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声先

 

「なーんだ。あの2人いい感じじゃん」


 僕らの前を歩く2人、洸と戸田さんをみて悠里が言った。

 僕と洸が話をしてから2週間。学校生活にも下宿での生活にも慣れてきたころ。最近では洸と戸田さんの2人で登校しているようであの2人の距離は少しずつ縮まっているようだった。


 サッカー部のホープとマネージャー。おまけに美男美女。側から見てもお似合いだと思う。


「悠里、戸田さんに何か言ったの?」


「うん、早く行動しないとあのイケメン他の子に取られちゃうよーって」


「やっぱりそうか」


「涼子が少しだけ積極的になって、こっちも少しだけど、梶浦くんがそれを受け入れるようになった。私たちはあの2人のキューピットになっちゃったね」


「たち?」


「そうでしょ。梶浦くんは少し変わった。涼子の気持ちを知ってて、梶浦くんとそんな話ができるのなんてゆずくらいしか思いつかないよ」


「さすが悠里。名探偵じゃん」


「まだまだだね。ゆずソンくん」


 悠里は得意げに言ってから照れたように笑う。実際、あの2人は僕たちが話し合ってから変わったような気がする。僕たちよりも前を歩く2人を見ながら悠里は続ける。


「あとは本人たちの問題だから私たちの出る幕じゃないよ」


「うん、応援しよう。2人を」


 それを聞いて悠里は「へえ」と以外そうな声を出す。


「なんか意外。ゆずってそういうのに興味ないんだと思ってた」


「興味とかじゃなくてさ。友達を応援したいって気持ちぐらい、僕にだってあるよ」


「ふーん、じゃあその友人たちと一緒に食事するのだけは断ってる理由、聞いてもいいかな」


「僕と一緒にいても楽しくないから……かな」


「それを決めるのは私たちじゃん」


 最近では少しずつ症状もマシになってきてはいる。それでも、食事中はひどい顔をしているだろうから、誰かに見せたいとは思えないし、僕だったらそんな人と一緒に食事をしたいとは思わない。


「ありがとう。でももう少し待ってくれる?」


「なんで今お礼を言われたのか全然わかんないんだけど。わかった、もう少し待つ。でももう少し待ってだめなら無理矢理引っ張り出す」


「随分乱暴な言い草だね」


「そりゃそうでしょ。私はこの4人の時間を大事にしたい。これはあの2人がこの先もっと仲良くなっても変わらない。そこにはゆずもいてほしい」


 そう言って真っ直ぐに前を見つめる悠里の目には多分、僕には見えないものが見えているような気がする。こんな僕でもせめてその真っ直ぐな悠里には素直でありたいと思う。


「悠里は優しいね。優しくてカッコいい」


「褒めすぎ。キモい」


 少しだけ頬を染めながら悠里は少し歩く足を速めた。

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