15話 契約/
此処はとあるブティック
「やっぱり思ってた通り可愛いわ。お人形さんみたい」
「大変似合っております。あやめ様は全体的にスリムなのでこちらのフリルなどもよろしいかと」
私は今とあるブティックにて服を取っ替え引っ返される人形の様になっている。
どうしてこうなったかと言うとあれは1時間程前のこと。
「さあさあ、あやめちゃんに似合う服を探しましょね」
私はアビーさんにこの国で一番大きなブティックに連れて来られた。
「アイビー様ようこそおいでくださいました」
店に入ると角の生えた店員に挨拶される。
「ジークちゃん久しぶり、今日はこの娘に合う服を探してるだけど何か良いのはない?」
ジークと呼ばれる人にこちらへ言われるままに女子向けのコーナーに案内される。
「あの人誰ですか?あとアビーさんって物凄いお金持ちなんですか?」
「あの娘はジークちゃん、うちの娘の友達よ。あと私は別にお金持ちじゃ無いけど、此処で娘達の服をよく買ったからお得意様なんじゃない」
私はアビーさんにだけ聞こえる様に耳元で話す。
あやめ達は10分程歩いて女子服のコーナーのゲートに到着する。
「こちらには世界中から集められた様々な服が揃っており、お客様が気に入る服が必ずあると思われます」
そう言われゲートの奥を覗く、中は異常な程広く様々なジャンルの服があり、奥の壁までかなりの距離がありそうだ。
「お客様はどんな服が良いか希望は有りますか?」
服なんて自分で選んだことないし、何より此処は自分にとって凄い場違いを感じる。
「じゃあ、なるべく安「この娘に合う可愛い服でお願い」
さっさと買い物を終わらせ此処から逃げ出したかったが、そうはいかないようだ。
そして現在に至る。
「良いわ凄く良い」
「次はこのゴスロリなど、どうでしょう」
あれからずっとジークとアイビーが選んだ服をあやめは次々に着替えファションショーの様になっている。
凄く盛り上がっている二人に置いて置かれ言い出しづらく他のお客の視線が辛い。
何より身の丈に合わない服を着ている自分を見るのが一番辛い。
「へっへへ、まじ勘弁してください」
2時を知らせる鐘がなるまでこのショーは続き、最終的に試着で着た服全部と普段着れそうな物を選んで購入した。
その後、時間になったので大量の服を腕輪に仕舞い、待ち合わせの店に向かう事にした。
店に向かって歩いている途中、ピューパと契約の時に何があったのか聞かれたので応えた。
契約中の時
あやめは石像に左腕を嫌と分かっていながらも覚悟して石像の手の平に乗せると神谷の時のように腕が掴まれ噛み付かれる。
「くぅぅぅ」
あの時と違い、腕を鋭利な物で貫かれた様な激痛が走る。そして苦痛になんとか耐えたがそれは突然起きた。
神谷に預けているデバイスからけたたましい警告が鳴り響く。
[登録者の危機を感知しました。防衛機能を起動します]
デバイスからあのロボットが呼び出される。
「ちょっ神谷止めて!」
神谷はデバイスを操作して止めようとするも止められない。
[アクセス権限が無い為、その操作を行う事が出来ません]
ロボットは腕のガスバーナーもとい、レーザーブレードを構える。
「やばいよ私ごと殺る気だよ!」
あやめは腕を無理矢理引き抜こうとするがしっかり固定されて抜く事が出来ない、受付の人に助けを求めようとしたが何かを察した顔で何処か遠くを見ており期待できない。
ロボットが石像に向ってレーザーブレードを振りかざすが、丁度契約が終わり石像があやめの腕を放す。
「イテッ」
腕を引き抜こうと力を入れていたが突然放された為、勢いよく床に尻もちを着く。その瞬間ロボットがレーザーブレードが先程まであった頭上があった位置より上を通過する。
石像は両断され巨大な上半身が床に落下し砕け散り大きな音を立てる。
[目標の排除完了]
ロボットは石像を破壊するとまた光になりデバイスに戻ってゆく。
壁は大きな跡が残り、石像は上半身が破壊され最初の時と比べ部屋には激的なビフォーアフターが起きた。
「またか…」
「まじですみません」
その日、私は人生で初めて土下座をした。
あの後はお咎めが無かったものの今日の出来事でこの世界でまとも生きていく自身が持てない。
「それは災難だったわね。でもあの石像は毎年破壊されるから大丈夫でしょ」
「毎年破壊されるってなかなかですね」
毎年あんなのが起こってたから何もなかったのか。
「設定を弄って出ないよう出来たら良いですけど」
「そうね出来るのなら良いのだけど。見えたわ、あの店よ」
目的の店は外観に大きな筆や定規が飾っており、看板は絵の具を混ぜるパレットの形をしていた。
早速、店に入ってみることにした。扉を開くとドアベルが鳴り響き来店を知らせる。店内はそこまで広くはないが、棚に天井に付きそうな程、筆などの文具が積んである事からこの店が文房具屋だと言うことが分かる。
開店して早い為か店内に自分達以外の客は居ない。プロメさん達の姿が見えないのでまだ着ていない様だが、先に見て周る事にした。
並んで要る品は普通の文房具屋と大差は無いがボールペンなどは流石にない。その代わりに宝石で出来た色とりどり鮮やかな万年質が何本も置いてある。
アビーさんが言うには、これは宝石ペンと言ってインクの代わり自分の魔力を使って書く魔具らしく、無色のペンだけ色が決まっておらず使用者の魔力の色に変換されるらしい。
試しにアビーさんが適当に描いて見せると赤紫色に変わる。今度は自分で描いて試すと7色になり光出す、七色は珍しいらしく100人に一人の割合らしいが、それは珍しいのか分からない。
そんな感じで観て周っているとドアベルがまた来店を報せる。
「いたいた」
メアリーがやって来た。
「みてみて凄いでしょケロベロスだよ」
そう言ってメリーはあやめに嬉々と両手で抱えている物を見せてくる。
「へぇ〜凄いね(手裏剣?」
またドアベルが鳴ると今度はプロメ達がやって来る。
「先に着てたか、そっちは何かあったか」
「ええ、かわいい服を沢山買って宝石ペンを観ていたとこ、それより見てみて」
アイビーはあやめを引き寄せるとプロメの前に立たせる。
「どう、可愛いでしょ。初めて見た時からこうゆう服が似合うと思ったのよ」
「ああ、いんじゃないか」
「でしょでしょジークちゃんと選んだのよ。それでプロメちゃんの分も買ったから着てみない」
対象がプロメに代わった事であやめはアイビーから距離を取る。メアリーも見せて満足したのかいつの間にか店の奥で商品を見ていた。
そういえば神谷の姿が見えないのに気が付く、また何処かへ行ってしまったのかと思ったが窓の外をぼんやりと観ている。何かあったのか訪ねた。