その女騎士アヘるべからず。~24時間以内にオークと付き合えないと死ぬとか笑えない~
「んほぉぉぉぉ!!!!」
お決まりのアヘ顔ダブルピースでアヘリ散らす女騎士。
「……ハッ!? またやってしまった!」
彼女は極度のアヘリ症であり、僅かな幸福でアヘってしまう事から日常生活にすら支障をきたしていた。
「クッ……! このままでは…………!!」
彼女の周りでは次々と同僚達が男達とラブラブになっており、このままでは彼女だけが取り残されそうな勢いだった。
「…………かくなる上は……」
怪しげな折り込みチラシを手に、彼女は街へと出かけていった―――
―――その客は兎に角アヘり易く、ちょっとペンを渡すときに手が触れただけで「んほぉぉぉぉ!!!!」とかアヘりやがった。重症だなこりゃ。
「一日で良いのでアヘるのを抑えたいんです!!」
初めての依頼内容に頭を傾げ薬学書を片っ端から捲る。女騎士でアヘるのを止めたいとか初めてなんだが…………。
(……あ、あった)
アヘり止めとやらは割と昔から有る薬らしいが、如何せん調合した試しが無い。アヘは女騎士のステータスだからな……。材料は今手持ちにある物で事足りるが、作り方が面倒だな…………。
「えーっ……と? コレと……コレと……混ぜて……煮て……焼いて……潰して……っと」
とりあえず何かしらの塊になったがこれで完成なのか?
「で、出来ましたか!?」
──パクッ!
「おいコラ! 勝手に食うな!! 出せ!!」
──ゴックン♪
「あ……」
「すみません。呑んじゃいました」
結構多めに作ったんだが、このアホ女騎士がたった今一口で全てのアヘり止めを食いやがった……大丈夫なんだろな?
ペラッと薬学書を捲ると、そこには『アヘルゲンを相殺するノンアヘルゲンを大量に含んでいるため、一度に大量摂取するとアヘノイローゼとなり24時間で死に至ります』と隅っこに小さく可愛らしい文字で書いてあった。
「よし、これでティムに告白出来るぞ……!!」
「……え? 何だってぇ!?」
女騎士が嬉しそうに意気込んでいるが、私の脳内はそれどころでは……無い。
「アヘらずにオークのティムに告白出来るんだ! きっと上手くいくさ!!」
「はぁ!? ま、待て待て……!!」
待て、一旦落ち着け!!
このアホ女騎士はアヘ顔を止めてまで告白をするつもりなのか!?
いやいや待て待て。そもそもこの国では【アヘ顔無くして告白無し】と言われるほどに告白にアヘ顔は付きものだ! アヘ顔を可愛らしく思ってカップルが長く続くのだ! それを、お前……!!
「これでアヘ顔不細工世界一と言われた私でも安心してティムに告白出来ます! ありがとうございます!! もしフラれてもスッキリです!!」
「…………」
滅茶苦茶意気込んでる女騎士に、私はこれから世にも残酷な真実を告げなくてはいけないと思うと、とても胸が苦しい……。
「すまない…………フラれたら……死ぬ」
「フフ、初デートは~…………へ?」
「いや、フラれたら……君は死ぬ」
「え? 何でぇ……!?」
取り乱し始めた女騎士の肩に手を置き、私は真実を語る…………。
「この薬はアヘを打ち消すための成分が入っている。だからアヘ成分が入らないとアヘ値が下がり過ぎて死んでしまうんだ…………」
「…………ハハハ……何言ってるんですか?」
どうやらこの女騎士は現実を直視出来ないタイプらしい。可哀相に……。
「糖尿病とそのクスリの関係と同じだ。血糖値が下がる薬を大量に摂取した君は、糖を大量に摂取しないと死ぬ……だろうね」
「そ、そんな!! 何とかならないんですか!?」
「告白を成功させるしかない」
「それじゃあ告白が成功する薬を下さい!!!!」
「……良いけど…………高いよ?」
私は棚の隠し引き出しから怪しげな木の実を取り出しニヤリと笑ってやった。アホ女騎士も突き抜けると笑えてくるものだ―――
―――彼女との待ち合わせ時刻より三十分も早く到着してしまった。我ながら挙動不審だとは思うがソワソワせずには居られない。何故ならば今日は彼女と食事をした後に夜景の綺麗な丘へ誘うと決めているからだ。そこで彼女に告白する。彼女はアヘってくれるだろうか……?
「あれ? もう来てたの!? ゴメン、待たせちゃった!?」
「大丈夫、今来たところだよ」
普段は隊の鎧姿しか見ないが、休みの日は女の子な可愛らしい私服でお出かけする彼女に僕はメロメロだ。このギャップがたまらない。
「もうお腹空いてる? 今日は君の好きな炒飯のお店を予約してあるんだ!」
「そうなの? 嬉しい♪」
…………あれ? いつもなら『んほぉぉぉぉ!!!! チャーハンホォォォォ!!!!』とか言って暫くアヘ散らすのに、今日は涼しげな顔だ。これはもしかして……お店のチョイスを間違えたかな? ヤバい、何とかして彼女のご機嫌を取らねば……!!
