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22話 やっちゃた人と鴉

射撃試験と言っても銃、弓、魔法の他に大砲など多種多様で、そこらかしこから発砲音が響き渡る。

 ジルコに付いて行き魔法の試験場にやって来ると、入口で中を覗いている生徒二人が居た。


「俺はなんかやりました」

「じゃあ俺はこれくらい普通でしょ。かな」


何か勝負している様だが、この会話だけだと内容が分からない。


「もう始まってるのか、じゃあ私は出来て当然って顔をしてフゥン」

「ようジーコ、今からやるようだぞ」


ジルコも賭けに参加すると一緒になって覗く。あやめも気になり中を覗くと、黒髪の人間の男子生徒が標的に向かって片手を構えていた。試験官が始めの合図を出すと生徒が火球を放ち、標的を全て焼き尽くしても火の勢いは衰えず、周りに飛散り試験場の設備に被害が出る。


「フゥンこんなもんか」


周りの生徒が驚いている中で試験官は冷静に魔法で消火する。


「不合格です」

「えっなんで全部の的に当てたのに」

「この試験は魔力がある程度制御できるか測る試験の為、破壊は関係ありません。あの威力だとやりすぎです」

「えっこれくらい普通でしょ」

(チッ今年もか)…もう一度やって加減出来ないなら落第ですよ」


生徒は納得が出来なそうな顔をするが今度は魔力を抑え、新たに用意された標的のみ撃ち抜き、合格して何かを貰い立ち去る。


「俺の負けか」

「何の賭けをしてたんだ」

「誰だお前ら、まぁ良いや教えてやるよ」


3年の彼らが言うには、毎年この学校に入学してくる一部の一年生は、試験の度に試験場を破壊して似たような事を言うらしく、昼食を賭けて言うことを当てる遊びをしているらしい。


「次の方どうぞ」


そうこうしていると自分達の順番がやってきた。


「そこにあるマギアカセットを選んで導入して下さい」


赤、青、黄色の3色のマギアカセットを腕輪に近づけると宝石に吸い込まれ、感覚的に魔法の使い方が分かる。


「凄い魔法だ」


試しに手の平にソフトボールサイズの火球を出してみる。


「それ熱くないの?熱いぃぃ!」

「なに触っての!水、水」

「この水なんか痺れるだけど」


急いで魔法で水を出して冷やす、そんな光景を見てジルコが爆笑していた。

 試験が始まり標的に向って火球を投げて10中6個の標的に命中し合格する。神谷とジルコも合格し、証明としてマギアカセットを貰う。

 このあと銃と弓の試験を合格するともう放課後になっていたので、夕飯をプロメ達と共に取ることになり、仕事が終わるのをメアリーと神谷、そしてあやめの3人で待っていた。


「二人とも試験どうだった?」


3つの試験を合格した事とあの生徒の事を伝えた。


「ああ花火のことね」

「花火ってあの祭りとかにやるやつでいんだよね?」

「そうそう、試験や試合の度に広範囲の魔法や見たことのない術式の魔法使って騒ぎを起こす生徒の事で、毎年現れては直ぐに消えちゃうから花火」


そんな目立つ事をする生徒対し、その生徒のことを憶えている人は少ないらしい。そして不可解な事にその生徒の痕跡や記録も消えてしまうらしく、本当に存在したか分からなくなってしまうそうだ。


「なにそれ怖い、神隠しかな」

「中には憶えている人も居るみたいで、その人の証言によると友達が霧の中へ消えて行くのを見ると、自分以外にその友達を憶えている人が居なくなったそうだよ」


そんな学校の七不思議に在りそうな怪談だが、実際にありそうで怖い。


「待たせたな、何処に行くか」




レストラン街で夕飯のあと寮に帰ろうとあの試験場の時の生徒とすれ違う。特に何も思うことは無かったが、彼が路地裏の通路に進んで行く際に何かを落として行ったのが気になった。近付いて見ると正体がスマホだと分かった。


(異世界で電波届くのかな?)


通路の先は薄暗く彼の姿が見えない。明日学校で彼に届けようかと考えたが、自分の性格上それが難しいと分かっているため、すぐ戻ると伝えて彼の後を追った。




通路進んでいると霧が出てきて、先に進めば進むほどに濃くなっていく。


「思ったけどプロメさんに頼めば良かったかも、スマホなんて知らないって顔で渡そ…あっ居た」


通路を抜けた先に一つだけぽつんと街灯が立った、広い場所で彼一人が立っていた。


「お前さっきから俺の事を追っているが何のようだ」


どうやらこちらの存在に気付いていたらしい、それなら立ち止まってくれれば良いものを。だが何かが可笑しい、本当にあの言葉は私に対して放ったものなか。

 なんとなく隠れて観察していると、何処からか鐘の音が響き渡り霧の中から誰かがやって来る。


「ふーん、誰なのか知らないが付け回すの辞めろよ」

「・・・」


やって来た人は全身に黒い羽を纏いペストマスクの様な仮面を着けた、鴉を思わせる人だった。


「なんか言えよ、用が無いなら俺は帰らせてもらう。付いてくるなよ」


生徒が背を向けて帰ろうとすると、足元に剣が飛んでくる。振り返ると怪しい人が飛んで来た剣と同じ剣を持っていた。


「フゥン決闘のつもりか…死んでも知らないよ」

「…者」

「はぁ?」

「再誕者…」

 

再誕者と呟き剣を構える。


「こんな物よりコイツを使わせて貰う」


腰に付けていた懐中電灯?を剣の様に構えスイッチ入れるが点かない。


「あぁクソっ」カチカチ


何度も試して灯りが点かない事に腹が立ったのか地面に叩き付ける。


「スマホもない…覚悟しろよぶっ殺してやる」


突き刺さっている剣を引き抜き構えるとそれが決闘の合図となったのか、鴉は地を駆け一気に彼の目の前まで近づき剣を振り下ろす。


「クッ」


剣で一撃を防ぐ事は出来たが衝撃で体勢を崩し、そこに蹴り喰らい吹き飛ばされ地に転がる。


「はぁ…はぁ…なんで特典が使えない」


荒い息を整え、剣を杖にして立ち上がり再び構え斬りかかるが、剣を弾き飛ばされ地に突き刺さる。


「再誕者…」


その刹那、鴉の剣が彼の胸を貫き倒れる。  

 そして倒れている彼を踏みつけ、強引に剣を引き抜き血で石畳を汚す。


「あぁ…」


瀕死の生徒に止めを刺そうと剣を振り下ろす、そこへあやめは弾丸を撃ち込み阻止しようとするが、剣で弾かれ周囲の建物に当たり爆発を起こす。


(やばいこっち見てる)


私の存在を知った鴉は、地面に刺さっているもう一本の剣を引き抜き足元に投げ付けてくる。

 次の標的は私になった事で彼に興味を無くし、止めを刺すのは辞めた。そしてどうやら私が剣を抜くまで動かない積もりで、決闘気取りらしい。

 

(私がこの状況で出来ることは一つ、それは)


助けを求めに此処から離れる事だった。これがこの状況で最も相応しい答えだ。

 まづ闘ったところで勝てない。こちらの奇襲に対応してくるような相手だ、そうとうな実力者で間違いない。

 霧が濃い路を走り抜け霧の中で唯一見える光を頼りに向かう、幸い鴉が追ってきている様子はない。狭い通路をひたすら進み抜けた先には、こちらを睨んでいる鴉と倒れている彼が居た。

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