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故の愁。

作者: 神無月 詩音

(しゅう)】それは祭りの後の鎮まった気持ちとも言える情景

本来は人がいるべき処に訪れる静寂の瞬間


心惹かれるのはその一瞬


――ぁ。


微かな声でさえ耳へと擦りいる事が心地よい


どうしてこんなにも心惹かれるものか

そんなことはどうでもいい


だってこの瞬間この場所だけは私のもの

微かな呼吸、心臓の鼓動、衣擦れの音


故に その全てが自身の存在証明としているのだから


 夕暮れの暖かい紅色が差し込む 教室の片隅

並んだ机の表面を一つ一つ手でなぞりながら歩く


上履きと床が触れた瞬間 共鳴したかのように音を弾ませる


ふと 時計の秒針に目を送り 時をなぞる毎に命の経過を実感する

それと反比例するかのように過去の思い出も蘇る


故に愁。

教室の静寂は成長の実感



 終点時刻に近づいた 駅のホームで誰かを待つかのように立っていた

両隣のホームにも人影は見当たらない


ただ明かりだけが影を生み出すかのように降り注いでいる


足元から伸びたその影は今まで生きてきた時の長さを表すかのように

伸びてその頂点が闇へと交わる


故に愁。

ホームの静寂は存在の証明



 こんな日は生きてるうちにあと何度あるのだろうか

眠らない街とも言われる場所の交差点を横断していた

店も車も人も全て失ったかのような状況


空も錫色(すずいろ)に染まりより一層不穏な空気が漂う

不安はない かつてそこに人がいたという事だから


故に愁。

街の静寂は営みの痕跡

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