その五 火の発見
メキシコの伝説
火の発見
伝承によれば、その当時テスココ地域はオトミ族が支配しておりました。
しかし、近くには太陽を崇拝するポポルカ族が居住しておりました。
一方、オトミ族は月を崇拝しておりました。
ポポルカ族は太陽が在りとあらゆるもの全ての創造者であると信じておりました。
彼らは魔術師であり、呪術師であり、火を発見した最初の人たちでもありました。
或る日、怠惰な男でどうということもないポポルカ族の一人が極めて乾いた一本の棒を取り、それを杖の形にしました。
棒のより貧弱な端を刃として、別の同様にとても乾燥している木片に打ち付けました。
すると、太陽の光線を発しました。
わけを考えずに、その杖をその木片に何回も叩きつけると、ついには、穴が開きました。
びっくりして見ると、この運動を行うと木の双方の端に火花が出ておりました。
このように繰り返して行っていると、とうとう杖は木が打ち合う火花そのもので燃え出しました。
このことはポポルカ族の間で大変な賞賛の的となりました。
統治者は大きな火をつくるよう、命じました。
たくさんの薪が切られ、その地域で一番高い山の一つの頂上に運ばれ、その全ての薪に火をつける作業が始まりました。
そして、煙のように火が発するのを見て、びっくりしたのです。
この知らせはオトミ族の耳にも入り、その驚くべき出来事に本当にびっくりしたとのことです。
しかし、同時に、その発見が他の部族に先んじられたということで恥ずかしく思いました。
それがはっきりとした命令無しに、あえてなされた理由を説明させるためにポポルカ族に大使を派遣しました。
というのは、それは唯一、オトミ族が出来ることでしたので。
しかし、ポポルカ族は臆病でも怠惰でもありませんでしたので、自分たちもオトミ族同様偉大な部族であると答え、さらにそれをなすことが出来るすばらしい特質があると答えました。
オトミ族は戦争をしかけ、ポポルカ族も防衛に努めました。
しかし、まさに戦闘が始まりそうになった時、オトミ族はポポルカ族に、本当にお前たちの神がとても力があるならば、何らかの印を示せ、と要求しました。
その印があるならば、その印の前に自分たちは服従するということも付け加えました。
ポポルカ族と三つのことを神にお願いすることを協議しました。
その一つは、遭遇した平原を家で満たすということでした。
魔法の力で、平原に家が現われたということが語られています。
この最初の要求において、それらの全ての家が消えうせ、全てが元に戻ったということも魔法の力で出来ました。
このことが全てこのように起こったと云われております。
二番目の願いは神が大勢の人を出現させ、自殺させることでした。
これもなされました。
その後、これら全てが終わり、全てが終わったことが請願されました。
三番目の、そして最後の願いは午後に太陽を捕まえることが要望されました。
これをするために、星の王様、即ち太陽に遇うまで一人の魔法使いが空中を飛びまわりました。
しかし、星の王様は長い顎髭で変装しており、彼にどこへ行くのかと訊ねました。
魔法使いは王様に答えました。
「捕まってくれ、とお願いをするために来たのだ。そうすれば、我々の敵は戦争で我々に恩恵を与えることとなっているのだ」
「わしを捕まえるだなんて」
と、太陽は答えました。
「それは不可能というものだ。わしは偉大なる神であり支配者だ。他の大勢の神々はわしの行く先々でわしに会いたいと希望しているのだ。それで、彼らがしていることを何なのか、彼らに会って見させるために行くことが重要なのだ。しかし、お前たちの敵を満足させられるように、より大きな評価が得られるものとして、わしが持っているわしの顎鬚を持って行け。他のもの全てのものより、わしがずっと大切にしているものをシンボルとして、おまえにそれをあげよう。そして、負けそうになったら、その邪悪なものたちにそれをぶつけるのだ。そうすれば、敵は一人残らず滅ぼされてしまうだろう」
このようにして、その魔法使いは太陽の顎鬚を持って帰りました。
それを見せると、オトミ族はそれまでそのようなものは見たことが無かったので、ひどくびっくりしてしまい、ポポルカ族に勝利を与えました。
- 完 -