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59話 グラフト

「それで結局エーテルと魔獣って何か関係あるんですか?」


「確証はねぇがエーテルが大量発生すると拡張空間ってのが生まれるらしくてな。

俗にグラフトって言われてるやつだ、植物に別の植物の枝を接ぎ木するみてぇにダンジョンの中に新しい空間が生まれるんだと。

んで今回の魔獣はそこ《グラフト》から現れたじゃね?」



魔獣ってそんなぽっと出の扱いなんだ。



「おれもよく知らねぇけどグラフトは必ず壁の中に出来るらしい。

だから壁が崩れる間で発見されねぇそうだ」


「なんか虫歯みたいですねって言うかコニーさんもしかしてグラフト見たことないですか?」


「あーなんだ、グラフトが発見されると宝目当てに調査団ギルドの連中やらがダンジョンごと占拠して外野じゃ手が出せなくなっちまうのさ。

いや~魔獣騒ぎが無かったら今頃すっからかんだろうな」



その時あやめに電流が走る。




「魔獣の噂、拡散しましたね」


「おいおい面白いこと言うなハ〜ハッハ」


すると突然コニーは笑い出し


「おれはちょいと噂を付け足しただけさ」



唐突に笑うのをやめる。





「ある奴には魔獣は仰山の目ん玉があると流したし、メデューサの髪の様な自由自在の触鬚が生えてるとか、獣人の様に毛深い、爪が黄色いとか適当なやつをな」


「はぁなんか友達の友達から聞いた学校の怪談くらいの信憑性しかなさそうですね」


「そうだろぅほとんど奴はホラ話だと考えるだろうな、実際目撃者は最初の連中だけだし」




う〜んそこはかとなく漂ってくる眉唾臭。


あれちょっと待てよ、この人確か道具を生徒に貸し出して金儲けしてたからソニアさんにしょっぴかれたらしいけど、情報が不確かな事はこの人が一番理解しているし、そもそも道具を貸し出してたのはエーテルを調べるためだった。


つまり魔獣に注目させておいて自分はグラフトの宝を手に入れる感じかな、しかも魔獣の噂は小中学生の間で流行りそうな都市伝説程度の信用しかなさそうだからその調査団ギルドの人が本気にしないだろうし。


でもソニアさんにバレるって多分わかってるはずなのに何で目立つ方法を取ったのか分からない。

 この人の事だからもっと別の方法があるだろうし、それに私を連れてきた理由もまだ応えない。



本当になんで連れてきたんだろう?





「なんにせよなにかやるなら事前に言っておいてくださいよ」


「次次回はそうするさ…着いたぞ」





長い通路を移動し、ようやく目的の場所へ辿り着く。



案内されてやって来たのは例の施設へ続いている大穴がある場所だった。


まあ途中から気付いてたけど。





「此処いつ見つけたんですか?」


「お前さんが試験受けた日に位置は特定してたさ、足を運んだのは初だがな」





なんと約2ヶ月も前から見付けていたらしい。



「見つけてたなら噂を広める前に調べてた方が良かったじゃないですか?」


「おれはエルドラ内外でそれなりに有名でよぉ、何もないはずのダンジョンに潜ったの知られた暁にゃ、ファンが押し寄せちまうのさ。

い〜やモテる女はつらぃねぇ」




やれやれと肩をすくめ、耳もそれに合わせるように上下する。




「まぁ今のおれを詮索しようとしたところで、罰で委員会の小間使いをやってる程度のことしか出ねぇだろうがな…あん?」



大穴へ向かってロープが括り付けられた杭が等間隔で打ち付けられているのを見つけた、どうやら先を越されたようだ。






コニーは徐ろに左太腿に着けているレッグポーチを開くと、中からビー玉サイズの玉が次々と飛び出してくる。


ピューパから青白い光で構成された本を取り出し何も書かれていないページを開くと、玉に周囲の砂や砂利が集まっていき、それぞれ目玉だけ育った出来損ないの1つ目出目金へ姿を変える。




「Hello World」



そう静かに唱えると空白のページにびっしりと文字が出現する。 文字をなぞる様に触れると出目金が大穴に向かって泳ぎだす。



そしてページらが自ら剥がれ周囲に浮かびだし、映像がそこに映し出される。




「なんですかこれ?」


「コイツはローゲイズが観たものを映す魔瞳書のページさ」



言われた通りこのページにはあのローゲイズ(出目金)が下へ泳いで行く光景が観え、下まで到達すると通路が見えてくる。


そして久々に通路を観たがかなり雰囲気が変わっていた。 あちらこちらに何段もの石が積み上げられ川が通っていたら三途の川と言っても過言ではない。



「前からこうなのか?」


「違いますよ、あっそういえば登る時に神谷さんがガサゴソやってましたけど、これだったのかぁ」


「はぁん案外器用だな」




石をアーチ型に積み上げるなど中々の腕前を持っているらしい。




「でもなんで態々こんな所でやっているんでしょうね?」


「まぁそこは本人に聞きゃいんじゃねぇの、丁度目の前に居るし」





別のページを見るとそこには驚愕した顔の神谷が立っていた。




「なんかすんっごい顔してますけど、どうしたんですかね?」


「さぁ玉でもぶつけたんじゃねぇのか…あ」



次の瞬間、神谷は叫びながら腰の短剣を抜いて我武者羅に光波を放ちそれにミニゲイズ達が呑み込まれると次々とページが硝子の様に砕け消えてゆく。



突然狂った行動をしたのか一瞬戸惑ったが、暗い所からいきなり目玉が飛んできたら誰だって心臓が飛び出るくらいにはビビるよねと、何となく察した。



急いで生き残った最後の個体で物陰に隠れながら様子を見ていると、神谷の背後から誰かが出てきて剣を持っている腕にアームロックを決める。


それからしばらくすると音は聞こえないが神谷がイタタタと唱えながら反対の手でタップすると拘束が外されているのが観えた。




「今の誰ですかね?」




生憎もう一人の顔は落したスマホの画面並みにバキバキになったページでは判別し辛い。



「この声は、そ〜だな…どうやらお前も知ってる奴だ」


どうやらコニーさんのうさ耳は二人の会話が聞こえるみたい。



「私が知ってる人って言うと…コーランくん?」


「おうっよく分かったな」


「ままぁ勘ですよ(知り合い少ないから消去法で言っただけなんだけど)」


「そうかい…んじゃ降りんぞ」



腰のショルダーバックに付いたスイッチを引いて蓋を開け、今度は手掴みで玉を四つ取り出しそのバックに近付けると中から黒い砂を吸い上げ始める。


ある程度集まると大穴に向かってカード投げの様に軽く投げるとふわふわと砂を吸い続けながら飛んで行くと、玉が四方に弾け纏っていた砂がシート状に広がる。


するとコニーさんはその上に乗り私は足元を確認しながら慎重に乗り込むと、ゆっくりと降り始めあっという間に底へ到着する。

通路の床に降りると乗っていた砂は元の砂粒に変わり玉と一緒にバックへ戻る。


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