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ニートの大冒険

作者: 大鳥居

 24才引きこもり。大学は卒業したが、就職で失敗した俺は実家に逃げ帰り、そして、引きこもりとなった。家から出ない生活は2年以上続いている。


 俺は、この世界に絶望している。

 見えない将来。老後を生きるためだけに、40年ひたすら働くだけの人生。

 そんなものはこちらから願い下げだ。


 異世界に行きたい。

 そう思い始めたのは最近のことだ。

 何気なく点けたテレビでやっていたアニメ。

 冴えない主人公が異世界に飛ばされ、そこでめくるめく冒険の日々を送っている。

 俺も異世界に行けば、今よりもっと上手くやれる。根拠なんて必要ない。異世界に行きさえすれば。俺は異世界で成功する自信があった。



 

 そして、その日は突然訪れた。

 

 寝ていた俺は目覚めるが、身体の自由が利かない。金縛りだ。

 周囲は真っ暗で、光を感じることの出来ない空間。

 遠くから声が聞こえる。頭に直接入ってくるような、そんな声。


 声の主は言った。


 『私は神。お前を異世界に送り込んだ。目が覚めるとお前は異世界にいるだろう。異世界での生活に困らないように、言葉はそのままでも通じるようにしておいた。装備がないと困るだろうから、お前が起きたらすぐに使えるよう、そばに置いておくから使うが良い。

 足りないものがある場合は、現地の通貨を用意しているから、それを使って整えるが良い』


 至れり尽くせり。さすが神様だ。


 「神様、ありがとうございます」

 俺は感謝する。


 しかし、俺は一抹の不安を覚える。

 そう、チート能力を付与して貰っていない。これがないと異世界に行く意味がない。


 「神様、俺にはどんなチート能力が与えられるんですか?」

 俺は肝心な事なので、勘違いされないようストレートに質問する。


 『もちろん用意している。だが、まだ物語の序盤だ。お前が異世界に慣れた頃に判明した方が盛り上がるだろう?』

 と神様。ニヤリとした表情が目に浮かぶ。しかし、残念なことに真っ暗で何も見えない。


 なるほど。神様の説明に納得したことで安心した所為か、俺は再び深い眠りについた。




 目が覚める。

 俺の横には服と通貨。神様の言った通りだ。

 俺は力強く頷く。


 装備に袖を通し、俺は外へ出た。

 新しい世界で、俺は冒険の一歩を踏み出したのだ。




 「我々に出来ることはここまでです。あとは彼がどう生きるかだけです」

 スーツに身を固めた一団は、初老の女性にやさしく声を掛けた。


 「あの子が自分から外に出るなんて、2年振りのこと・・・・・・」

 初老の女性は目に涙を浮かべる。 

 


 我々は引きこもりが外に出るための支援サービスを、これからも続けていく。




 そう、2年も経てば外は異世界と変わらないのだ。

良くある話(短編的に)

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