俺は、学習を発動、それにチェーンして運動をさらに発動
意識が目覚めて早や数か月
(がんばれー、俺いけるって)
うごうご体を動かし、体を無理やり動かして手足を連携させて動く。一般的にハイハイと呼ばれる運動だ。全身の筋力が非力でとにかく最初のうちは全然動かない。しかし
(疲れるし痛いし。でも外確認したい。ここはどこなんだ。今日こそはあのブロッカーを突破して外を確認してやるんだ)
この部屋は俺のベットというべき、かごと出入口が一つあるだけで、ほんとに物がない。床は木張りのフローリング、ささくれもなく俺がハイハイで動き回っても膝小僧が痛いという問題しか存在しない。
(いや、問題だわ、俺が普通の子供だったら、知育に影響が出るわ)
老人は、日にちょくちょく顔をだし、俺の面倒を見てくれる。最初見たときのカサカサ顔からは想像できない、表情の変化を俺に見せてくれる。ゲームで鍛えられた俺のポーカーフェイスを打ち破った『居ない居ないばぁ』は、見事なものだった。そうこう数か月もしていれば、所々わかる単語も出てくる。
例えばそう、俺の名前だ。
(シヴか。苗字じゃないよな)
なんてことを考えながら、ハイハイでこの部屋の出入り口へと向かう。出入口には扉はついていないのだが、立ちはだかる守護者はいるのだ。
(今日こそ突破させてもらうぞ、オヴェリスク)
エジプトで神殿の塔を意味する、名前を勝手につけて心の中で読んでいるデッサン人形。個人的に最高速度を出したとしてもがっちり俺を確保し、部屋の中にころころと寝転がしながら返却する。再誕史上最強の障害であるあいつは、俺の最高の遊び相手だ。
(あ、やべ、催してきた)
一時休戦のために横になる。
(あー、早く爺さん来ないかな。おしめの交換は爺さんじゃないとできないんだよ)
そんなこんなで更に数か月過ぎ
俺は二足歩行とタドタドシイ言語を手に入れた。
そんな俺は今、イラストが描かれたカードを手に取ってそのカードと睨めっこしている。このカードには描かれている事が二つイラストと文字だ。生憎文字はまだ読めないのでイラストを観察。
(剣、剣だ。なんかビームみたいな物が切先から出てるけど。わかんねぇなぁ、サイズがどうこうとか書いててくれればまだ分かるかもしれないんだけど。こう言う時は)
「ジージこえ、なぁに?」
「ん?、おおこれはな、魔剣の一種でな。出力さえ足りていれば神も殺せる魔法の武器じゃ、名を激流という名剣じゃ」
(魔剣とか神とか何の出力とか単語単語を繋ぐ言葉に専門用語を使うのはやめていただきたいんだが)
「へー」
と適当に相槌をうつ。ジージとは老人、つまり世話をしてくれていた人なんだが、どうやら祖父らしい。祖父という単語の意味を何とか問いただし、自分の父と母について聞いてみたがはぐらかされた。それはそれとして、俺が先ほど聞いたコレとは、祖父の魔法…魔術か、魔術で使う道具『召喚紙』について聞いている。俺がどうこうしても何も起こらないと踏んでいるのか、何のためらいもない様子。むしろ俺が、持って行って話をしてくれることの方がたのしいようだ。
ちなみに魔術と魔法は別物らしい、祖父に「ジージのまほう見せて」とおねだりしてみたところ。祖父は一言
『魔法は精霊が行う魔法、魔術は精霊なしに行う同じ結果じゃよ。どれワシの魔術で菓子パンでも出すかの』
と零したことがある。この時俺の心は、依然テレビで見たカーニバル並みのどんちゃん騒ぎになった。俄然やる気が出てくる。
ところでここの立地だが、絶海の孤島だった。最初は何か月も祖父としか顔を合わせないから誘拐を疑い。色々聞いてみたら。
一度外に連れ出してもらえた事がある。庭先は三歩も進めば海だったが。
(どういう立地だよ設計ミスだろ。移動が不便すぎるわ。あれか?空を飛べるから要りませんてか?頓珍漢も体外にしろ)
家の外は、庭らしい庭もなく、すぐに海といったところに二階建ての一軒家だ。大工さんすごいと思ったが、もしかしたらこれも祖父の召喚の一種かもしれない。個人的に謎は深まるばかりである。
チェーンは逆順処理で解決