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第XX話 最終決戦!『正義』は我にあり

◎レッセフェール(laissez-faire:フランス語)

・「為すが(faire)ままに(laissez)」の意。経済学用語。

 『経済とは、国家や企業がコントロールせず、個人が自分のために自由気ままに活動すれば、自然と良くなるもの』という考え方。

 一般的なは日本語訳は、『自由放任主義』又は『神の見えざる手』


◎哲人王(φιλοσοφία(フィロソフィア) βασιλεύς(バシレウス)

・古代ギリシャの哲学者プラトンが、著書『国家』で提唱した理論。

 当時のギリシャで行われていた民主主義を否定し、哲学を修めた善人『哲人(フィロソフィア)』を王とする独裁国家こそが最良の在り方だと主張した。


*****

仮想西暦20XX年1月6日 早朝

東京都 ()()()()()()


 東京駅の東側。かつては『八重洲中央口前』と呼ばれる首都の玄関口の一つであった場所。

 しかしそこは現在、北は永代通り、南は鍛冶橋通り、東は亀島川を境としたメモリアルパークとなっている。

 四半世紀前、巨大生物災害で犠牲になった人々の鎮魂を祈念して造られた、広大な一面芝生のフィールド。そんな慰霊の場においてこの日、夜明け前から大勢の群衆たちが集い、東西2つの陣営に分かれて対峙していた。


 片や西方(にしかた)。崩壊した赤レンガの駅舎をそのままに、怪獣の遺骸を納めたドーム型施設を背にして陣取るは、色とりどりで多様なモチーフのコスチュームに身を包んだ、いわゆる戦隊ヒーローやヒロイン、ライダー等の出で立ちをした、正義の集団。


 片や東方(ひがしかた)。それに真っ正面から立ち向かう、全身黒一色の戦闘服に覆面姿の者が多数を占めつつ、合間に猛獣や異形の怪物の姿をした者も混じる、紛うことなき怪人と配下の戦闘員、すなわち悪の組織の大連合。


 両陣営とも、肩を並べあっているのは、普段は面識少なく、時には功を競り合う商売敵という間柄の者達ばかり。

 だが、新年を迎えてまだ6日目という今日この日、世界の命運を左右する決戦のため、双方の代表者によって集められたのだった。


 そして、発起人であるその2人は、両陣営の中間、公園の中央に置かれた慰霊碑の前で、対面していた。


「ふん、よりにもよって『ヒー(1)ロー(6)の日』を指定してくるとはな。敗けを認めたか?」


 筋肉がくっきり浮き上がる、所々に赤いラインが入った白タイツに身を包み、顔には金一色のマスク、肩からは、表が青で裏が赤いマントをなびかせる男が、目の前の敵を挑発する。


―ヒーロー管理組織『アズマバーエ』総司令官 

<哲人王>ジャスト・ジャスティス

 

『はんっ!自己中心的な解釈してんじゃないよ、このエセヒーロー。単に私の誕生日ってだけさ。プレゼントに、この国を頂くよ』


 爪先から頭頂まで、全身を黒い靄に包まれ、しかし腰のくびれと胸の膨らみから女性と読み取れる怪人は、加工された勝ち気な声で返答する。


『放置国家』を企む組織『レッセ・フェール』総帥

<月と影の女王>セレニスキア


 善と悪、ベテランとルーキー、マッチョな巨漢とスレンダーな少女。


 どこまでも相対的な2人は、最後に互いの主張をぶつけ合う。


「この世界には『絶対正義』が必要なのだ!人間は管理されねば、無秩序な破滅を招く!!適材適所に差配されてこそ、人間はその真価を発揮するのだ!」

『この世界には「自由放任」こそ最適なのさ!あんた達に管理されずとも、人は自然に秩序を築き、繁栄する事が出来る!!』


 そしてどちらからともなく、両者は拳を握りしめ、互いの顔面へ向けて振りかぶる。


「悪が秩序を語るなっ!」

「正義が圧政を企むんじゃないっ!」


ドォォォン!


 2つの拳が空中で正面から衝突する。2人の姿勢はそのままに、放たれたエネルギーが行き場を求め、風圧となって弾ける。それは地面をすり鉢状に抉り、土埃を舞い上がらせた。

 

 そして、主将同士で一撃が交わされたのを号令に、両陣営のヒーロー、ヴィラン達が参戦すべく吶喊(とっかん)し、駆け出した。


―絶対正義の為にぃ!―

―セネニスキアに続けぇ!―

―ヴィランどもに正義の鉄槌をぉ―

―ヒーローども!日頃の恨みを晴らしてやんぞぉ―


 朝の静寂を吹き飛ばす轟音と共に、ヒーローとヴィランは激突する。

 まさしく、世界の命運を賭けた一世一代の決戦。

 戦闘員が宙を舞い、ヒーローのヘルメットは砕け、『必殺技』に伴う色彩豊かな光線が随所で瞬く。

 

 しかし、この大事件の引き金となったのは、普通の一般人でしかなかった、1人の少女の受難だった。

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