七話 神社の生活 初版
お久しぶりです。諸事情により、投稿が止まっていました。七話です。
目が覚めると、部屋に綺麗な朝日が射し込んで来ていた。うーん、今日もいい朝だ。今の時間が気になり、懐中時計を見てみると六時辺りを指していた。布団を脱いで、心地良い朝日を浴びていると、頭がすっかりとしてくる。その後、立とうとすると何かを踏みつけて思いっきり転んでしまった。足元を見ようと下を見ると緋袴が見えた。あっ、そういえば巫女装束を着て寝たんだった。すっかり忘れていた。袴の裾を踏んで転んだのか。……こんな失敗をするなんて、実際に頭はそこまで冴えていなかったみたいだ。
大きな音を出してしまったからか、彼女が急いでこっちに来た。朝一からビックリさせてしまって申し訳ないです。まだ朝も早いのに起こしてしまったなぁ。そう思いながら、頭を下げて謝っていると彼女は、気にしなくてもいい。といった感じで頭を横に振っていた。
その後、彼女をよく見てみると彼女の着ている巫女装束が昨日の物と違う。巫女装束のシワがほとんど無い。昨日の物も当然シワなんて少なかったが、着ているだけでできるシワが少しあった。つまり、もう服は着替えているみたいだし、おそらく彼女はもう起きていただろう。神社の朝は早いという話はかなり有名だ。
ということは、今から神社での仕事を始めるのかな。俺も、神社での仕事を手伝うよ。そう彼女に伝えると、彼女はとても嬉しそうに笑ってくれた。
それから俺は、彼女に連れられて神社へと向かった。彼女の家は神社の中にあるようだった。この位置にあるとすればここは、自宅兼社務所なのかな。参道に出て、少し下の方を見ると、大きな鳥居がある。そして参道にはたくさんの燈籠が山の木の中に道を作るかの如く並んでいる。木に囲まれて涼やかな燈籠の道を上っていると本殿が見えてきた。本殿は、全てを受け入れるかのように、ただ静かにどっしりと構えている。
そして、本殿の前にたどり着くと彼女から笑顔で箒が渡された。そうか、神社の仕事の基本、そう言われれば答えは掃除だからな。
そして、彼女と神社の掃除を始めた。ただ、彼女が掃除を始めると、今までの彼女が放っていた雰囲気とは打って変わった。
いつもの彼女はお淑やかで可愛い感じもある美人さんという感じだった。そして彼女の笑った顔は、柔らかくふんわりとした感じで可愛らしい。そして今のように働き始めた彼女は、凄く凛としている。当然可愛さもあるが、凛々しさと共にある可愛さである。
彼女の新たな一面も見られたことだし、俺もしっかりと気合を入れて頑張ろう。今のところこれくらいしか彼女に恩を返す方法が見つかってないからなぁ。そう思い、緋袴の帯を結び直して、ビシッと気合を入れた。
本殿の中は彼女に任せて、俺は本殿の前の落ち葉を掃いていた。少しずつ綺麗になっていく神社を見ていると、心も洗われるような気持ちになってくる。神社の掃除は意外にやりがいのような物を感じる。だが、いかんせんこの神社は地味に広い。これを彼女たった一人で全てをこなしていると考えると相当大変なはずだ。それも毎日毎日こなしているなんて普通の少女にはかなり堪えるだろう。よし、これからもここにいる間は毎日手伝おう。……泊めてもらっている以上、常識として当たり前の話だが。
三十分位すると、彼女が本殿から出てきた。彼女は俺の掃いた跡を見て、喜びを隠せない程に喜んでくれた。たかだか少し掃除をしたくらいでここまで喜んでくれれば、こっちとしても嬉しくなってくる。あっ、少し跳んだ。なんだか可愛い。……何を考えているんだよ、俺は。
その後、参拝道など、境内を二人で掃除した終えた後、本殿に入っていわゆる朝拝という御払いを彼女にしてもらうことになった。
本殿の中は綺麗に掃除されており、毎日彼女が一所懸命に掃除していることが改めて分かった。俺は特に宗教に関して、別に信心深い訳でもないのだが、本殿の中の空気は引き締まって感じる。巫女装束といい、この本殿といい、神社という世界は独特だ。この中の世界は、シンと静まり返っており、この特有の涼しい空気が体に染みてくる。この中にいる人や物、それに空気、全てと一つになるような、不可思議で幻想的なこの世界。少し変わったこの空気。俺は好きだな。
そして、彼女に御払いをしてもらう。今の彼女から出ている雰囲気も今の神社と同じ物だ。彼女が大幣を振る。心が静かになるような感覚、だがなんだか心地良いという感覚。世界と一体化するような感覚、だが自分はここに存在しているという感覚。やはり、ここは不可思議な世界だ。
あっという間に御払いが終わり、彼女と本殿の神前に座る。その後一礼し、彼女がよく分からない言葉を唱えだした。おそらくこの世界の祝詞だろう。ただ、何を言っているのか全く分からないのに、言葉だけは頭に入ってくる。いや、頭に響いてきているのか。この感覚は彼女とこの空気の特異性が原因なのだろうか、分からないな。彼女が祝詞を読み終えると、朝拝は終了した。
朝拝を終えると彼女の雰囲気がいつもの感じに戻った。神社での仕事の時だけにスイッチが入るのかな。いつもの調子に戻った彼女と一緒に家に戻った。ふと、時計に目をやると懐中時計は七時半を指していた。