「そ、そうだ。まだ予約まで時間あるから少し散歩しないかな?」
「ええ」
それから暫く野原を歩いたが、彼女は実に冷静沈着で仕事でも見たこと無いくらいに落ち着き払っている。普段なら鳥や花でアヘりまくっているのに……!!
このままでは告白は失敗してしまう……! 何とかして……何とかして良い雰囲気に持っていかねば!!
予約していた炒飯のお店に入り、こっそり食後のパフェを頼む。これで堕ちなければ今日の告白は止めておこう。きっと何か出かけに悲しいことがあったに違いない。
案の定炒飯を口にしてもアヘる事は無く、黙々と食べ続ける彼女。
「お待たせしました。ジャンボパフェでございます」
店員さんが運んできたのは彼女の顔が見えなくなる程に大きなガラスの容器に盛られた生クリームとフルーツの山。
(うん、顔が見えないからアヘッてるのか分からない…………)
痛恨のミスを悔やみつつパフェの横から覗いてみると、彼女は「美味しい美味しい」と言いながら普通の顔で食べている。
(…………アヘらせたい)
僕の中に潜むオークの本能が何やらうずうずとしだした。
それから彼女が喜びそうな場所へと出かけた。服やぬいぐるみをプレゼントしたり水族館に行った。しかし彼女は決してアヘる事は無かった。もう告白とかどうでも良くて彼女をアヘらせることに全神経を集中させていた。
水族館から出ると辺りは暗くなっており僕はハッとした。
(そうだった、夜景の見える丘で告白する予定だったんだ……!)
すっかり忘れていた当初の予定を思い出し、慌てて彼女の手を掴み走り出す!
「…………」
「最後に二人が出会った丘に行こう! 夜景が綺麗だよ!」
普段鍛えている彼女は丘まで走っても平気だったが、運動も陵辱もしていないダメオークな僕は息が上がりヘロヘロだ。
「つ、疲れた…………」
「大丈夫?」
水を差しだしてくれる彼女。そんな気遣いが嬉しくて愛おしい。
丘から見える夜景はとても幻想的で、現実の営みを遠くから見つめ、まるで幻想的な光景に僕は来て良かったと思った。
「綺麗だね……」
「ええ……ほんと」
「あ、あのさ……」
「ん?」
「今日はアヘってなかったけど…………どうしたの?」
「…………」
「何処か調子悪いの?」
「……ティムは私のアヘ顔……どう思う?」
「…………どうって……す、好き、だよ?」
「―――!!」
彼女の顔が今日一番明るくなり、僕はこれから彼女に告白することを決意した―――
―――まさかティムにアヘ顔が好きと言われるなんて思ってなくてあまりの嬉しさにアヘるかと思ったけど、流石は薬の効果。アヘの鱗片すら出て来ない。いやいやアヘってもらっちゃ困るんだけどさ……。
「き、君のことがずっと…………」
ティムの瞳が夜景で一段と輝きを増し、まるで夢にまで見たプロポーズみたいな台詞が…………
「ま、待って―――!!」
思わずティムの口を塞ぐ。ヤバいヤバい、肝心なことを忘れてた。
「ふが? ふがふがふ?」
「ううん。私から言わせて?」
まさかアヘ顔不細工ウーマンの私がティムと両想いと思わなくて高い薬に手を出してしまったが、まぁ仕方ない。事はさっさと済ませよう。
「ティムが好き! 私と付き合って下さい!!」
「こ、こちらこそ…………!」
──ガッ!
月に向かって高く拳を振り上げる。
大きく息を吸い、一言。
「ヨッシャーーーー!!!!」
「!?」
ティムが目を丸くして戸惑っているが、私の頭の中は次の課題でいっぱいだ。ティムに背を見せポケットから薬包紙を取り出した。
「ちょっとタイム。今別な薬に手を出すから……」
クッソ高い告白の薬の副作用を打ち消す薬の包みを開ける。コレを飲まないと私は後数時間で死ぬらしい……。ちょっと劇薬過ぎない?
──カサカサ
「…………は?」
薬包紙を開けると、そこには小さな文字で『告白が成功する便利な薬があるかよバーカ!』と小憎たらしい文字で書かれていた。
「…………」
「ど、どうしたの……?」
私は静かに振り向き、ティムにお願い。
「ごめん、手を握っても……いい?」
「え? あ、うん……」
──きゅっ
「…………足らん」
流石に手を繋ぐくらいじゃダメか…………
「ハグして……?」
「え? う、うん……」
──ぎゅっ
「…………いまいち」
ハグでもダメか…………
「キスミー……」
「へっ!?」
「キスをはよ!!」
「は、はいっ!」
──ちゅっ
「もっと気持ちを込めて!!」
「は、はぃぃぃぃ!!」
──ちゅっ
「手は肩に乗せて!!」
「ハイ!!」
──ちゅっ
「なんだその雑なキスはぁ!? 私がアヘるまで帰さねぇからな!!!!」
「ひっ! ひぃぃぃぃ!!!!」
──ダッ!
「あっ! 待てっ!! ティムコラァ!!!!」
「助けてぇぇぇぇ!!!!」
逃げたティムを追って私は闇夜を駆けた。
こちとら命がかかってるんじゃい!
逃がさんぞい!?
読んで頂きましてありがとうございました!
(*´д`*)