三十話 姉妹の選択
第三十話です。
とりあえず六月中はお試しということで三日に一度投稿してみたいと思います。
爆音と同時にガラスが派手に砕け散る音も聞こえた。
「さて、お客様をお出迎えにいきますか」
「私も一緒に行くわ」
戦う気全開の白妙姉妹。だが、真弥さんが放った言葉はたったの一言だった。
「駄目です。真優は逃げて」
「何でよ、真弥姉が戦うのに私だけ逃げろって。そんなの出来るわけないじゃない」
当然、真優さんが憤慨して叫ぶ。
「出来るか出来ないかじゃない。逃げるのよ、真優。近くにいる相手は四人以上。それも、兵士よ。さらに、今はいなくても時間をかけさせれば増援もくる。今まで平和に暮らしてきた私達に勝ち目は殆ど無いの」
「それだったら余計に、真弥姉と一緒にいたい。こんなのが最後の別れなんて私は認めない」
「我が儘言わないの。私だってそう簡単にくたばる弾じゃない」
「それなら私だってそうよ」
このまま少しの間だけ姉妹の言い合いが続いた。でも、それもすぐに終わりを告げる。
「この話ももうおしまい。このままならもう数分もすればこの店にも来て、皆殺される。真優達は裏口の方からならまだ逃げられるから逃げて」
「だから逃げないって言ってるでしょ」
真弥さんは答えずに黙って、真優さんに何かを渡した。それが一体なんなのかは俺には見えなかった。
「それじゃあ、頑張って。生きてね」
俺達に、そう言い残し、真弥さんは店の方へ歩いていった。
真優さんは悔しそうに唇を噛み締めて何も言わなかった。
でも、俺には出来ない。今までお世話になった人を見殺しになんて出来るわけがない。
「さてと、俺も行きますか」
「えっ」
真優さんが驚嘆の声をあげる。
「ごめんなさい、梨沙さん。梨沙さんと一緒に生きる為には、ここで逃げた方が確実なんですが、俺にはそんなこと出来ないみたいです。梨沙さんは真優さんと一緒に逃げて下さい。必ず生きて帰りますから」
「一葉くんならそう言うと思っていました。ですが、私はそれを認める訳にはいきません」
「そんな……」
俺は一瞬で多大なショックを受けた。だが、一秒も立たないうちにそのショックは別ベクトルのショックへ変わった。
「私だって逃げません。私が何の役にたてるかは分かりません。ですが、一葉くんを一人に出来ませんし、真弥さんも私の友達ですから」
そうだ、梨沙さんはそういう人だった。自分よりも他の人を優先して行動する優しすぎる人だ。
だから、俺はそんな梨沙さんを守りたい。今日もう何度目か知らないが、そう思い直す。
「皆……ありがとう。私だって真弥姉を見殺しにする気はないから。でも、私じゃあまだ弱い。だから、お願い。力を貸して欲しいの」
返事なんて決まっている。当然の様に、俺に続いて梨沙さんも答える。
「ああ」
「もちろんです」
「二人とも……本当にありがとう」
俺達は真弥さんが進んでいった方向を見て、それぞれ覚悟を決めて進んでいった。
部屋から店という短い距離を歩くと、当然真弥さんがそこにいた。当然といえば当然だが、俺達を見るや否や、目を丸くして驚いた。だが、現状を今一番理解している真弥さんなだけあって、小声で俺達に向かって話してきた。
「何で来たんですか。特に真優。あれだけ言ったのに、ここに来るなんて愚の骨頂よ」
「愚者だろうが頭お花畑だろうがどっちだろうとも上等よ。お姉ちゃんを助ける為ならなんだってするわ」
「俺だって真弥さんには借金の時に助けてもらった仮があります。まぁ、もし仮がなくても結果は同じでしょうが」
「私にとって真弥さんは大切な友達です。友達を助けるのは人間として当たり前ですよね」
真弥さんは感慨に更ける様な表情をしながら、話し始めた。
「……お姉ちゃんって言われたのいつぶりかしら。分かった。それに、もうあまりにも残されてる時間は少ない。店の魔道具だって気にせず何でも使って良いから死なないこと。危なくなったら逃げるの、絶対に。分かったら手早く準備して」
「了解」
「わかりました」
「もちろん。でも、それは真弥姉もね」
皆、そこら辺の魔道具を適当にとって凄く簡易的なバリケードに身を隠し、緊張しながら待機する。……恥ずかしい話だが、俺は正直緊張よりも恐怖の感情の方が大きかったが。
もう何分、いや何秒だろうか。もう感覚が狂っていたが、真弥さんの声でハッとして、恐怖心の中で気を引き締めた。
「皆、来るよ。構え」




