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18話 工房の兎


「あぁん、用なんてねぇわ!」


さっきとはまるで別人だ。


「あぁんだ、おっメリーじゃねぇかアビーも久しぶりだな。そこのおめぇらは知らねぇ顔だな、うんん!」


うさぎの人はあやめに気づくとグイグイ近付いて来る。


「その銃使ったか良いだろおれが造ったんだ。よう見たらお前さんたち人間か、まぁいいや寄ってきな」


二人は強引に工房へ連れて行かれる。

工房の中は様々な武器や防具によく分からない装置が置いてある。剣などのメジャーな物から壁にはドリルやチェーンソーなどが飾ってあり、明らかに世界観を間違えた物まであるがこれも魔法的なものだろう。


「ほれ茶と菓子だ」


テーブルの上にあった物を退けてそこに並べ、それぞれソファーに座り、うさぎの人はあやめの前に椅子を持って来て座る。


「でっ使い心地はどうだ。魔獣には使ったかブゥッ、なにするしゃいアホ!」

「アホはお前じゃい、初対面の相手に何やっとんだ」


テーブルから身を乗り出して質問してくる彼女をソニアが頬を引っ張り止める。


「ああ、そうだった。コニーだよろしく、かー様にはもう会ったみたいだな」


やはり彼女がコニーで合っているらしい。


「それにしてもヒデェじゃねえか」

「お前が悪いだろう」


言い争いになるがアイビーは二人を止めない。


「止めなくて良いですか?」

「いつもの事よ。子供の喧嘩に大人が首を突っ込む事は出来ないし、それにほら」


二人が争っていると工房奥からプロメが止めに来る。


「なるほどプロメさんが止めに来るのだ。でも今はそれより気になってる事があるんだけど」


神谷は手を組み真剣な表情で話す。


「なんであの人つなぎの下は水着だけなんだ」


内容はそうでもなかったが、彼女の格好は着崩したオーバーオールの上半身が水着とかなりきわどい。


「えっとね、コニーは半獣人だから暑いのが苦手で年中あんなんだよ」

「おうよ!おれみたいな半獣人は体温調節が苦手でよ。それで造ったのがこの調節服よ」パチン


水着の紐を引っ張って見せびらかしてくる。


「しかもコイツを売り出したらバカ売れでうはうはさぁ。あと水着じゃねぇぜ」


そこまで大きな声で話していたつもりじゃないが聞こえていたようだ。


「そんなことはぁえんだ。それよりほれ」

「あっはい」

銃を二丁、ホルスターから抜いて渡す。


「へへっ久しぶりだな〜でっ使ったかい?」

「いえ全然使ってないです全然」

「そうみてぇだな、この分じゃ一発撃ったくらいか」


流石に銃を造った本人には分かるらしい。


「ほぅどこで撃ったんだ?」

「えっえ〜と」

プロメにそう聞かれ、あやめは戸惑う。


「あ〜もう大体分かった。お前達もう面倒は起こすなよ」

「ごめんなさい。でも爆発するとは思わなくて」


爆発すると知っていたらあそこまで惨事を引き起こすことはなかっただろう。


「そりゃ結晶魔法を使用した銃だからな」

「結晶魔法?」


圧縮した魔力に質量を持たせる魔法で高度な魔法な為、魔術式を作るのは難しいので結晶魔法が使われている魔具は大変高価らしい。


「こいつは魔術式短銃って言ってな、結晶魔法の魔術式が崩壊した瞬間に発生する魔力放出を意図的に起こして目標を吹っ飛ばす代物さ。やべぇだろ」


元々あの爆破は仕様だったらしい。


「結晶魔法って魔力凄い消費するんじゃなかった」

「それなんだよ、この銃の欠点は。一応調節レバー付けといたけど最大になってんな、こりゃ〜魔力枯渇してぶっ倒れるぞ」


あの時、動けなくなったのは貧血じゃなくて魔力不足だったようだ。


「こっちは使ってねぇみたいだな」

神谷に渡したもう一丁の銃を調べる。


「それ俺が使った時、弾が出なかったですけど」

「あん?見た感じどこも壊れてねぇけど」


