第7話
勝負は一瞬にして決まった。
試験の合図とともに、剣を構えていた試験官へ飛ぶようにして近づいたマギー。
彼女が相手の右手の陽谿に扇子を叩打し、持っていた剣を落とした上、
とどめとばかりに扇子を首に当てるように近づけたのだ。
「降参だ」
こうしてマギーは冒険者としての扉を開き、自らの意思で行動する権利の一つを得た。
「こちらが登録カードです」
右上に『F』と書かれた札を、ギルドの制服を身にまとった受付女性から渡される。
簡単なギルドの説明は受けたが、
「また質問があればいつでもどうぞ」と彼女は、笑顔で送り出してくれた。
冒険者ギルドへ案内してくれたテレンスと、「暇だから」と付いてきたアスティエを探せば、
受付部屋の依頼ボード近くにあるテーブルで向かい合い座って待っている。
ギルド職員や冒険者女性が待ってくれている男性2人を、ちらちらと見ているようだ。
確かに彼らは男性が多いギルド内でも目立った。
背が高くプルオーバーの上からでも分かる引き締まった褐色の肌と、
長い銀髪を持ち鋭い印象を持つアスティエ。
短く赤い髪だけ見ればきつい印象を持つテレンスは、薄茶色で少しだけたれ目で笑うと雰囲気がとても優しくなる。
ただ戦うことが多いという彼も、プルオーバーを着ていても身体はしっかりとしていると分かる。
目立つ2人だったため、なんとなく
「あまりあちらに行きたいくないわ」
私はそう思いながら、マントについたフードを被り2人へ向かって行く。
このマントは昨日「視線が気になった」と私が話したため、
アスタナが「私のお古だけど」と貸してくれたのだ。
「おかえり」と迎えてくれたテレンスに、
「対応して下さった、女性の耳が兎に見えるのだけれど」
そう話した私に、椅子を薦めてくれた彼の隣に座る。
「彼女は亜人なんだ。兎人族という種族だと思う」
テレンスが教えてくれた。
「マギー、まさかと思うが触りたいとか変態じみたこと考えてないよな」
「失礼ねアスティエ。私変態なんかじゃないわ。
でも目の前であんなふわふわした可愛らしいものをみせつけられたら誰だって」
「失礼なのはマギーの受付嬢に対する、その変態的な態度だ」
私たちのやり取りを聞いていたテレンスが「ぷぷっ」と吹き出してしまう。
「仲いいよね、2人。
これから僕は武器屋に行くつもりだけど、
2人は街でも散策する? 」
「私も武器を見たいな。
カリーナの扇子をいつまでも使うわけにいかないし」
「マギー、それは叔母も母も君に持っていて欲しいみたいだし」
と言ってくれたテレンスに対し、私は「大切にしたいの。」と伝えた。
「ただ2人になりたいかなって…… 」
そう軽く明後日の方向を見ながら、小さく彼はつづけた。
私は「そうでもないよね」とアスティエに答えを求めれば、
「どちらでも構わない」と、彼は気のせいかいつもより低い声で答える。
テレンスから「2人は恋人同士なのかと、
「ペットと飼い主だ」と下を向いたアスティエが言葉を遮った。
「勿論オレが飼い主だ」
納得がいかない。
読んで下さりありがとうございました。