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兵器と巫女と  作者: 沙希
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五話 分かり合う方法

五話です。

 しばらくすると、彼女が紙とペンを持ってきた。そして、紙に何か絵を描き出した。なるほど、絵なら通じるかもと思ったのか。絵は、誰が見ても同じで万国共通だからな。

 そして、彼女の描いた絵にはご飯と思われる物が描かれていた。そして、俺の手を優しく引っ張り始めた。俺は手を引かれるまま彼女について行く。そしてたどり着いた先には美味しそうな夕食が置いてあった。

 とても美味しそうな和食が並んでいるちゃぶ台。食べてもいいのか、と彼女にジェスチャーで伝えようとした。すると、彼女は微笑んで、頭を縦に振ってくれた。この世界にはこんなにも親切な人がいるんだな。まるで聖人君子みたいな彼女を見ていると、何度でもそういう気持ちにさせてくれる。

 俺も人と会えた喜びで少し空腹感を忘れることが出来ていたが、死ぬほどお腹がすいていることに変わりはない。是非食べさせて頂きたいという節をジェスチャーで伝えると、彼女は微笑みながら何処かへ行ってしまった。何処へ行くんだと、少し不安になりしばらく戸惑っていると彼女が戻ってきた。


 あ、あれは、まさか、お茶。お茶だ、お茶じゃないか。俺が物凄く動揺している間にも、彼女は着々とそれを湯飲みに入れてくれていた。この世界にもお茶が有るのか。いや、お茶に良く似た完全な別物かもしれない。彼女に頼み、早速少し飲ませてもらった。この香りと味、これはお茶だ。間違いない。この世界にもお茶が有るのか。お茶に似た何かかもしれないが、この味ならば何の問題もない。この世界で生きる気力も少しずつ湧き始めてきた。


 そんなことを思っていると、彼女が畳に座るように促してきた。勿論促されるままに座った。机の上には、新鮮な野菜のサラダ、米と思われる穀物、味噌汁らしきスープ、猪っぽい肉の塩焼き、漬物が並んでいた。料理等にようなとかを付けているのは、彼女の料理が不味そうとかでは断じてなく、もしもここは別の世界だった場合は、同じものか分からないからである。ただ、次からは「ような」とか「ぽい」は省略することにしよう。味噌汁と肉、米からは湯気が立っていて、作りたてということが窺える。野菜も瑞々しくて美味しそうである。彼女の方も準備が出来たみたいだ。それでは、いただきます。


 食事の時間はものすごく静かに終わった。よくよく考えてみれば当たり前である。理由は簡単だ。俺も彼女もとても美味しい料理を食べて、食事を楽しんでいた。そして食事についての話をしようとしても、肝心の言葉が通じない。俺が美味しいとにこやかな顔をして、彼女が良かったと微笑み返す。たったのそれだけだ。その上テレビもない。ふと元の世界のことを思いだし、本来なら観ていたはずの野球の試合、阪神対巨人戦どっちが勝ったのかなぁ。とか思っていると食事が終わっていた。元の世界に帰る手段がない以上、いや、それだけではなく彼女と語り合えるようになるために、俺はこの世界の言葉を覚えたいと心から思う。


 食事が終わって、彼女がまた絵を描き始めた。次の絵はお風呂見たいな絵だった。まさかとは思いながらも彼女がまた手を引っ張って、俺をお風呂場へ連れていった。脱衣場まで連れて来たら彼女は戻っていった。良く見てみると今の俺はとても汚くて、臭い。さっきまで良く平然と俺と食事をしていたなぁ、と考えてしまう。流石にこの状態のままなのはまずいと思い、俺はありがたくお風呂を借りることにする。

 まず風呂場に入って一番最初に目に入るのが檜風呂のような感じのお風呂。木特有の良い香りがしてとても気持ちよさそうである。浴槽は小さいながらもまるで旅館みたいなお風呂だ。ただ、体を洗うための物は石鹸しかなく、やっぱり少し田舎のお風呂らしい感じがする。あー、すっきりした。しっかりと体を洗って体の汚れと臭いを流し、良い香りで気持ちのいいお風呂に浸かってしっかりと体を暖めた。ああ、いい湯だったなぁ。


 しかし、この後に大変な事件が起こった。俺がお風呂から上がった時に大問題が発覚したのだ。着替える服がない。俺は非常にショックを受けて右往左往と脱衣場を彷徨った。そして彼女が置いてくれていた紙とペンを使い、服がないことを描き、紙飛行機にし、彼女がいそうな方向に投げた。彼女はすぐに気付いたみたいで、内容を理解すると、困って唸るような声が聞こえてきた。しばらくすると彼女が何か閃いたようで何かを持って急いでこっちへきた。そしてドアをノックして俺が風呂場に入っていることを確認すると、何かを置いていった。彼女が去っていった後、そこを確認すると、新品の「巫女装束」が置いてあった。


 ……え。何これ、これをどうしろと。よくよく考えてみると、この家には、彼女しか住んでいないみたいなので、男物の服がないのは当たり前である。ここで俺は究極の二択を迫られた。一つめはこの巫女装束を着ること。死ぬほど恥ずかしいから着たくない。只でさえ、この世界にきてから踏んだり蹴ったりなのに何で更に、こんな辱しめを受けなくてはならないのか?そんなことを思いながらこの巫女装束をよく見てみると、彼女は親切にも大きいサイズの巫女装束を出してくれていたみたいだ。もう一つの選択肢は死ぬほど汚い服をもう一度着ることである。ただ気持ち悪いのは根性で耐えるとしても、彼女に甚大な迷惑をかけることになる。俺なら、自分の家の中でとても汚くて臭い服なんて着ている人にいて欲しくない。そして、今まで彼女に受けた感謝についてを考えると答えは自ずと決まってしまった。


 そういうワケで俺は今、巫女装束を着ている。色々と思うことは有るが何よりも思っていることは、この上極まりなく恥ずかしいということである。肝心の彼女はお揃いだねと言った感じで嬉しそうにこちらを見ている。まだ見ている人が彼女だけだというだけましか。あれ、この服を着るのは今日だけかと思っていたが服がたったの一着しかないとなるとまたこれを着なければいけないのか。この先どうなるか落ち着いたら服をどうにかして調達しよう。……なんだかこの服を着ているとどうにも凄く気がビシッと引き締まる。気を引き締めなければならない時にはいいかもしれない。……嗚呼、一体何を考えているんだ俺は。

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