのであった。
「我らの戦事は我らが活躍しないでどうする?矢彦様もいつまでも我らにかまってはいられないぞ。まぁ敵であった私も言えた義理でも無いが、女として、擬人として産まれ変わったつもりでいるよ。
そこの敵将様長くなってすまない。
私は「八重櫻剣」と申し上げます。宝具の擬人化となり、付喪から生まれ変わりこちらに付いた裏切り者で御座います。」
増援として八重櫻剣が参戦することになった。勿論早く終わせ酒呑童子の所へ戻らなければならないのでここだけのスペシャルゲストでもある。
「コホ!!丁寧ありがとう御座いました。ペコリ
では私も参番隊組長・氷月一であります。先程言いましたが
組長最強剣士です。自分で言うのもなんやだと思いますが。
そしてこれが私の宝具の氷剣「絶対零度」と言います。
敵とはいえご配慮感謝しますコホコホ・・!
しかし良かった。もしもあの妹魔王であればこの氷剣、そして自分も・・・思っただけでゾクッとします。あれだけは絶対戦ってはならないものです。「百鬼夜行」も霞む位です。失言ですけど。」
氷月も丁寧に名を上げ自己紹介をするのであった。どこの世界でもこういった作法に基づくのは気持ちがいいものである!もし負けても未練もありつつ成仏できそうである。
「・・・あれは・・・恩人とはいえ・・主とはいえ・・今は泉平の客兵でもあって・・・うわ〜・・同感です。あれはおぞましいなにかの妹に取り憑かれた化け物ですよ〜!まぁ言っても喜ぶだけだろううんうん!!」
敵将と同調するのであった。自軍も大きく頷くのであった。
「ふっふふ!もし私を倒した暁には、この「絶対零度」を宜しくお願いします。この子もそう言っております。変なものに流されるよりは擬人化して第二の人生歩みたいそうですよ。それに嬉しいことにこの先私以外は主とは認めないそうですよ。あの変態妹魔王は別にしてねコホコホコホ」
と心を開いたのかにこやかにこの先の宝具の行く末等を御願いする氷月であった。
「そうか・・・。なら私は復活した後貴様を主と認めよう。あの変態なら大丈夫だしな。逆に主できて喜びそうなのだが。流石に擬人化は無理にはなるが、どうだろう?」
と提案する八重櫻剣である。
「あぁなんて最高な条件なのでしょう。喜んでコホコホ!!了承します。制約完了!! フ〜では!!
尋常に!!」
相手も了承し目付きが代わり
「勝負!!」
この戦を左右する大一番が始まった・・・・・
登場人物
ユリカ教団の皆様
八重櫻剣・・・元付喪の神で、今は宝具の擬人化によりユリカ
教団側に付く
―白夜叉陣営―
壱番隊組長・雪鬼
弐番隊組長・氷鬼
参番隊組長・氷月一
老中・氷炎
大将・白夜叉