12話 迷子
学校を出たあと街は沢山の人で賑わっていた。
「それにしても凄い人が多いですね」
「EFを求めて世界中から集まるからな、学校以外に魔法やギルド、観光に商売など目的は様々だ」
どうやらこの世界で重要な国らしい。
「集まり過ぎて空に学校を建てたくらい出しな」
大体そんな理由で学校が増えたらしい。
「ずっと気になっていたですけど、EFってそもそも何ですか?私には特殊な鎧にしか思えないですけど」
「いつからあるのかまだ分かってないけど、少なくともピューパと一緒に300年以上前から存在してるらしいよ」
300年か、そんな昔から存在するのか。
「色々説はあるけど、EFが造られた有力な説が2つあってね、骸甲竜や魔獣を狩る目的で造られた説と戦争目的で造られた説があるんだ。
1つ目の説は脅威に対抗する手段として、2つ目は兵器として、300年前の凄い戦争が起こったのが原因とか」
「よく分からんけど、そのEFそんな凄い物なのか?」
「凄いってもんじゃないよ。国一つ滅ぼせるくらいの事ができるんだ」
国が滅ぼせるとは恐ろしいがただ。
「それだったらEFの学校があるのって不味くないか?」
「う〜ん、あれじゃないの危ない物は正しく使えば便利になるとか。非戦闘用のEFもあるし」
「まぁそうか、あと結構な種類あんの?」
「そうだよ能力によってクラスが決まってて、その特定のクラスのEFや装備を造ってるブランドもあるんだ」
これだけ聞くと車や時計のブランドみたいだ。
「へぇ〜そういえばプロメさんが使ってたのはなんてクラスなの?」
「あれはロイヤル、ナイトを基準に他のクラスの特性を持つ複合クラス、色んな能力が使えるけど、造るのに凄いお金が掛かるだ」
そんな話をしながら人混みの多い噴水の広場に出る。
「此処はエルドラのレストラン街、世界中から料理人が集って出来た場所よ」
広場を中心にレストランがエルドラの城壁の奥まで続いている様に観える。
「私達が行くのがこの路を真っ直ぐ行ったところにある店だ」
「何の店なんですか?」
「行けば分かる。あとお前達には馴染み深いかもな」
ともかくその店に向かって進む。
レストラン街と言うだけあって、そこら中からいい匂いがしてくる。色んな匂いが混じる中で印象に残った物が合った。
「カレーの匂いがする」
香辛料の独特な香りが漂う、近くの店を見渡すと看板にターバンを巻いたインド人らしき人物が載っている。
(ここまで来ると何でもありだな)
人混みの中そんな事を考えてると顔が見えないほど深くフードを被った人にぶつかりそうになる。
「ごめんなさい」
「・・・こちらこそ」
そのままその人は裏路地に消えて行った。声からして女の人だと思う。
「おーい、どうした?そんな所に突っ立って」
声を掛けられ、ふと気が付いたら皆は結構離れたところに居た。私は急いで皆の方に向かった。
そこから5分程歩くと目的の店に到着した。
「らっしゃい」
中は居酒屋って感じだった。異世界に来て日本に帰って来た感じがした。そもそも漢字とか使ってるし明らかに日本主張が激しい。
「あっプロメさんお久しぶりです」
「ああ久しぶり」
顔見知りの様だ、この店にはよく来るのだろう。
「プロメさん、そのお嬢さんは?」
「この娘はあやめ、私の遠い親戚だ。でっこっちが神谷…はどこだ?」
いつの間にか神谷は居なくなっていた。
「あれ、さっきまで居たのに」
「迷子になって、また盗賊に捕まってたりして」
「まっさか〜」
「あぁすまないがカリヤ少しの間、メリーを頼む。メリーはこの店に居て神谷がき来たら連絡しろ、私達は分かれて探す。」
神谷を探すことになり、なにかあった時の為にピューパで連絡出来るよう教えてもらった。使い方は腕輪番号を使って連絡するようで、電話とたいして変わらないようだ。
「さっきのシンボルの横に私の名前が出てるはずだ、それに触れれば連絡が取れる」
電話帳に名前が一つ増えている。あとついでにメアリー達ともしておく。
「あやめ一人だと心配だから、これ渡しておくね」
メアリーはそう言って、宝石箱を取り出し渡す。
「昨日のやつ」
「そうそう本当は使わない方が良いけど念の為にね。EFに入れて置くと取り出すのに手間が掛かるからベルトに付けておくといいよ」
早速ガンベルトを着けてみる。ホルスターが丁度腰辺りに付いている。取り外し出来るみたいだ。
「そんなのいつの間に買ったの?」
「ペニーに貰ったの」
銃を収めて確かめる。
「どお?」
