11話 魔法の国
気が付くとベッドの上で寝ていた。やはり夢だったようだ。窓から光が顔を照らし眩しいので再び目を閉じ眠ろうとするが誰かが毛布を奪い取る。
「朝食出来たから起きてよ」
どうやら奪い取った犯人はメアリーで、朝食が出来たので私を起こしに来たようだ。
リビングへ行くと皆が待っていた。ただアビーさんが居ない事に気付く、その事を聞くと二日酔いでまだ寝てるらしい。朝食を済ませた後、暇になったのでデバイスの機能で映画を観ようとしたが、ネットに繋がないと観れないという現実問題に直面する。
これだと、このデバイスは本当にただのスマホなんじゃないかと疑ってしまう。しかしそれだとこの暇な時間をどう過ごせば良いか考えていると。
「あやめ、見て見てこんなのあった」
メアリーは本棚から大きな箱を持って来た。中身はボードゲームセットでサイコロやカード、フィギュアなどが入っていた。
内容はプレイヤーの分身であるフィギュアを操作して、戦いながらダンジョン攻略を目指すこと。参加するのは私とメリー君と神谷さんの3人で、お互いに説明書を読みながら進めて行く。
この世界のゲームだけあってフィギュアが動いてモンスターと戦うところは中々迫力があり楽しい。
ボードゲームでしばらく遊んでいると、クロエさんが目的地が観えたきたことを知らせてくる。
「うぉぉ凄え」
窓を開けて遠くを見渡すと幻想的な街の景色が観えた。街の中心に雲を貫く程大きな光の柱のなにかと、その周りを囲む山より巨大な城、そして空に浮いている建物も多く観られる。
「あれがお前達が通う魔導中立国家、学園都市エルドラだ」
漫画とかで出てくる学園都市以上の物が出てきて動揺する。
「あの星遺物の周りの建物と空に浮いてるやつも学校なんだよ」
「マジか、あれ全部学校かよ」
「元々この国は多くの種族が集まる場所だから巨人に人狼、ハーピィー、エルフ、小人、人間。種族事に合わせて学校が出来たらこうなったらしい」
数多くの種族が居ればそれに合わせた学校もその分存在する。
「お前達が行く学校は一番多種族が行き交う場所だ、人間だけのクラスは無いから種族関係なく仲良くするんだぞ」
バァンッ、突然打ち上げ花火のような爆発音が響き渡る。
周りを見渡すと空に緑色の光の玉が浮いている。
「花火か?」
「あれは信号光だ、あの光の下を観てみろ」
そう言われて目線を下に降ろすと遠く一台の馬車が走っている。すると大きな鳥が一羽、窓から入って行くのが視えた。
「此処は毎日多くの人が行き交うから検問所で捌いていたら切がない」
周りで次々と信号光が打ち上がり、その度に大きな鳥、ハーピィ達が向かう。
「だから呼んでいるわけだ」
壁にある宝石を操作して信号を打ち上げると窓から制服を着たハーピィが入ってきた。
「ハァ〜イ、パスポートを見せて下さ〜い」
プロメが3人分を提示する。
「ハァ〜イ、確認できました。そちらのお二人もお願いします」
プロメが書類を渡す。
「初めての方ですね。じゃあ証明写真を撮りますね〜」
首に掛けているカメラで写真を撮ると、腰の小さい鞄から写真が印刷される。
撮った写真と書類を大きな鞄に入れると…
「ムシャムシャ」
鞄が食べ始め…
「ペッ」
何かを吐き出す。
「ハァ〜イ、パスポート出来ました。再発行にはお金が掛かりますので無くさないで下さい」
パスポートを受け取る。
「これがパスポート」
空港で見せる文書のパスポートと違い、
た目はかなり厚めの緑色のカードっていう感じだ、あと若干湿っている。
「では私はこれで」
仕事を終え、窓から出て行く。
「えっさっきアレなんだ」
「あれは鞄型ミミック、紙に書かれた文字や絵から情報を集める習性を持ってて、集めた情報は親ミミックて言われてるでっかいミミックへ行くらしいよ。パスポートは元々、あのミミックが本から抜き取った情報の残りカスだったらしいけど、いつの間にかカード状になったらしいよ。一説には食べた本の影響を受けたとか。」
ミミックと言えば宝箱のイメージがあるが色んな種類があるようだ。
「もうすぐエルドラに入りますので窓か頭を出さないでください」
門を潜ると中は外から見るよりずっと広い。地上と空、そして馬車の走っている大地が一部透けており、そこから下にも街が広がっているのが観える。
「へぇ〜やば」
