31話 ヒャッハー
「あの子がどうかしたの?」
「あーいや、なんでもない」
ただ珈琲を飲みながら本を読んでいるだけなのに美しいと感じた。見た格好からしてお嬢様っぽい。あと歳はメリー同じ位に見えるが場所の雰囲気と立ち振舞が相まって、自分よりも年上に見えた。
そしてそれと同時になにか違和感を感じたがそれが説明できない。
「マスタ、あの子もよく来るの?」
「いえ今日初めてお客様ですよ…そういえばあちらのお二人もそうですね」
そう言われてあの子の隣のテーブルに居る男達を見ると凄い格好をしていた。一言で表すなら世紀末ファッション、つまりヒャッハーな人達だった。
ウッソだろなんで俺はあの二人に気付かなかった。ハロウィンにクリスマスツリー飾って餅を突くようなもんだぞ。いやここは異世界、喫茶店にヒャッハーが居ても違和感ないはずだ。
「いやバリバリ違和感しかないわ!」
つい声に出してしまったが落ち着け、他人がどんな格好をしてようが関係ないはずだ。
女の子が突然本を閉じるとこちらにやって来る、五月蝿くしてしまったから気分を害したのだろうか。
「500カロットになります」
ただ単に会計しに来ただけだった。会計が終わると店から出て行くその時、あの子が俺の方を見た気がした。いやこれは俺の自信過剰だろう。あとあの子が出て行くとあの二人も続い出て行った。
それからすぐ入れ違いで店に兵士が二人やって来た。
「トールさんどうも、これ手配書なんですけど店内に貼っていいですか」
「構いませんよ」
「ご協力ありがとうございます」
もう一人が壁に手配書を貼り始める。
「なにか飲みますか」
「では私はトマトで、奢るけどお前何する」
神谷は気になったのか手配書を覗いた途端、焦るように店から出て行った。
「ちょっと神谷、まだ食べ終わってないのに」
神谷の分も代金を置いて追いかける。
「慌ただしい方ですね…ところでその人達は何をやらかした人なんですか?」
「靴下の窃盗です。罪事態は大したことじゃないですけど、犯行が100件以上で全員が狭い路地で狙われたそうです」
「そうなんですか…はて?この顔どこかで」
手配書には先程の客である男達が載っていた。
クソッどこだあのヒャッハーども。
「よしっ見つけた」
「待ってよ神谷」
裏路地に行くのが見えたが追いかけて来たメアリーに足を止める。そしてメアリーに急いで説明してする
「分かった兵隊さん呼んでくる」
メアリーと別れて追いかけて入った通路を直ぐに曲がった先で男達はあの女の子を追い詰めていた。
「へへお嬢ちゃんその履いている物をよこしな」
「・・・」
「痛い目に合いたくないなら言うことを聞いたほうが良いぜ」
女の子は恐怖あまり動けないのか、それともなんとも思っていないか分からないが無表情の上に助けを求めて叫ぼうともしない。
ともかく放っておく選択肢は俺には無く、後先を考えずに奴らの目の前に立ち叫んだ。
「やめろ!」「女の子相手になにしてんのかな?」
今なんか被った気がする。
「なんだ〜おめぇら」
声がした方に向くと、いつの間にか隣に俺と同じくらいの人が立っていた。
こいつ誰だ、黒いコート着て明らかに転生者感出してるけど…あの服良いな。
だが今は敵じゃないならそれで良い。
「あの子を助ける、協力してくれ!」
「俺一人で十分だけど、やっちゃいますか」
神谷が鞘から剣を引き抜くと強烈な光を放ち、剣身が伸び短剣から長剣に変わり、輝きが収まると次第にその姿が浮かび上がり、淡い銀と虹を混ぜた様な色をしており、どこか神秘的な剣が現れる。
「なにそれ聖剣?」
「多分魔剣」
一方で隣は大型のリボルバーに剣を付けた武器を持っていた。
そしてそれぞれ武器を構える。
隣が先に動こうとした瞬間、後ろから俺の耳元を擦れ擦れに何かが飛んできた。
それは目の前の男の顔に直撃し、男を吹き飛ばすが勢いは止まらない。辺り一帯の壁にぶつかりスーパーボールみたいに反発し、今度は俺の隣に居るコイツに向かって行く。
「ゲート!」
隣がそう叫ぶと目の前の空間に穴が空きそれは消えてしまう。今度は仲間の男の前に穴が現れそれが飛び出し、さっきの男の様に吹き飛ばす。
そしてそれが建物の隙間に挟まったことでようやく停止する。
「なんだったんだ今の」
恐る恐るそれに近づくとそれが野球ボール位の灰色の球体だと判った。手を伸ばせば取れそうだがこんな得体の知れないものに触りたくない。
「呼んで来たよ!あれ…終わってる」
喫茶店に居た兵隊を引き連れてメアリーがやって来たがその前に終わってしまった。
「神谷がやったの?」
「違う違うあのボールが勝手に」
隙間に挟まっているボールを見せると、メアリーは躊躇なく手を突っ込んでボールを取る。
「あっラビットボールだ」
「知ってんの?」
「これは昔に危なくて発売禁止になったボールなんだ。ところでなんで此処にあるの?」
「ボール何処だァァ」
そして何故かあやめが叫びながら走って来た。




