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53話 訪問者

「コニーさん居ますか?」


半分失くなった工房の扉を隠すように取り付けられたカーテンを潜り中の様子を見るが、そこにコニーの姿は見当たらなかった。

また天井に刺さって居ないか確認したがそこには居ない。

どうやら留守のようなので今日は帰ろうとした時、床に付いた扉が開いてそこからコニーさんが出てきた。


「おう帰ってたか」



コニーはちょっと待ってろと言うと、テーブルの上の道具を端に退け菓子や珈琲を出してダンジョンのことを聞いてきた。


「それが…いえ大したもの特に」


ふとこのままあのことを話して良いものかと迷い、言いかけてやめる。


「おかしなものでも見たか?」

「えっ」


コニーは自分のコーヒーに黒い角砂糖を入れながら続きを話す。


「ま~知ってんだろうがダンジョンってのは不思議なところで、よくいろんなもんがよく見つかんだ。 未知の鉱石、謎の遺跡に妖精」

「あれよくあるんだ」

「・・・なぁ秘密にしてぇならは口は閉じてた方がいいぜ」

「あっ!鎌かけられた」


でも今の話が本当なら喋っても大丈夫…かな、でもなぁいざ話そうとすると何かが引っ掛かし、う~んでも悩んでもしょうがないし言っちゃお。


「実は「コ~ニ~」」



これから話そうとした矢先に誰かがやって来て話が途絶える。

やって来たのはライオンの鬣を彷彿させるボリュームミーな髪形をした青い髪の女生徒で、猫っぽい耳と尻尾が見えるから猫系の獣人だと判別できる。


「斧が壊れちゃったから直して~」


ソファーに座っているコニーへ猫の様にすり寄ってそう告げる。


「リュン、客が居るから後にしな」

「う~ん?君だ~れ?」


ぽやんとした顔でこちらに話し掛けてくる。


「あやめって言います」

「リュンは~リュジアンサスだよ。 それで~ねぇ直して~」


コニーの膝に乗っ掛かると尻尾がコニーの顔に纏わり付く、仕事をしている時に飼い猫が膝に乗ってきて動けなくなった状態に似ている。

コニーはその状態でコーヒーを飲もうとしているが飲み辛そうだ。


「わーかった見てやるからさっさと持ってこい」


ゆっくり起き上がると外から大きな箱を持ってきて中を見せてくる。

なんというか中身は緩衝材の代わりなのか大量の石が詰まっているだけで、この中に斧があるとは思えない。


「おま、お前粉々じゃねぇか!」

「うんちょっと張り切りっちゃてさ~」


いやどうやらこの詰まっている石そのものが砕けてしまった斧らしい。


「他のところだと~直せないって」

「そりゃ元はただの岩だからな」

「コニーだったら~できるでしょ、よろしくね~」


用が済むとそれだけ言い残し去っていく。


「なんか嵐みたいな人ですね」

「いつものことさぁ、あと悪いがそれ飲んだら帰ってくれ」

「それの修理ですか?」

「まぁそれもあるけどよ」


コニーがコーヒー飲み干して扉のカーテンを開け行くと、そこに赤い杖を抱えた誰かが立っていた。



「あ…ぁえっと…」


突然のことで驚いたのか、たじろいでうまく話せないようだ。


「コイツはブラッド、人見知りな奴だから頼むぜ」

「どっどうも」


どうやら本当に人見知りなようで声は出さす小さく会釈で返ってきた。

長い前髪で目は隠れているが、なんとなく目線がこちらを向いていないことが分かる。

これだけならばクラスであまり目立たない生徒として印象を受けるが、それとは裏腹に名前の通り血の様な赤い髪と前髪から飛び出した角が印象を強くする。

馬の耳や尻尾が付いていることからユニコーン系の子だと判る。



「お前も武器の修理だろ」

「うっうん…その剣が…これ」

「ほほぅこれはこれは」


遠目で分からなかったが、杖ではなく赤い布で包まれた剣で、コニーが鞘から抜くと鞘に対して剣身が圧倒的に短く、折れていた。


「そっその…直せる…かな」


作業台のトレーに鞘から残りを出して並べ、ゴーグルを掛けて調べる。


「こりゃ直すの手間がかかんな、回路と術式もボロボロになってら」

「無理…かな」

「おいおいコニー様を舐めちゃぁいけねぇな、知ってるだろおれは多能だって」


(なんだろう?さっきの子と全然反応が違う)



先程の素っ気ない態様と比べてこちらはかなり好意的に見える。

まあ兎と馬は草食動物同士だから馬が合うのかもしれない。

コーヒーも無くなったことだしお暇しようと二人の横を通るとブラッドが一瞬こちらを見てすぐに背ける。

もうなんか気まずいこの状況から一刻でも早く抜けようと出口まで自然と早歩きになった。


そして廊下に出て一息して寮に帰ろうとした時、視線を感じて振り向くと横に執事服を着て鳥の嘴の様なマスクを着けた巨漢が立って居た。


「うわっ!」


完全な不審者に驚いて思わず変な声が出てしまった。


「・・・」


だが相手はこちらに対して一切反応を示さず、まるで私が見えていないかのように感じた。

いや敢えて無視してくれたのかも知れない、どちらにしろ私にとってはその方が都合が良いしさっさと帰ろう。



「牡丹」


そのまま帰ろうとしていると誰かに呼び止められた。



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