「あの一番大きな城がお前達が通う学校だ」
目線の先にはあの光の柱を囲むようにそびえ立つ建物が見える。
「城と言うよりはビルって感じですね」
やたら縦に長いからビルに近い。
「いや上だけじゃなくて下も見ろ」
そう言われて目線を下げて見ると地上から出ている部分は一部だけで、残りは地下全体に木の根っこの様に広がって見える。
「ひぇ〜」
「この国の面積の半分以上がこの学校だからな」
馬車は城の目の前まで進み停止する。馬車を降りて改めて近くで見ると物凄い迫力を感じる。
「では私達はこれで。そうだ、この近くで店を開いてるのでよろしければ」
店の住所が書かれたカードを渡し去って行く。
「さて学校行くか、アビーはどうだ」
「えぇ大丈夫」
アイビーは荷物に寄りかかって小さな声で返事をする。プロメはアイビーを担いで学校の中に入る。中は魔法使いの学校って感じがする。
受付で書類を出して呼ばれるまでロビーで適当な雑誌を読んで過ごす。アナウンスで神谷さんと私が呼ばれ、受付に行くと腕輪、ピューパに契約する部屋に案内され、大きな龍の石像ある部屋に連れて行かれた。
「この腕輪をはめた方の腕を石像の手に乗せてください。すると契約が始まります」
装飾がないシンプルな銀色の腕輪を受け取る。
「契約は痛みを伴いますが30秒程で終わりますので耐えてください。終わりましたら、このポーションを腕に掛けるか飲んで下さい」
オレンジ色のポーションを渡される。
(血だけじゃなくて、腕も持って行かれそう)
「俺が先にやって良い?」
神谷が率先して前に出る。
「あっどうぞ」
神谷は左腕を乗せると石像が動き始めると、石像の腕が突然、神谷の腕を掴む。
「腕を無理に抜こうとすると危険なので耐えてください」
次の瞬間、石像が神谷の腕に噛み付く。
「アァー!」
あまりの痛みに苦痛叫び声を上げ、もがこうと必死で右手で石像を叩くが抜け出す事が出来ない。
「すぐに終わるので耐えてください」
約30秒立つと石像の眼が紅くなり掴んでいた腕を放す。
「はぁはぁ、これだめだって」
噛まれた腕から血が少し垂れ床を汚す。はめていた腕輪はさっきのシンプルなモノと違い、形状がかなり変わり赤い宝石が付いていた。
虫の息の神谷はポーションを何とかして飲もうとするが腕に力が入らず飲むことが出来ない。
「お疲れ様です。ポーションが飲めそうになさそうなので掛けさせて頂きますね」
受付の人がポーションを腕に掛けて治す。
「はぁ〜はぁ〜あやめちゃんこれ滅茶苦茶痛いから頑張ってね。俺はそこの椅子で休んでるから」
(あれ見た後にやりたくないな)
目をつぶって左腕を差し出す、死刑宣告を受けた気分だ…
...
ところ変わってロビーにて二人を待つプロメ達。
「少し良くなってきたわ」
「まったく、何時も飲み過ぎだぞ」
「ついお酒が美味しくて、ところであの子達は?」
近くには本を読んでいるメアリーしかいない。
「二人は今、ピューパの契約に行ってるから直ぐに終わるだろう」
「そうなら後でご飯「アァー!」・・・あの子、成人だったわね」
神谷の苦痛による叫びが響き渡る。
「多分大丈夫だろ[ドゴォーン!]・・・戻って着たら良い店に行こう」
今度は何か大きな物が崩れた音がする。
5分後、戻って来た二人は何処か申し訳なさそうな顔をしていた。
案内の受付は何処か遠くを見ていた。
何があったかは今は聞かず昼食に向かう事にした。
トレジャーダンジョン◇ゼテウスの陰謀◇
三人で遊んだボードゲームの名前、ダンジョンを探索し持ち帰った宝で勝敗を決めるこの世界ではメジャーなゲームでプレイヤーは最大8人で遊ぶことができハンター4人と盗賊4人のキャラ駒と敵の駒である魔物と骸甲龍が用意され、敵対するのもよし協力して裏切るのもよしのなんでもあり。一人で遊ぶ場合は敵の駒が勝手に動きます。
エルドラ国
この世界における都市の一つで学校と観光地が沢山ある。
鞄型ミミック
情報などを纏めて物質かすることが出来て、カメラを合わせると写真も出せる。
ピューパの契約
使用するには本人の血を魔力と一緒に採血し、それを宝石にして腕輪に嵌めることでピューパが完成する。なお死ぬほど痛い理由は魔力を採血する際の石像の牙による拒絶反応と考えられている。未成年(この国だと15まで)の場合は反応が薄いが噛まれるので普通に痛い。