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第4話 悪巧みはモーニングの後で  Bパート

*****

佐村庵夫婦の自宅 リビング


「さて。悪の組織の構成員には、大きく分けて3つの区分があります。

 まずは、組織のボス、つまりは伊月ちゃんね。ボス以外にも、総統とか総帥とか元帥とか、Dr.、ドン、皇帝、闇の〇〇、(笑いの)神などなど。色々な呼称があるけれど、まぁ、やることは同じ。部下にあれこれ指示したり、でかい椅子にふんぞり返って高笑いしたり。送り込んだ怪人が負けたときは鼻で笑って、『ふん、しょせん奴は四天王最弱』って上から目線したりして。最期は、初期に比べてオーバーキル気味に強くなったヒーローに、採石場か自分の本拠地で爆殺される」

「爆殺!?」

「・・・冗談よ。簡単に言えば、組織の要。基本は本拠地を動かず、配下に指示を出すだけの立場」


 冗談に聞こえなかったんですが。というか師匠、あんた太公望や哪吒にオーバーキルされた経験者でしょうが!


「次が、ボスの取り巻きである幹部。参謀担当とか、技術チームのトップとか、あと、大きいお友だち向けの色気担当とか」

「え?そんなのも要るの?」


 ドン引きである。


「これが意外と必要なのよ。主にネットユーザーを味方に取り込むときとかね。・・・話を戻すけど。幹部に成れるのは、組織の最古参とか、戦闘員又は他の組織からの成り上がりってのが通常。まぁ、中にはエコヒイキとか親の七光(コネクション)りで幹部になってた子も居るけど、(ちらっ)」

「?・・・あぁ、一体、誰スノミアなんでしょうねぇ(ちらっ)」

「もうっ!ダッキ様も総帥も、いじめないで下さい!!」


 涙目になる四宮先輩を見て、愉悦にひたる私と師匠だった。


「最後が、実際に街で悪事を働く実行部隊。つまりは『怪人』と『戦闘員』ね。基本的には、『怪人』を部隊長に、10人前後の『戦闘員』で構成されるのがベスト。かつ、どちらもヒーローと戦う場合がほとんどだから、殉職率が高い。週に一回のペースで新人を入れるのが理想かな」


 言われてみれば、怪人ってしょっちゅう悪事を働く一方で、毎週ヒーローにぽこじゃか倒されてるっけ。求人倍率は高そうだけど、それは離職率と比例してるってこと。

 それなんてブラック企業?・・・あ、悪の組織だったわ。


「はい、質問です!『怪人』と『戦闘員』の違いは何ですか?四宮先輩、ディスノミアは専用コスチュームがあるのに、ファミリアじゃ『戦闘員』扱いになったみたいだけど」

「うっ、それは・・・」

「ディスノミアちゃんは自業自得のレアケース。確かに、『戦闘員』でも特殊能力が使える『逸般人』な場合があれば、逆にコスチュームだけで無能力者な怪人もいる。でも両者の違いはたった一つ、ボスの采配次第なの。鶴の一声で、構成員はヒラにも中堅幹部にもなれる」


 それって、いわゆる『ワンマン社長』という、ブラック企業の典型例では?・・・あ、悪の組織だったわ。


*****


 パンッ、と師匠は柏手を打って、講座を終了する。

「と、言うわけで。現在、『レッセフェール』は総帥であるセレニスキア(伊月ちゃん)以外、全部空席。なので最初に取りかかるのは、中核メンバーを揃えること。まぁ、手っ取り早い事に、ディスノミアちゃんが居るんだけど・・・」

「・・・確かに、先輩じゃ不安だね」


 うっかりヒーローに発信器を仕込まれて、アジトの場所がバレる、なんてヘマをした人だ。師匠じゃなくても、幹部人事は慎重になる。

 誰だってそうする、私だってそうする。


「だ、か、ら!いじめないでください!鬼ですかあんたら・・・ヴィランだったわ」

「そう落ち込まないで、先輩。・・・ええっと、『ディスノミアを、我がレッセフェールの最高幹部に任命します』・・・これで良い?」


 ヤタさんに確認を取ると、OKマークを返してくれた。


「イエース、タイムラグなく『V.I.P.』のデータベースに登録されまシタ。ディスノミア様は、戦闘員から最高幹部に昇格デスネ」

「うっしゃぁ!エリスボケゴラァ!」


 四宮先輩は、(どうやったのか)一瞬で自称カリュブディス(半魚人)のコスチュームに着替えると、汚い歓声を上げた。

 なるほど、本当に鶴の一声だ。

 要領を掴んだ私は、続いて師匠もレッセフェールに勧誘しようとする。

 が、すぐに断られた。


「申し訳ないけど、私はしばらくフリーランス、外部の協力者って立ち位置にしておくわ」

「え、なんで?」

「自分で言うのもなんだけど、ヒーロー陣営にもヴィラン陣営にも、私の名前は広まっているから。不必要な敵を作っちゃうわ」

「言われてみれば・・・」


 千年狐狸精、妲己、玉藻の前。どの名前も、悪役の代名詞としてどこでも通用する。今風に言うなら、スタートダッシュガチャでURを引くようなものだ。


「だから私を入れるより先に、実働部隊のヴィランを勧誘しなさい」

「戦闘員と怪人の勧誘、ですか?」


 師匠は頷くと、なぜか叔母さんの方を振り向いた。


「ねぇ、イオリ。今、無所属なヴィランで、イオリちゃんと気が合いそうな人材、あなたの方で誰か伝手ある?」

「伝手って、ヒロインにそれ訊くぅ?・・・まぁ、心当たりならあるけれど」

「あるの!?」

「あるんかい!?」

「あるのデスカ!?」


 私と先輩、そしてヤタさんの3人は、声を揃えて驚く。

 すると叔母さんは、しばらく迷うそぶりを見せるも、踏ん切りをつけるようにコーヒーを飲み干し、話す。


「私のネトゲ仲間だった男の子なんだけど。今、暗殺稼業をやってるの。彼に貸しがあるから、声をかければ二つ返事で応じると思うんだけど・・・」

「oh、アサシンですカ?組織が弱小のウチは、隠密行動が主となりマスから、丁度良いのデハ?」


 ヤタさんも太鼓判を押すほどの人材らしいが、叔母さんはどこか乗り気ではないようす。

 すると、その理由が師匠から明かされた。


「あぁ、レン君の事?確かに、スカウトするにはちょっと難易度高いわねぇ。なにせ・・・彼が居るのは、()()()だもんねぇ」

 


次回からは、拙作『ジャストヒット イレイザーズ』とのクロスオーバーとなります。

全編脱稿済みにつき、毎日17:00更新となります。

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