「結構軽いし邪魔にならないから良い感じだけど、これ着けてそこら辺歩いても良いの?」
「エルドラだと特に武器の所持は禁止されてないから大丈夫だろ。本当は置いて行きたいが、あいつ早く連れ戻さんとまた巻き込まれるだろうから、仕方ないだろう」
店を出てそれぞれ噴水広場の道まで手分けして探す事になった。私はこの店までの表道を、そしてプロメさん達は路地裏を探す為に別れた。
「それにしてもあの人は何処に行ったんだろう。真っ直ぐ進めば良いのに普通迷う?」
様々な種族が行き交う道を探しているとある事に気が付く。
「ここはさっきの…まさかあの明る様に怪しい人を追って行ったりして、いやまさか…ありえるわ」
先程、フードの人が消えて行った路地裏の通路を観る。
こちらは賑やかな一本の表道と違い、人通りが少なく薄暗く静かで、中は入り組んでおり迷路ようだ。
「う〜んう〜ん、あぁクソッ」
少し悩んだが進む決心を決め、進んで行く。
しばらく歩いていると誰かが何か話している声が聞こえた。その声を頼り進むと立入禁止と書かれた看板を見つけ、壊れた鉄条網の先に何かを覗いている神谷を見つけた。
「神谷さん探しま」ガッ
神谷はとっさにあやめを口を手で塞ぐ。
「静かに」
何処か真剣な表情の神谷。
「あれどう思う?」
目線の先には沢山の樽が積み重なってが置いてある狭い空き地にさっきのフードの人ともう一人、同じような格好をした人がそこで何か話している。
「私の方は抜け道用意したけど、アンタは?」
「ああもうすぐカモが来ることになっている。段取りは分かってると思うがしくじるなよ」
「分かってるわ。それより約束は守って頂戴ね」
不穏な空気が流れる。
「なんかやばそうな話ししてますね」
「だろ、俺達で捕まえようぜ」
「また捕まりますよ、今はプロメさんのところに戻りましょ」
神谷を連れ戻そうとしたが、此処に誰かが近づいて来るのに気付き、あやめも物陰にに隠れ覗き込む。
近づいて来たのは20代後半位の男だった。
「よ約束通りに来たぜ。アレは用意出来てんだろうな」
「ほら」
乱暴になにか入った袋を投げる。地面に落ちると金属が擦れる様な音を発し、中を確認する。
「おい全然足りねーぞ!」
「残りは金を払ってからだ」
男は通貨が入った袋を投げて渡す。もう一人がそれを受け取る。
「あら?少し足り無いみたいね」
「はあ?そんなわけ無いだろ」
「まあ良い、別の物で払ってもらう」
フードの人は男に向かってナイフを投げる、ナイフは男の肩を掠り後ろ壁に刺さる。
「いきなり何して…」
男は突然具合が悪そうになり、膝を着く。
フードの人は壁に刺さっているナイフを取りに行く。フードを取ると特徴的な長い耳が見える、エルフだ。
「このナイフにはツツジ蜘蛛の毒が塗ってある、ちょっと掠っただけでこの通りだ、死にはしないがしばらくは動けねぇさ」ペロ
ナイフについた血を舐める。
「安心して、痛い目に合わせるわけじゃないから」
もう一人もフードを取る。頭には山羊の様な角が生えており、多分サキュバスということが分かる。
「宿に行って良いことするだけだか」
バタッ
何故かいきなりエルフが倒れる。
「なんであの人いきなり倒れた?」
「あれでしょ、毒ナイフ舐めたからでしょ」
「アホなのかな?でもチャンスだ。今なら一人だし、いけるかも」
「多分素手じゃ勝てないと思いますよ」
「え?」
もう少し様子を見る。
「もー何やってんの」ひょい
エルフを片手で軽々と持ち上げ担ぐ。
「あのゴリラと素手で殺り合って勝てるなら止めないけど」
「う〜ん無理☆せめて武器があれば…その銃どうしたの?」
あやめの腰にある銃に気付く。
「これですか?メリー君に貰ったですけど、流石にこれ使ったら不味いと思いますよ」
「大丈夫大丈夫、あの樽を積んである棚の金具を撃って、樽を転がして気を引いているうちにあの人を助けるだけだから」
「そんな上手くいきますかね」
蓮根銃を神谷に渡すと棚の金具の向けて引き金を引く。
「あれ?弾が出ない、もしかして弾切れ」
「おかしいな確か弾が必要ないはずなんだけど」
銃を返して貰い同じ場所を狙って撃とうと引き金を引くと、装飾の宝石が青く発光し6門の銃口から青い弾同時に発射する。
弾は着弾すると小規模の爆発を起こした。
ツツジ蜘蛛
ツツジの花の蜜を吸う小さい蜘蛛で種類によって毒を持っているが舐めるか噛まれるかしないと効果はなく、仮に嚙まれても数分間体が痺れるだけで致死性は無い。因みに毒は少し甘いらしい。