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8話 ウェパル


「あっちはもう終わったみたいね」


こっちの事で少し目を離したら、いつの間にか、あの場所にプロメさん以外に立っている者は居なかった。

 何処から取り出した手枷で倒れている男達を拘束し、黒髪の青年を木から降ろし担いであやめ達の方に向かう。


「結局さっきの人達は何だったですか?」

「あれは最近ここら辺で指名手配されてた盗賊だろう、今はそれより」


プロメは担いでいた青年をそっとソファーに降ろし、ナイフで縄を解く。


「コイツの方が気にならないか?」

「私と同じ黒髪の人間…日本人かな?」


私と同年代くらいで、多少汚れているが学生服を着ている。ポロシャツだから夏服だろう。


「なんにせよ、コイツが目を覚まさないと話は進まない。あの盗賊共もギルドに引き渡すから近くの村に寄るぞ」


プロメとアイビーは、外に倒れている盗賊を雑に後ろの荷台に放り込む。


「この子もお願いね」


何故かユニコーンが黒焦げの盗賊の咥え持ってくる。

黒焦げの盗賊も放り込んだ後、プロメが腕輪を操作して立体的な地図を出す。


「此処からだとクラン村が近いな、クラン村に向かってくれ」


・・・馬車が再び動き出してから直ぐ。


「ずっと気になってたんですけど、皆が着けてるその腕輪は何ですか?」

「これは携帯型召喚器ピューパと言って、EFを召喚や地図を出したり遠くに居ても水晶回線を使えば会話も出来る便利な道具だ」


見た目は紫色の大きな宝石がはめてあるただの銀の腕輪。


「他にも色々機能が付いてるが自分で使ってみた方が良いだろう。入学したら貰えるからその時に試せばいい」


聞いた感じだといろんな事が出来るスマホの様な物のようだ。

 話が終わると操縦席の窓からが聞こえる。


「見えてきましたよ」


外を見渡すと遠くに巨大な大樹そびえ立ち、その下に木を囲むように集落が出来ている。

 クラン村と書かれている看板を通り過ぎ村の中に入り、馬車を専用の駐車場に留める。


「盗賊共をギルドに連行するから、それが終わるまで自由時間だ、アビーはそいつを頼む」


プロメはそう言ってギルドへ向かう。


「自由時間って言ってもな〜」


正直、何をしたらいいのか分からないし、スマホの代わりにデバイスでも弄るか。


「僕は行きたいところあるけど、来る?」

「おっ行く行く」


でかい人参を背負ったメリー君に手を引かれてついて行く。

 この村はあっちの村より住んでいる人が多く、家も沢山ある。猫に良く似た人や肌の一部がトカゲの様な鱗をしている露出が高い人などの人間以外の種族とすれ違う。


「ところで何処に行くの?」

「もうすぐ着くよ。ほらっ見えてきた」


指を指した方にウサギの看板にウェパルと書かれた店が見える。


「このお店はEFとか武器が売ってるとこだよ」


店のドアに近づくと自動で開き、店内に入ると音楽が流れる。

 店の中は剣などの武器や盾に鎧、腕輪に指輪など様々な物が置いてある。


「いらしゃい〜」


店の奥のレジに小学生くらいの身長がありそうな、ウサギが座って店番をしている。


「ねぇ、ウサギが喋ってる」

「あれはバ二ーホイップ族だよ」


いかにも童話に出てきそうなファンシーなウサギだ。


「おや、メリーじゃないか。隣に居るのは彼女さんかい?ペニーだ、よろしく」

「違う違う、え〜とうん、なんだろう」


私の方を見てくる。


「私に振られても、うん〜居候かな〜」

「そうかい、それは残念だ。まぁ詮索はしないよ。そうだアレが手に入ったぞ」

「えっ本当!」


全身で喜びを表すメアリー。


「落ち着きな、今持ってきてやるから」


ペニーが店の奥から自分の背丈より大きい木箱を持って来て、床に静かに降ろす。


「ほら、開けて良いぞ」

「ふぁー!」


プレゼントを貰った子供の様に箱を開ける。中身は謎の巨大な武器だった。


「この爆槍爆砕バーストピアスは骸甲種の鱗も貫く優れ物だ。ただ凄く使い辛いから使ってる奴は少ないがな、まあそのおかげで安く手に入った」

「おお!」


箱から取り出し眺める。


「良かったね(パイルじゃん)」


パイル、それは硬い装甲を貫く釘打ち機。ロボット系のアニメやゲームに出てくる、当たると痛いやつ。このファンタジー系の世界でパイルがあるとは思わなかった。


「楽しんでるところ悪がほれ」


右手を差し出してくる。


「うん?あっ忘れてた。はいこれ」


背負っている人参を渡す。


