番外編 神谷死す
俺の名は神谷光輝、こんな漫画の主人公の自己紹介みたいな事をやってるが、そんなことこの際どうだっていい。何故なら俺は今…。
「ダンプカーに追われているからさ!」
ブブー
ダンプはクラクションを鳴らすが停まる気配がなく、俺が道をそれても追ってくる。どうやら本気で殺す気らしい。
どうしてこうなったのか、それは今から2時間前の事だ。
「ふふ~ん♪」
俺は今日発売の新作ゲームソフトを買ってその帰り道の途中、子供がトラックに轢かれそうになり俺は柄にもなく咄嗟にその子を助けてしまった。
子供に怪我は無かったがゲームソフトは壊れてしまった。まあ命には変えられないのでまた買う事にして、子供に注意し帰ろうとするとあのトラックが戻って来た。
「無事か確かめに来たのかな。俺が言っておくから、ほらお母さんのところに行かないと」
子供をこの場から遠ざけると、トラックはスピードを上げた。
「あぶな!」
狭い道を猛スピードで突っ込んでくるトラックを間一髪で避ける。
そして避ける際に運転席を見たが誰も乗っていなかった。
「なんだあのトラック!」
それから追ってくるトラックをなんとか撒いて、近くの川の橋の下で隠れている。
「ここなら見つからないはずだ」
スマホで警察に電話を掛けようとすると、川から大量の気泡が出て、川からトラックが出てきた。
ブォン
「うそぉ!」
急いで崖を登り近くにあった廃墟のビルに潜れる。
そして屋上まで登り周りを警戒する。
「ここなら流石に」
一休みしようと屋上の真ん中で寝そべり、警察に通報する。
「はい、こちら〇〇警察署です。事件ですか?事故ですか?」
とりあえずトラックの事を話したが、パニックを起こしていると勘違いされた。だが助けには来てくれることになった。
「後は待つだけだ」
落ち着くように空を観ていると、何か遠くに浮かんでいた。
「なんだあれ?」
段々こちらに近付いて来て鮮明になり、あのトラックだと分かった時には遅かった。
ブォンブンブン
最後にトラックが頭上に落ちてきたのを皮切りに視界は暗転し、目が覚めると白い空間に居た。多分俺は死んだのだろう、だが実に現実味が無い終わり方だった。
「そこのお主」
この空間を人に説明するならば、背景が描かれていない作画コストが低そうな漫画のコマと言ったところだ。
これだけ真っ白だとインク代も少なくて済むだろう。
「お主ちょっと良いか?」
「なんでしょうか?そこの胡散臭そうなお爺さん」
「お主、我に向かってその態度はなんだ。我を誰だと思っている!」
「こんな場所でそんな古代ギリシャ人みたいな格好してたら大体予想付きますので」
よくある小説で死ぬ運命では無かった人間が死後、謎の存在が出てきて凄い力と共に転生するやつ。
普通の人間ならばこの状況は自分の妄想か夢として終わらせるだろうが、これは現実だと確信をした。
そうするとあのトラックは察するに異世界転生トラックなのだろう。
「それで何か御用でしょうか、転生して世界を救えとかだったら遠慮しておきます」
「いやあの時、死ぬ運命に無かったお主を生き返らせてやろうかと思ってな」
「では早速お願いします」
即答する。
「そうかでは魔王を討伐すればお主を元の世界に生き返らせてやろう」
胡散臭い爺が指を鳴らすと神谷の足元に光の輪が現れる。
「おい爺ふざけんな!」
爺を殴ってやりたいが輪の外に出ることは出来ず、暴言を吐くことしか出来ない。
「お主に力を与えてやろう。この力を使えば魔王の討伐は容易いはずだ」
爺が手のひらから光を飛ばすと神谷の身体の中に入る。
「お主には無限の魔力と剣の造成を与えた。では行くがよい」
「死ねクソ爺!」
最後にクソ爺に対して中指を立てると一瞬で周りの景色がガラリと変わった。どうやら本当に異世界に転生?転移したようだ。
広い青空の下、草原の上に立っていた。
「クソッせめて人里に出せや、何処だよ」
一人草原に佇み、周りには木が生えている程度で人の気配を感じられない。
「はぁ〜歩くか、その内誰か通りかかれば良いな」
こうして神谷の辛く厳しい旅が始まった。
「でもフィクションだと思ってた世界が存在するとは…やーべ楽しくなってきた。おっ!」
神谷はこの辺り盗賊に注意と書かれた看板を見つけた。
「よーし早速特典試してみよ」
この後本編に続く。