コニーは試しに引き金を引くと鐘を様な甲高い音が鳴り響く。弾が発射される代わりに魔法陣が出現し、そこから虹色の液体が流れ、大きな結晶となり砕けると剣の形になる。


「あん?しっかり動くぞ」

「あれぇなんで、そもそも銃なのかそれ」

「いんや、こっちは銃の形をした結晶魔法剣さ」


銃のトリガーガードを動かすと剣が外れ床に落下する。落ちた衝撃で剣はガラスの様に砕け、砕け散った破片は光の粒となって消える。


「あれだろ契約されてないか、魔力不足のどっちかだろ」

「契約ってその銃の?」

「ああそうさ、契約者以外使えねぇし、正式以外の方法で書き換えたり使えるようにすると酷え事になるらしぃぜ。ほれ」


銃をあやめに返す。


「酷い事?あと契約した覚えありませんけど」

「おまえさん説明書読まなかったのかい」

「使う予定無かったので」


契約とは魔具の使用無効に契約者以外の腕輪に収納出来ないようになるなど、いわゆる防犯システムのことである。


「石の台座から抜くとか、ぶっ刺されると契約成立とか、製作者が決められっからこれが結構おもろくてね。そいつには最初に触った奴にしといた」


一応、書式方法もあるが製作者には人気がない。ちなみに一番メジャーなのが台座から抜く方式である。


「ほんとならもっと造って売りてぇけど、結晶魔術作れる奴が少ねぇし、大量生産出来ねぇからどうしても高くなるし、買う奴はコレクションとか言って使わねぇしから宣伝にもなんねぇ。

 クソなんなんだ彼奴等は、使えやクソがあぁ」


不満を撒き散らしテーブルを叩いて八つ当たりする。


「依頼して来る奴は変な注文してくるし、なんだよ刃がめっちゃ動いて切り刻む武器って意味わかんねぇよ。

 注文通りに回転する鋸とかちぇえんそう、ての造ったが何だったんだ。結構気に入ってるから良いんだけどよぉ」


それで依頼品とは別に造った物は壁に飾ってあるようだ。


「おれは鍛冶屋であって発明家じゃねぇぞ」

「そうか?お前が造ってる物は武器より魔術式の方が多いぞ」

「それはそうなんだけどよぉ」


コーヒーを飲みながらため息を吐く。


「おれは火薬を使った武器が造りてぇだよ。あの火薬の燃える臭いが良いだよ。それに比べて魔法には匂いが無いからつまんねえだよなぁ。あ〜もう夕方か」


ふと窓の外を観るといつの間にか真っ赤になっていた。長い間お邪魔していたらしい。プロメもコニーとの用事が済んでいたようで、一緒に戻る事になった。


「そうだ神谷おめぇさんにこれやるよ」

工房から出る時に神谷へ短剣を投げて渡す。


「ぜってぇ気に入るぜ。じゃあな」

コニーはまた工房に戻り扉が自動で閉じる。


「剣か良いね、まぶ」

兎のロゴが入った鞘から剣を抜くが剣身の放つ強烈な光に驚き直ぐに戻す。


「良かったですね。あいつ気に入った方にしか物を贈らないので」

「そうなのか。そんなに好感度上げること言ったか?」

「基本あいつは誰とでも親しくしますけど、自分に悪意を持つ人には態度変えますから、獣人嫌いや種族差別する人には特に」


彼女に何かあったかは知るところでは無いが自分がそうなる事は無いだろう。


「その点貴方はあいつに色欲を感じるくらいですから悪意は無いと思ったのでしょう」

「なるほどな〜うん?待って誤解です。あれは普通あんな格好してたら誰だって気になるでしょう!」

「確かにあのどえらい格好は私も気になっていたけど、堂々と言わないって」


神谷は頭を抑えながら応える。


「俺は18歳の男子だぞ、あれを気にしない方がおかしいって!」

「そうですか、まぁあれです。獣人の方はあのような格好が多いので慣れますよ」

「まじかぁ」


ペニーさんも半裸だったがあれは見た目がただの兎だったから特に何も思うところはなかった。


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