俺ターン、俺は熟考を発動、伏せカードを3枚置いてターンエンド
(グヌぉ、勝てねぇ。出が遅いのか、技量が足りてないのか、そもそも弱いのか)
現在一人で大の字になって試練の場で有る円の中に寝っ転がって、悔しがっている。何回負けても悔しいものは悔しく、現状の明度が上がるにつれて壁の高さが浮き彫りになる。
(いや、どんな初動をしても今日の感じからいくと合わせられるな。)
強くなっているのは自分だけでは無い。オヴェリスクも強くなっている。
(むしろ『俺の手札を把握してきている。』の方が近いか。より最適に俺に勝てるように最適化されていく。)
以前は、召喚自体は出来ていた。
今は、召喚すら儘ならない。
以前は、殴った返しに投げ飛ばされていた。
今は、初動の返についでとばかりに投げ飛ばされる。
以前は立ち上がる余裕があった。
今は立ち上がる余裕すら無い。
他の手を取ってもそうだ、逃げれば詰められ、攻めれば流され、受ければ崩される。
俺の純粋な成長速度を上回る、単純な最適化。
(このままだと、俺が今後強くなっても無理かもな)
単純なリソース差と最適な対応。そもそも五分でない勝敗方法にも関わらず、圧倒的強さを見せ付けられると辛いものがある。
(さて、どうしたものか)
目を開けて空を見上げる。正解が何か分からない。
(頭が痛い。こんなの生前、出鱈目に強いヤツと戦って以来か。・・・要は勝てばいいのか。待てよ?全く、自分でよく言ってることを忘れるとは情けない。視野が狭くなってるな。『答えは一つではない』。そもそも、尻餅つかせるか、範囲外に押し出せば良いんだよな。無理に正面から戦う必要はない?ほう?)
要は地雷デッキを組めばいいのだ。
地雷デッキとは、初めて見るうちは想定を上回る殺傷力を誇る場合が多く通称初見殺しと言われる場合が非常に多い。対策無しに動くと致死の一撃を受ける暗器の類が部類としては近しいものがある。しかし、地雷デッキにはまた別の意味合いもある。
太陽はちょうど中天に差し掛かった時にそんな天啓が舞い降りてきた。直後に、グーと腹が鳴り腹が減ったと体が唸る。
「あ、飯の時間だ」
(まぁた、カロリーなんとかの親戚みたいな食いもんだろうけど、栄養価に偏りが有るようには感じないんだよなぁ。いい加減飽きたと言いたいけど他に食えるもんなんて爺さんがたまに釣る魚くらいだし)
(それはともかく飯が終わり次第準備に入ろう。封印術自体は自分で使えるから、後は・・・)
封召魔術とは、魔法現象から生物、非生物問わずに手のひらサイズの紙一枚で封印、また同じ紙で封印したものを呼び出せる魔術である。
さて、ここで単純な問題だ。規格制限は存在するのか。山の如く巨大な巨獣を、見渡す限りの高原を、天を覆うほどの嵐を。そう言ったモノを封印出来るのか?質量の限界は?熱量の限界は?魔力の限界は?結論を言おう。答えは、『現実的には限界は有る、計算上は限界は無い』だ。
では、封印の手順について考えよう。
第一に封印する対象を術者の視界に収める。
第二に封印する為の召喚紙を術者の意識出来る場所に置きます。この際、対象と召喚紙の距離は出来るだけ縮めておく事をお勧めしますが、召喚紙が破壊されるとそもそも封印が出来ないのでご注意ください。
第三に封印の術を起動します。この際召喚紙から光の円が現れそこから対象に魔力で構成された鎖に見える封印術の末端が目視できます。その後末端が、多少に絡みつき光の円に引き込んでいきます。ここでの注意は、対象に抵抗の意識がある場合、引き込む為の出力が足りない場合がある事です。その場合、封印術に込める魔力の出力を向上してください、引き込む出力が上がります。
第四に、きちんと光の円に引き込んだ事を確認し、封印を解く際の合言葉を決めてください。最悪、封印の触媒そのものを破壊すれば、ちょうど袋に入った中身が溢れ出すように、封印されたものが出てきます。
だいたいこんな感じだ、この他にも細かい注意点、それこそ内容物次第では、封印を維持する為の費用が嵩む点や、封印は破壊しない方が利点が多い点などなど細かい事は多い。
要は封印する為の召喚紙が触媒としての限界がある事。そして、引き摺り込む為の魔力に限界は有る。故に現実的に限界があるわけで有る。
俺は召喚紙を3枚作成した。といっても試練に挑む直前に、だ。
(維持費がデカすぎて防護術の上限が削れるから仕方ないね。)