千年島にて
とある新月の翌日、ここに流れ着いた2人の女がいる。
2人とも意識がなかったせいで、洞窟に横たわらせ看病らしきことをした。
助けてやってほしいと見つけてきた猩々と、カリーナと契約をしていた鷲のシルヴァに頼まれたからだ。
赤い髪が印象的なカリーナと言う者が俺、アスティエに話しかける。
「あの子、マギーはこちらに来て更に人間味を帯びてきたみたい」
「以前も人間と住んでいたんだろう」
「まぁそうなんだけど。
自惚れかもしれないけど私と話すようになって少しずつ血が通ってきたの。
更にここに来てって感じよ」
「今あいつの相手をしてるのは人間じゃなくて猩々だぞ」
鷲の元主と俺は、戦闘訓練らしき事をしている2頭と1人を見ながら話しを続ける。
「シルヴァはお前とは既に契約はないと言っていたが? 」
「女性にお前呼ばわりは失礼よ。
ま、あなた本当は人間じゃないからいいか」
「この姿だからお前たちを助けられたんだ。
少しくらい感謝しろ。カリーナ」
「話は遮らないでよ。あと素直なのかそうじゃないのか」
カリーナは毒づいた後、話を続けた。
「そ、私は神殿に行くときに契約を解除したの。
もうシルヴァ会うことは無いと思っていたからね。
あの子は賢いから私がいなくても野性にも戻れると思っていたんだけど、 」
続ける言葉を選ぶようにしていたから、俺が続けた。
「気に入られてるんだな」
「そうみたい。ふふっ。
契約を解除していたから私を探すのは大変だったでしょうに、
探し出した上に妹とのやり取りを手伝ってくれて」
「どっちが主なんだかな」
「仲間だからかもね。確かに契約するしないは私が決定をしたけど、それは主だからとうことでもないから」
「そうだな」
「ねぇ、あれ本当に戦闘なの?
私が渡した扇子で大ちゃんを扇いでるだけじゃない」
マギーと猩々を見ていたカリーナから疑問の声が上がる。
俺としては「その名前のほうが妙なんだが」
「え、オスの子が大ちゃんでメスの子が小ちゃんらしいよ」
「もう少しまともな「オスちゃんメスちゃんよりマシよ」」
俺の話も遮られたんだが。しかも内容がひどい。
そのひどい話を変えるように俺は話題を戻すことにした。
「あの扇子とやらはお前……じゃなくて、カリーナのバッグに入っていたのか」
「そう、東の国から来たという冒険者が持ってい素敵だったから売ってもらったの。
扇みたいな物よ。片側に鷲が翼を広げている姿があって」
マギーの戦闘訓練らしきものを見ていた俺たちは、話を戻した。
「閉じた状態で2頭の体に触れたりしたいんじゃないか?
カリーナの体もマギーに圧されて楽になっただろう」
「そうかも。しかしマギーの動きは本当に舞みたい」
2人が流れ着いたのは新月だった。
俺がカリーナのために舞うマギーを見たのは、新月からすぐ後の満月の日。
満月を背にして右手は扇子の要を中心に回し、左手は剣指を作り舞い始めた。
手首を使い扇子を8の字のように回し、
そして腕も8の字に回していき左足を軸にし、体に回転を掛け舞い始めた。
舞い続け動きが最高潮になったときに、
カリーナが埋葬された場所に背を向たマギー。
少し離れた場所から開いた扇子を、カリーナのもとに投げ飛ばした。
少しだけこんもりたした土の傍らに、扇子がカサリと音を立てて落ちる。
開いた扇子からは鷲の絵が見える。
まるで埋葬された友人の傍に寄り添う鷲がいるようだった。
その翌朝、俺たちはスプラシエンに向かった。
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