三十五話 懐かしの巫女装束
三十五話です。
加速して遅延する無能。
追記:半年後か一年後か分からないけど、イツカは帰ってきたいと思っています。
色々とあったが、とりあえず手に入れた短すぎる休息時間。
今後どうするかとかを考えたいところだが、真優さんからこう言う意見がでた。
「とりあえず消化装置のせいでびしょびしょだし、兎に角着替えましょ」
「そうね、私ももう濡れたい放題だったわ。ついさっきまで濡れた砲台だったけどね」
……空気が凍りついたような気がした。
「あっ、あれ。うーん、空気を和ませようとしたんだけれど……」
さっきの今でそれをネタに出来るって精神強すぎだろう。
「ま、まぁいいわ。ばびっと着替えちゃいましょ。梨沙ちゃんも夢咲くんも家の中使っていいからね」
「ありがとうございます」
梨沙さんとお礼を言って、荷物置いていた部屋へ向かう。
部屋に着いて、早速着替えようと服を探していると。
「あ、一葉くん。ちょっと待ってください」
と言われて、梨沙さんに呼び止められた。
「どうかしたんですか」
俺は、当然のようにそう返事をした。
「よければ、これ使って下さい」
そういって、梨沙さんが俺に渡した物は巫女装束だった。
……いやいや、おかしいでしょ。何でこんな有事の時に巫女装束だよ。まぁ、確かにここ一年の間、一番良く着ていてもう体に完全に馴染んでしまっているが。それでもなんだかなぁ、って感じはする。
「あっ、一葉くん。何でこんな時に巫女装束を着るのかって思ってますよね。私だって一葉くんに巫女装束が似合っているからという理由だけでそんなこと言っているんじゃないんですよ」
「じゃあ、何ですか」
「この巫女装束。実は特別製の物何ですよ。ぱっと見ただけでは極々一般的な巫女装束ですが、対賽銭泥棒用の特殊型です。軽いし、強度も高いし、行動を阻害しない。と、三拍子揃っている優れものなんです。流石にさっきの人達が着ていた物と比べればおもちゃみたいな物ですが、ただの服よりは絶対に良い物です。というわけで是非」
怒涛の勢いで巫女装束の利点について語ってきた梨沙さん。これが男物の服ならノータイムで飛びつくが、やっぱり巫女装束。神社ではもう誰も気にしないので恥ずかしさも忘れてしまったが、戦時中の街って、流石に恥ずかしいってレベルじゃすまない。
……でも、神社では恥ずかしく無くなっているってかなりどころではすまない位ヤバイ気がしてきた。
だが、背は腹に変えられぬというし、身の安全面を取るか、恥ずかしさを取るか。
……やるしかないよな。梨沙さんを守る為にはどんな手を使ってでも、少しだけだっていいから可能性を上げたい。
「ありがとうございます、梨沙さん」
「ええ、どうぞ」
満面の笑みをした梨沙さんが俺に丁寧に巫女装束を渡してくれた。
そして俺達は着替え始めた。あっ、勿論部屋は別々で、だ。
巫女装束は手早く着替え終えた。巫女装束をもう完全に着なれてる手つきだな、これ。
その後、同じように巫女装束に着替え終えた梨沙さんと会う。梨沙さんは出会った直後に幸せそうな顔をさせながら話しかけてきた。
「どんな姿でも、当然一葉くんはお姉ちゃん同然ですが、やっぱりこの姿ですと、やはりよりお姉ちゃんって感じがして良いです。もう一葉お姉ちゃんって呼びたいくらいに」
うわぁ、喜んで良いのか悪いのか本当に悩む反応されたよ……
後、本当にお兄ちゃんって呼んで下さい。梨沙さんにお姉ちゃんって呼ばれるの何だか悪くない気がしてくるから、むしろ嬉しく感じられるよ。
だって、梨沙さんから姉妹認定だぞ。ここに来て一年暮らして、初めて家族と同じように暮らして来た人が、本当の家族と同じだと言ってくれているのと同義だ。こんなの嬉しく無いわけがない。
でも、どうせなら兄妹認定してください。そこはお願いしたいんだけどなぁ。梨沙さんが喜んでいるから言うに言い出せないな……




