二十二話 一年の時
かなり遅れましてすいません。二十二話です。
俺がこの世界に来てからもう一年か。時の流れという物は本当に早い。気付けば夏、秋、冬ともう過ぎ去り、青い空の下、神社の桜の花が綺麗に咲き誇っている。
たった一年では、やはり元の世界に帰る事は出来なかった。それについては誠に残念だが、正直にいうと、気が付いたら家に戻っていた等の都合のよい事でも起こらないで、自力で帰る為には一年だけではどう考えても無理だ。そう思って割り切れていたので、ショックはそこまで大きくなかった。
でも、この一年間ずっと梨沙さんの世話になりながら食っちゃ寝をしていたわけではない。
まず、毎日ずっと、この世界の言葉勉強していたので、もう大分まともに話せるようになった。あの片言な話し方で無くなったのは我ながら大きな進歩だ。梨沙さんと普通に話せるようになったのは嬉しすぎる。
それだけではない。魔法の使い方だって必死のパッチで練習し続けた。出来るようになるまで半年はかかったな。でも、その長き練習という苦労を越えて、俺はだが魔法を使えるようになった。しかし、まだひよっこもいいとこで、性能は本当に低く、新聞紙に着火する程度の火花レベルしか使えない。それでも努力をすれば何だって出来る。更に練習を積み重ねれば、もっと魔法の練度を高める事も出来そうだ。そうしたら、火起しも簡単に出来るようなるなぁ。
ただ、俺が魔法を使えるようになったのはこの世界の影響という物はありそうだが。俺が出来るようになったんだ。もしも、元の世界で同じ事をしても出来るようにはなっているまい。今の俺が元の世界で使うとどうなるかは分からないけれど。
でも、この世界の魔法の魔法は楽でいい。あのファンタジー等でよくある馬鹿らしい魔法の詠唱なんて存在しないで、心で念じ、想像すれば魔法が使えるのだから。だからといって良いことばかりでは無い。この世界の魔法は魔道具無しでは本当に大したことが出来ないのだ。今の俺のレベルは小学生レベルだが、そこからは大人まで成長しても、マッチ棒とチャッカマンの間の火程度しか起こせないのだから。その貧弱な魔法を有効活用するために魔道具があるらしい。
……そういう話を梨沙さんから聞いた。
でも、今まで出来なかった事が出来るようになるとは本当に楽しいなぁ。
他にもあの後、たまにまた真優さんの所へ遊びに行き、レビテートブーツの練習もした。その結果、今となっては右へ左へピャーっと自由自在に飛び回れるようになった。風を切りながら飛び回れるこの感覚が気持ちいい。前に世界では味わえないな、これは。
他にもまだまだ挑戦したことはある。それは仕事だ。梨沙さんの神社で働いているが、それはあくまで住まわせてくれている恩返しに過ぎない。……結構楽しんでるけど。
だから、俺は町へ出て、肉体労働でお金を稼いだりすることもあった。あれは、最初の方はおやっさんに怒られてばかりで辛かったなぁ。でも、俺はこの世界では力のある方なので、慣れてきたらかなり誉められて嬉しかった。そして、調子に乗って二十四時間労働をしてから、神社に帰ったら梨沙さんに本気で怒られたのも良い思い出だ。
ついでにその給料で漸く念願の男物の服を買えた。神社で梨沙さんと働く時は相変わらず巫女装束だが……
後、どうやらこの世界ではありとあらゆる物事が魔道具に頼っているみたいで、魔道具を一切使わずに、いや使えずにが正しいか。魔道具は大変便利である。しかし、楽をしていると体ってやっぱり鈍るんだなぁ。でも、魔道具に頼った生活をしていない俺は、相対的に筋力がの他の人より多くなっているみたいだ。それにあのとんでもない山を週一回位のペースで歩いていたら嫌でも体力がついたというのも絶対あるだろうが。
それ以外にも様々な体験をして、俺にはいい刺激になった。このまま、この幸せな時が続けばいい。そして、この世界と元の世界を自由に行き来出来るようになればいい。俺はそう思うようになっていた。




