三話 消え行く意識
三話です。
ふとした時に目が覚めた。美しい朝日に包まれ、鳥の鳴き声が聞こえる。この穏やかな光景の中、俺は色々と思い、考える。無事に、今日という日を無事に迎えられたことを感謝しながら、目が覚めると、特に何かがあった訳でもなく家のベットで寝ていた、という都合のいい展開が訪れたらいいのに、という俺の儚い願いは、いとも容易く打ち砕かれた。
今日の朝御飯もまた、湯飲みですくった水だけである。流石に腹が減って死にそうである。今日は朝一のお茶も飲めない。お茶は俺にとっての希望の欠片だ。それが無いということは。食事が無い、朝一のお茶が無い、この先の見通しも無い、こんな状態では希望なんて全然生まれてこない。
ただ、それでも俺は歩かなければならない。そう考え直して、自分を奮い立たせる。あくまで、感覚的にだがもう山頂は近い気がする。これだけ歩いたんだ。もう山頂付近に来ていたとしても何もおかしくはない。湯飲みに小川の水をすくい直して、俺は先へと進み始めた。
それから、歩き始めて四時間ほどたっただろうか。少しばかり、開けた場所に出た。しかし、俺はもう足の痛みすら感じなくなっていた。それに小川から汲んだ水はもうとっくに飲みほしてしまい、今の俺の助けになりそうな物はもう何も持っていない。疲労、脱水、栄養不足が重ねて来るとこんなにも辛いものなのか。今まで経験したこともないような苦しみだ。もう視界もぼやけ始めてきた。もう山頂まで大分近づいて来ていたのに。
駄目だ、もう何も感じなくなり始めてきた。もう限界だ、意識が朦朧とし始めてきた。こんな所で意識を失う訳には。そう思う心とは反対に消え行く意識の中でたったひとつ、俺は思った。
……まだ、生きていたかった。深い深い悲しみの中で俺の意識が消えて行った。
さようなら、世界。またいつの日にか会いたいよ。