「へへっこれは上物だ」


自分の背丈より大きな人参を嬉しそうに受け取る。


「さっきから気になってたけど、その人参なに?」

「これはポップキャロルいってな、葉を引っ張ると主根が破裂してポップコーンが飛び出してくるんだ」


あれだね、駄菓子屋で売ってるポン菓子。


「これは魔力が豊富な森でしか採れない、ここら辺だとケルシー村の森くらいだ」

「ケルシー村?」

「僕達が居た村の名前だよ」

「ふふ、そうだおまけにこれを付けてやろう」


棚の上から高そうな宝石箱を取る。


「開けてみろ」


開けると中には海賊が使っていそうな銃と蓮根みたいな銃が二丁、そして小さな本が入っていた。


「変わった銃だね」

「まだ商品化してない試作品だそうだ」


手に取って眺める。思ったよりは重く、どちらも宝石が鏤められた装飾が豪華で、これを造った人の技術の高いを体現する。


「試作品ってどうゆう事?」

「なんでも、銃に結晶魔法を組込んで、弾をいくらでも出せる様にしたらしい」

「結晶魔法ってあの難しいやつ?」

「ああ、結晶魔法はただでさえ扱える奴が少ないのに量産しようとしたから採用されなかったらしい」

「そうだよね、あれが扱える人は5人くらいだっけ」

「そうそう、そもそもあの子が作った試験に合格しないと結晶魔法は理解出来ないから、また駄々こねてソニアちゃん困らせてたよ」

「これを作ったのってもしかしてコニー?」


前にもその名前を聞いたがその人は発明家なのだろうか?


「ああ、誰も買ってくれないから使えそうな冒険者にタダで良いから渡してくれだと」

「へぇー、でも僕は銃使ったことないからなー。あやめは使ったことある?」

「モデルガンはあるけど、本物は無いな」


日本じゃ銃は一般人が持ってることは普通はない。


「そっかでもあやめ、武器はアレしか持ってないけど、これ一応持っておいたら」

「そうだね、じゃあそうするよ。でもこれ弾は何処に入れるの?」


この世界で丸腰で生きていくには危険なので貰うことにした。ただリボルバーとかオートマならともかく、こんな変な銃はどう扱えば良いのだろう。


「そいつは弾を魔法で造って撃つみたいだから、弾を必要としないそうだ。この説明書を読みな」


ゴ〜ン


鐘の音が響き渡る。


「もうこんな時間、そろそろ帰らなきゃ」


ピューパを箱にかざすと、光の粒になって吸い込まれる。


「そうかまた来な。あと出る時に看板を閉店にしといて」

「えっもう食べるの、まだ昼だよ」

「今日はもう客来ないって」


店の看板を閉店にして、店を出て直ぐに店内から破裂音が聞こえる。

 振り返ると店内はオレンジ色のポップコーンで見えなくなっていた。


「なにこれ」

「いつもの事だから気にしなくていいよ」


メアリーは気にも止めずに馬車に向かう。


その頃、あやめ達がコニーの店に行っていた時、盗賊を捕まえた賞金を受け取りにギルドに着ていた。


ギルド換金所


「20万カロットになります、お確認ください」


楕円形のドーナツの硬貨をトレーに置いて渡す。確認しピューパに仕舞い、ギルドを出ようとする。


「よお、プロメ」


入口の近くにあるテーブルに座っている、少しふくよかな男が話し掛けてくる。


「何かようか?」

「相変わらず無愛想だな、せっかく良いこと教えてやろうと思ったのに」


酒を飲みながらそう話す。


「まぁいいや、さっきペニーの店の前を通ったらよ〜、中に黒髪で人間の娘が居たぜ。確か探してなかったか」


チーズを摘む。


「ああその話ならもう終わったさ」

「あの子がそうか、なんにせよ見つかって良かったな」

「…ああ」

「あん、なんか言ったか?」

「いや」

「そうか、引き止めて悪かったな」


話を終わらせて馬車に戻る。


「帰ったぞ」


中に入ると青年とあやめ達が血だらけで倒れていた。

クラン村

星界樹と呼ばれる木の下にある村でジャガイモが名産物


ペニー・グッドマン 種族;バ二ーホイップ 身長110cm 毛色・栗色 年齢38


クラン村で武器屋を経営している。


爆槍爆砕バーストピアス

加工した隕鉄を槍にした武器で一度使用するごとに弾を一発消費するが威力は絶大なり、ただこの弾はメーカーが倒産したので入手は難しい。


ポップキャロル

巨大な人参で葉を引っ張ると主根が破裂してポップコーンの様なものが出る。糖度がすごく高い。


ケルシー村

最初に居た村で近くに魔力濃度の高い森がある。

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