四話 希望の邂逅
お待たせしました、四話です。
四話からは一週間に一回投稿します。
気を失って倒れてからしばらくして、俺は目を覚ました。あの時はてっきり死んでしまったかもしれないと思ったが、今感じている様子からして生きているらしい。
気分が落ち着いてきたので現状を整理してみる。まず最初に感じたのが背中にある、柔らかく、暖かい物だ。この吸い込まれるような気持ちよさ、これはお布団だな。何でこんなところに布団が……誰かが助けてくれたのか。後で助けてくれた人に会えるだろうか。会えたならしっかり礼を言わなくては。
次に上を見てみると天井が見える。いや、あれは縁だな。そしてそのすぐ横は夜空だ。深い藍色に包まれた空、その中には多数の星が瞬いており、丸い月が良く見える。美しき一筋の光、流れ星も見られた。家の中側には畳の部屋がある。ここは縁側で俺は誰かに助けてもらい、何処かの家の縁側で寝かせてもらっているのか。気がつけばもう夜になっている。夜風が肌に心地良い。
枕元には俺の元々持っていた湯飲みに水を入れて置いてあった。俺を助けてくれただけでなく湯飲みもちゃんと持ってきてくれているようだ。その上に水も用意してくれているなんて……この世の中もまだ人の暖かさがあるんだな。俺は俺の中の色々な感情が混ざりあい、最終的に感極まって俺は泣きそうになった。
それから少しすると誰か、人がこちらに来るような音がする。俺を助けてくれた人だろうか。ここは寝ているふりをしていた方がいいだろうか。いや、死にかけていた俺を助けてくれた人だ。悪い人では無いだろう。そう信じて、ここはきちんと起きて対話をしよう。
そして、ついに対面の時が来た。漆のようで黒くつややかな、腰位まである長い、丈長で包まれた髪の毛。首元の緋い存在感で目を引く掛襟。汚れなんてこれ一つない白衣。そして鮮紅色の行灯型の緋袴。そして凄く淑やかで可愛らしい日本人風の顔。俺と同じ高校生位で大人しそうな雰囲気。俺の命を救ってくれたであろう彼女。その姿は、何処からどうみても巫女さんだった。
「えっと、俺を助けてくれてありがとうございます」
俺はお礼を言った。その後、色々と話をしようとした。だが、何か彼女の様子がおかしい。彼女は、全く聞いた事もないような言葉を少し発した後、不思議そうな顔をして首を傾げただけだった。俺は何だか嫌な予感がしてきた。そして俺は彼女に、ひと言尋ねた。
「あのー、俺の言っていることが分かりますか」
俺の嫌な予感通りの反応をしてくれた彼女は不可解そうにしながら、何だこいつと言わんばかりにまた頭を傾けた。 嗚呼、これは駄目だ。まるで言葉が通じない。彼女は俺を何か不思議な物を見るような目で俺を見てくる。恐らく俺も同じような目で彼女を見ているだろう。彼女の姿はどうみても日本人の巫女さんなのだ。それなのに、何故か日本語が通じない。
もしかすると彼女は帰国子女なのかな。いや、帰国子女でも日本語が話せないのはおかしい。それならば狐や狸が化かしているのか。ついさっきの出来事の後だからそうだとしても信じられる。でももし、狐や狸だとしても化かすなら、もっと上手く化かすだろう。ここまで上手く騙せる力がありながら、こんな簡単なところでヘマするとは考えづらい。
その後、俺は最も考えたくなかった仮説にたどり着いた。それは、ここは日本と瓜二つの世界だが、元々の日本とは別の世界なのか。そして、俺はこの別の世界へと飛ばされたのか。これなら今までの全ての違和感に説明がつく。だが、もし本当にそうなら、俺は家に帰れないことになる。ただし、確信は無い。ただ、無駄に高度な技術を使ったたちの悪いドッキリであるというの可能性が完全に消え失せたという訳でも無い。でも、賭けるには、余りにも小さすぎる可能性だ。俺は、また泣きそうになった。
少し、意識が飛びかけていた俺だが、あの巫女さんが、俺の肩を触った感覚で戻ってきた。彼女は、俺が不安を感じていることを分かってくれたのだろう。彼女も言葉が通じないことは分かりながらも、俺と分かり合おうとしてくれているのだ。俺もそう彼女が感じていると分かる。言葉が通じなくても少しは、分かり会うことが出来る。それを思い出させてくれた彼女に感謝をしながら、俺達はお互いに分かり合える方法を考え始めた。




