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7話 お出掛け

声の主はスキッドだった。


「どうしたのスキッド」

「アビーの奴が書類が届いたから呼んで来いだと」

「分かりました。でもプロメさんがまだ帰ってきてないですけど」

「プロメなら今、アビーの手伝いをしてるよ」


アイビーさんの家に向かうと家の前に一台の豪華な馬車が停まっている。


「あら来たわね、早く終わらせて買い物に行きましょうか」

「えっとプロメさんは?」

「プロメならそこに居るわよ」


馬車の側で誰かと何かを話している。


「しばらく掛かりそうだから今のうちに書類を終わらせるよ、ほらさっさと」


背中を押されて家に上がる。


「じゃっこれを読んで名前書いてね」


学校の書類を受け取る。内容は学校内での規則で、異種族間での差別や身分制度が禁止と書かれている。あとは学寮やギルドの報酬の説明などが書かれている。

 要するに身分と種族で差別を禁止していることと、学寮制で仕事をして学費を稼ぐらしい。


「あとこれにも名前を書いてね」


 渡された高そうな紙にはプロメさんの名前が書かれている。


「何の書類ですか?」

「これは養子縁組の書類よ。学校に入るのに未成年の人間で親族とか居ないと、色々と都合が悪いことがあるから書いておいて損はないわ」


いざ、書こうとするが手が止まる。


「どうしたの?」

「いえ、リーファス文字で自分の名前をどう書くのか分からなくて」

「それならあやめちゃんの国の文字で良いわよ。そのペンで書くと勝手に変換されるから」


日本語で自分の名前を書くと文字が七色に輝きリーファス文字になる。


「はーい、じゃっこれを提出したら学校に入学出来るから、必要な物を買いに出かけるわよ」

「買い物ですか?」

「ええ、服とか文房具が必要だから買いに行くの。あっち着いた時に手配していた馬車がさっき到着したところだから、それに乗って行くわよ。私は片付けたら直ぐに行くから先に乗ってて」


私達は家の前に停めてあった馬車に向かう。

馬車に寄りかかってナイフの手入れをしているプロメが見え、あやめ達に気づくとナイフをしまって話かけてくる。

 まだ出発まで時間あるから家からお菓子など持って来たらどうだと言い、メアリーは元気良く家に取りに行く。


 私はプロメさんに先に入ってろと言われ、扉を開けて中に入るとテニスコート位ありそうな広さで、高級ホテルのスイートルームの様な部屋だった。中と外観を比べてその光景に驚いていると、いつの間にか大量の荷物を抱えて戻ってきたメリー君が説明してくれた。なんでも空間を広くする魔法らしい。

 部屋の奥にある小さな窓を開く操縦席に繋がっており、帽子を深く被った背の低い御者が見え、その奥の方に角が生えた白と黒色の馬が2頭見える。


「白い方はユニコーンだって、分かるけど黒い方の馬は何?」

「うん?あれはバイコーンだね」


私達の話し声に反応したのかユニコーンがこちらの方に顔を向ける、綺麗な…


「あらやだ〜なんってかわいい子達なのかしら〜アタシ達が快適な旅を提供するからよろしくね」キラッ


ハスキーボイス話しかけてくる。


「おいおい黙ってろよ。客が引いてんじゃねーか」


バイコーンも喋る。


「お黙りなさい小娘、アタシは話したい時に話すの。それにアンタはただでさえ無愛想なんだから挨拶くらいしなさい」

「うるせぇなクソジジィ、だいたいテメェは」


窓をそっと閉める。


「この世界の馬はみんな話せるの?」

「まぁ大体喋るよ」


あまりの衝撃に疲れたので高そうなに寄りかかる。扉を開ける音がするとプロメがやって来た。


「さっき家の戸締りしてきたがアレが無くなっていたがどうした?」

「アレ?ああ、EFならこの中に入ってます」


腕を上げ、デバイスを見せる。


「そうか、ならアレは町で出すなよ。目立つからな」


意外な事に驚く様子もなく注意だけされた。


「お待たせ〜」


続けてアイビーも入って来る。


「じゃ、出発!」


ガタッ、部屋が少し揺れ、馬車が動き出したのが分かる。


出発してから少し経つとアイビーさんが窓を開いて手招きをしてくる。私とメリー君は窓の外を覗くと村がだんだん遠く離れていき、村全体を囲む様に森が広がっているのが観えた。


しばらくして森を抜けると草原が広がっていた。


背の高い木は生えておらず、ただ地平線だけが広がっている。遠くの方にはドドドと響く何かと、凄い土煙が見える。


「うーん、あれはマッハドードーだな」


マッハドードーよくわからないけど、なんか速そう。


「あの鳥って凄い速さで突っ込んで来る危険な鳥?」

「えっ何それやばそう」

「ああ、まぁこの距離なら花火でも打上ない限りバレないだろう」


そんな話しをしながら遠目で土煙がだんだん小さくなり離れていくのが分かる。しばらく景色を観ながら過ごしていると、馬車が徐々に減速し停止する。


「なんだ、トラブルか」

「いえ、あれを見てください」


全員で窓から御者が指を指す方向を見ると、道から外れた遠くに大きな木が見える。


「あの木がどうかし…誰か吊るされてるな」

「どうしますか?」

「私が行ってくる、罠かも知れないからアメリーもしもの時は頼む」


プロメが周りを警戒しながら木に近づく。

 吊るされていたのは黒髪の人間の青年だった。木の周りには吊るしている縄以外に目立った痕跡は、木から離れるように点々と足元の踏みつぶされた花が少し離れた所で突然消えているくらい。


「ほぉ、なるほど」


降ろそうと縄を解こうとした時、プロメの背後から…


「オラッ」


男が棍棒で襲いかかって来るが。


「ウゲッ」


男を回し蹴りで蹴り飛ばす。


「やはり擬態か」


棍棒は砕かれ、男は動かなくなる。すると周りから。


「カマセがやられた!」

「おい、なんでバレた!」

「知らねぇよ!」

「相手は一人殺っちまえ」


男の仲間らしい連中が突然、姿を現す。


あやめ視点


「えっ今あれ何処から」


さっきまで木の周りには誰も居なかったはずだが、あの男達は突然現れた様に見えた。


「あれはレプルだね、周りの景色に擬態する事が出来るEFだよ」

「まぁ、動くと空間が歪んで違和感があるからじっとしてないといけないけどね。ちなみにこんな感じ」


アイビーが何もない空間を掴む仕草をすると、空間が人の様な形に歪む。


「うお」


軽々と持ち上げ、そしてそのまま窓の外に投げ飛ばす。プロメの真横まで飛んでそのまま地面にめり込む。


「ええ…」


そんな光景にあやめはドン引きする。



マッハドード

鶏より大きい丸い鳥で足が速い、そして足音が辺り一帯に轟ので何処に居ても直ぐに分かる。

肉は固いが蜂蜜と煮るとパリパリになって美味しい。


リーファス文字

文字と言うよりは模様で、例えこの文字を知らなくても特定ペンを使えば自動で変換される不思議な文字。


レプル

EFの一つで擬態能力を持つが少しでも動くと空間が歪んでばれる。

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